さらば境界線ーShadow And Light Alive―

ぽちくら@就活中

序章【マジカルミュージカル/約10万文字】

201X年某日/ある男子高校生の証言、【笠井蓮/Interludium】1

 よく分からないがヤバいと思った。それが、俺が魔法少年になった理由だ。


 最初から突然だった……あれだ、俺の確かな記憶では、ボロボロのアレが俺に助けてくれと言ってきた。

 その目の前にバケモンがうようよいただけで、何が何だか分からなかった。


 そいつは、ポルルンとか言ってて、外見は……幼稚園児がよく見るアニメとかよくあるマスコットみたいな、ウサギのできそこないみたいなやつだ。

 口癖は何とかポルンとかそういうの……漫画のようだが嘘じゃない。


 ……こういうのを続けていると、必ず、敵が出てくる時はここの空間が断ち切られているのは分かった。


 敵は敵として、お前らみたいなのには見つかりたくはないみたいだしな。

 最初も確か同じだった、人がいるはずの昼間なのに、その時だけ誰もいなくて……あらかじめ、その道から人を遠ざけたような感じがする。


 何と言うか、誰もその道に行こうとしなかったというか、そこに道があると気付いていないみたいでな。いつもは車が通るはずなのに今日は全く人通りがなかったし、まあ俺の帰り道だったからそこに行ったけどよ。


 俺がそこに辿り着けたのはよく分からないが、いつの間にかデカいゴーレムと、ポルルンがボロボロになって助けてくれって言われた。

 それでこの石を貰うまではしばらくそいつを抱えて逃げたけど、それはそっちの言うとおり、なんか適当に空間を延ばされて、捕まりそうになって、結局使った……服装はさっき言った通りで間違いない。


 それで倒した時には、この石っころがゴロゴロ流れ混んできて、ポルルンは素質があるから是非とも続けてくれと言われた。

 最初は断ったが、数日立て続けに同じこと起こったから止むを得ず、それでこのコンパクトをもらった。


――「S.N.P.I.U」この刻印は?


 ここで名乗っている組織名だと、「Sorcery Next Peace International Unit」、胡散臭いがそんな感じらしい。聞いたことはないのか?……ああ、まあ、自らを慈善事業と言っちゃってるし仕方ないか。


 話は戻るが、俺が魔法少年になったのはそれが数ヶ月前のこと、あとは俺以外の仲間が知る限り四人くらいいた。

 全員男、この訳を聞いてみたら、女子は総じてメンタルが弱くてアフターケアに手間がかかると、それはそれで侮辱されている気分だが、納得はした。


 その内半数は俺らと同じ学校で、それ以外の奴らは面識はあるけど、地方やらでやってる奴もいると聞いた。詳しい人数は分からないが、多少連絡は必要ではあるからある程度取っているつもり。ただ最初から消極的な奴はいるから少なくともだが……質問良いか?


 俺はポルルンから、何というかアイツが住んでいた別世界の話は聞いた。

 それは多分そっちの方がよく分かっているかもしれないが、あんまり聞いててもよく分からん。

 魔法少年の狙いは、別世界が作っていた魔法のエネルギーに人間の感情を利用した、とかなんとか、あまりよくは分からない。

 たまにそいつと関係してる奴の会話は聞いたことはあるが……例えば、ゴーヨクコクとかお前分かるか?


――分かるけど、話すと脱線する、関係はしない


 ……分かった、だが、俺はもう何も話すことがない、魔法少年のやり方とかについては仕組みもよく分からない。

 いしっころはただの宝石もどきにしか見えないし、これとか、敵の魔力の破片とか何とか言ったって、俺には粒にしか見えん。それに、俺達のことを一方的に喋ったからと言って信じている訳じゃない。

 むしろ馬鹿だろうし、お前は敵ではと思っている。それでもか?


――どうやって戻ってくるかを考えて行動してみたら?


 言うなあ……なら、戻ってくるために話してやろうか。そう大口叩けるなら俺としても言えるさ。

 言ったとしても大事な情報や秘密はないだろうしな。

俺らは集団よりも個人での活動が多い、それぞれの生活の差とかがあるだろうし、集団でやるような強い敵は出ない。


 コンパクトや石はもらったが、今のところ知り合いを含めて魔法少年が戦死したって話は聞かない。それほどには道具も何もかも、命のリスクはあまりないんだと思う。

魔法少年とは呼ばれているが、奴らがT組と呼んでいたから、俺の分からないところで地方別に固まっている首都圏を纏めて言ってるようだ。


 随分急ピッチな人集めだが、アイツらが大事ならそれほどだろう。俺らは素養があった、だがアイツらはアイツらなりに本命はいたらしいが……それが見つからなかったらしい、そして俺達普通の人間がそれまでの梯子で努めた訳。


 まあ正義の味方にしたって、クセも何もかも強すぎる奴らばっかだけど、まあまあつまらなくはない仕事だったさ。

 素養があるにしても、人格は関係ないらしい。自分で言うのもなんだけど、俺は正義感が強いほうだった。個々の性格が違いすぎて、知り合ってる奴らでさえも俺は把握しきれないことがある。

 連絡を取ってる連中とはまともな会話は敵の出没場所、質、どうやって倒したかくらいの報告を共有しているだけだ。


 先程言ったように、俺は普通の人間であって、魔法だの異世界だのには全く縁がない。

 まあ不幸かは知らないがこれを任せられたのは偶然とは思っている。だから、俺はお前の正しい知識は知ったこっちゃないがそれでも良いか?


