薔薇香る憂鬱

有原ハリアー

シュシュの憂鬱

「どうして、お姉様は……」

 ヴァレンティア王国第二王女、シュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティア(シュシュ)は、自室の窓より、雨天に包まれた都市を眺めていた。

「なぜ、あのような男に惚れているのでしょうか……」

 彼女の悩みは、二つあった。

 一つは、いつまでたっても”お姉様”に認めてもらえないこと。

 一つは、”お姉様”を”あのような男”にられていること。

「どう考えても、わたくしにはあの男の美点が見つかりませんわ……。それは、お姉様にはお姉様なりの考えがございますわよ、ええ。その点については承知していますわ……けど!」

 シュシュは怒鳴り声と同時に立ち上がり、抱える思いを声の限りに叫んだ。


「どうしてわたくしではなく、あのような男がお姉様のお眼鏡に……ッ!」


 一息に言いきった後、シュシュはドサリと荒く、椅子に座り直した。

「どうして……? どうして……お姉様は……」

 シュシュの悩みは止まらなかった。

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