どうして山に登るのか

カゲトモ

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「世間はゴールデンウィークだって言うのにぃ」

「まぁまぁ、意外となか日の平日は普通に仕事の方って多いと聞きますよ。お客様でもサツキさんみたいにお仕事帰りの方もいらっしゃいましたし」

 九日間全て休みの企業の方が今時少ないんじゃ? いや、そうでもないのか? 今まで会社勤めとかしたことないし、そう言った休みには縁遠いんだ。

「まぁ、マスターもゴールデンウィーク関係なくお店開けているもんね。それなのにたった二日仕事に出るだけでこんなこと言ってちゃダメよね」

 まぁ俺からしたら土日祝が休みなんだから十分ゆっくりしてるんじゃ、とも思うけれど。それはそれで当事者からすれば違うのかもしれない。だってこの二日もきっちり休みなら海外旅行とか計画しやすいもんな。もういっそのこと四月か五月がどっちかに休みを揃えてなか日のないゴールデンウィークにすれば、あ、なんかこんな話あったな。

「でもマスターのお酒飲めたからもう大丈夫。これで明日も頑張れる」

「ふふふ、嬉しい事を言って下さいますね。ありがとうございます」

「お礼を言うのはこっち。いつもありがと」

 そういって柔らかく微笑むサツキさんは、真っ赤なテキーラ・サンセットを一口飲んで深く息を吐いた。

「お疲れですね」

 やっぱり休み明けの仕事は一番疲れるのかもしれない。どうしても身体のリズムが崩れるから。特に長い休みだと。

「ん~、まぁね。さっきまでバリバリ仕事していたし」

 え、さっきまでって、もう結構遅い時間だけど?

「もしかして何も食べずに来て下さったんですか?」

「や、食べた、食べたよ。ほら、あのカロリースティックみたいなやつ。会社の机に常備してあるんだよね」

 え~、机の中に栄養補助食品を備蓄しているとか、そんな人本当にいるんだ。カロリースティックなんて俺、ほとんど食べたことないよ。

「あの、ちゃんとしたお食事は出せませんがサラダくらいならございますけれど・・・」

 いくら弱い酒だと言ってもすきっ腹にアルコールは本当に良くない。特に疲れているときなんかはね。

「え、じゃぁポテサラ頼んでもいい?」

「もちろんですとも」

 この時間の炭水化物も女性の大敵かもしれないけれど、ないよりはずっといいはずだから。

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