――今更か


 今更だ、お前俺に嫌な目をしているからやっとな……まあいい、そっちはそっちで都合よく解釈してくれたらそれでいい。

 魔法にしても色々あるらしいが、俺はその中で火を扱っていた。


 単純な仕組みではあるがなんか生命力とか俺たちの感情とかを魔力に変換する。で、それを溜めに溜めて火のようなものを出すって感じだと思う。

 直に触るが変身時は熱くない。これは確か近所の奴も同じ仕様だったな。水と木と光と闇、水ならどんなに操っても濡れないし溺れないとかな、都合はいいがそういう仕様ではあるらしい。

 ゲージの溜め方はとにかく何でも殴りつけることだが、当たり前だろうが敵や……これは不注意だったが、味方に対しての攻撃は上がる。


――戦闘の傷は持ち越す?


 強化はされるが傷そのものは持ち越される。一度俺はゴーレムに地面にヒビ入るまで腹に何発か食らった後は、しばらく肋は骨折していたらしい。死にかけたから実際分からん。まあ後で光円寺が直してくれたんだけどさ、光属性の回復魔法ってやつ。


 だが現実、肋どころでは済まさないだろうし、内臓は破裂する。その程度の強化と持ち越しではあるし、無傷で生き残れる訳じゃないらしい。

 だから俺らはチームワークこそは不安定ではあったが、慎重に事は済ませようとしていた。

 それを使って多少の対策や戦略、誰がどこを清掃するかどうかするかの攻略法を練る。

 属性持ちなら尚更、俺は火属性だから木やらなんやらが多い地域に移したりと……それはゲームみたいに単純だが効果はあった。

 実際に日々効果は現れていた。出没頻度はめっきり減ったし、質も敵が溜め込むまでに倒しているようなものだから、しばらくは楽に倒せた。


――ただポルルンが姿を消した前に、敵が強くなった


 俺達ですら把握できなかったが、あっという間に事が終わっていた。本当だ、目を開いたら味方は血反吐を吐きまくっていたし、アイツの姿は毛一つも見当たらない。


 今でも変身も魔法も使えるが、ポルルンからの連絡はないままだ。敵も何が目的かは知らないが、何事もなかったかのようにポツポツと出てきては、俺達はそれと戦っている。

 不自由はしていない、以前のような戦略は、奴らの体内のシステムと合っていたらしい……ただ、何も変わらないというのが、まるでやることを終わった感じがしてならない。

 それなのに授けたアイツが何処かに消えても、今の俺達はこうやって問題なく生きている。ああ、そう、俺達が魔法少年というあり方については何ら問題はないだろうが……アイツがいなくなってから統制が取れていないように感じる。

 仮に俺達が網を作ったとしても、あちらの方をよく分かっている奴がいなければいつかまた綻びはくるだろう。

 というか、今はナメられているだろうな。こうして、俺達は生かされていて、話の分かる人間に会ってこうして話しているのに敵の妨害は来ない……というか、お前もそうだったんだな。お前も知らず知らずにこの世界に足を運んでいて、知っていたのか?


──何を?「レン、私だ」


 俺たちはこうしてる内に「彼に対しては無知を貫いてくれ光円寺がダウンしてさ……違うな、土御門君のダウンからだ、……そうして運命か知らないけど、対象者の思惟と事実に齟齬があるなら、話を信じてくれる人がいると思わなかった。適当な言い訳は面倒だろう」それにまさか同じクラスだろ?「同意。けれど俺が行く意味あったかなお前がどんな仕事をしてるかは、同い年だから話しやすい?知らないけれど根掘り葉掘り聞きたいだろうよ、世界って案外狭いんだな。。リスクが大きいがどういうつもり?」


……なあ、お前は何を知っているんだ?「同い年との語らいも君が望んでいた青春だろう?」


──聞くなよ


 え?


──いいや、秘密。守秘義務とか……あるだろ、そういうの。ただ松川みたいにそういう能力とか……テレパシーは知らないな。俺はこうやって話を聞くだけだから、たまにそういう話を聞いて世界が広いって思うけど……ああ、これもシュヒギムだから内緒な?


 ……そっか、そっちにも知らない世界なんだ……いやお前、普段静かだけどいざという時にとか、そういうギャップあるかなーって思ってたけど……まあそこはリアルだよな、仕方ねえ。

 で、これで俺の話は終わりだ。収集活動には支障ない。

 さっき渡した石はゴーレムの残りカスみたいなものだし、そのまま返さなくて良いや。

 ところで、お前の目はカラコンか何かか?紫は珍しいじゃねえかと思って……闇属性の奴もその色に変わっちまったが自然っぽいし、遺伝か?


――遺伝だよ、もしかしたらそっちの言う敵から、とか


 冗談がキツいな、お前……まあこれで俺の愚痴は以上、あとは煮るなり焼くなりな。



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