アクロニムレディ
dark web
「ちくたく、ちくたく。時計を眺めるのもつまらないわね。『悪魔の玩具』貴方もそうでしょ? 早く遊びたいわよね? でももうじき来るわよ。水城真希奈の意志を継いだあの子が……」
美洋とアリスとの電子戦を一部始終見終わってからジキルにそっくりな女性はそう言った。
そこには大きな試験管のようなもの、そしてその中で目を閉じる少女の姿。それをちらりと見つめるとそのジキルのような女性は言う。
「私は選ばれなかった……だから私は抵抗するわよ? 水城真希奈。貴女の思い通りになるだなんて思わない事ね」
カタカタとタイプする先でサーバー施設のメインコントロールルームで息絶えている少女の姿を見て、そのジキルのような女性はしばらく黙祷する。
「関係者じゃない子を巻き込みたくはなかったわ」
その女性は美洋、ジキル、そしてアリスが真直ぐに向かってくるのを見て独り言を言う。
「私が作った『悪魔の玩具』は最高のアトラクションよ」
『悪魔の玩具』は周辺の軍事施設のシステムを瞬時に掌握した。そして人類の火と呼ばれる核兵器の安全装置を全て解除していく。
それに当然システムを奪われていく基地はそれぞれ対処をはじめようとするが一つの無人基地が吹き飛び、ジキルのような人物が世界各国に声明を出す。
同時に世界のあちこちに核兵器を無差別発射する事も容易い。今から人類には24時間の猶予を与える。
今、諸君ら愚かな人類の希望が神々の頂きに挑戦しようとしている。祈りを捧げよ。人類史が幕を閉じないように……それだけが諸君らに許された唯一の行動。
そして歓喜せよ。
もし人類の代表が敗れたその時、世界中にアポカリプスが起き、そして我がいるこの場所から新しいアダムとイブが生まれるであろう。……と
当然、列強国は黙ってはいない。しかし、強力な海軍力を持つ国の連合艦隊が音もなく沈んだ事により、大きな動きは止める。
「馬鹿ね。世界的ハッカー軍団を雇ったというの?」
列強国は、軍事的行動ではなく電子戦をジキルのような女性に挑んできた。犯罪やその他そうした技能を持つ人々を破格の報酬で雇い、数の暴力で勝負をしかける。
それはジキルのような人物にとっては一番厄介かつ効果的な手段であった。世界中のサイバー犯罪者とサイバネティクスハンターの共闘である。
それにジキルのような人物は怒りをあらわにする。
「本当に人間って愚かね。どうして言う事が聞けないのかしら? あぁ、神に逆らった人間だからね。いいわ。愛しい坊や、貴方の力の片鱗を見せておやりなさい。貴方達が悪いのよ。ちゃんと言う事を聞けば、大事な人にお別れの言葉を言う時間くらいあげたのに」
最高レベルのハッカーたちが集まった場所、もちろん誰にも口外されていない場所は激しい熱量を持って焼き払われた。
それは唯一、今の事態を抑えられる人材の喪失。ジキルのような人物はその様子を見て喜ぶ。思いのほか楽に自分の一番の弊害になりうる者どもの排除に成功した。
「私はあなた達の踊れないミュージックでは躍らないわ。。私が欲しいのはあの水城真希奈の人間の体、それにはあの子、ジキルの心がいるわ。私は水城真希奈の体を手に入れて、美洋の子供を産む。私は人類の母になるの! どうかしら? 人間に作られた私が人類の母になるなんて! これ程最高のダンスはないわ」
一人で笑うジキルのような女性、彼女の名はエルデロイド、二号機ハイド。水城真希奈に作られた最高傑作、そして失われた遺産の一つである。
彼女と『悪魔の玩具』が人類の生存権を賭けた最後の戦いを挑む。
「お茶会に必要なのは、エルデの心臓と水城美洋あなたよ」
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