4-53 カミサマの願い事


 朝日がまぶしい。今の時間は何時頃なんだろう。あの後、どうしたんだったっけ。


 ……そうだ、赤ボスを抱きかかえたまま何もせずに一日を過ごしたんだ。暗くなったころに博士から通信が来たけど、話すことが無いから繋がなかった。多分今頃突入の準備をしているか、あるいはすぐにでも来るかもしれない。


「……結局、ダメだったか」


 現状を把握したら急にお腹が空いてきた。そういえば昨日の朝から何も食べていなかった。体育座りで赤ボスを抱えて俯いていたからだ。思い出せばイヅナが食事を持ってきていたような気もしたけど、よく覚えていない。


 そうだ、あの後のイヅナはどんな様子だったんだろう。まともに見れなかったせいでそれも分からない。……ダメダメだな。



 ともあれ、一度落ち着こう。


「赤ボス、ジャパリまんって用意できる?」


 閉じられた屋敷の中で何を言っているんだとは思うけど、今できる腹ごしらえではこれが唯一の手だ。イヅナは博士たちが今日来ることを知っている。料理に何かおかしなものを入れる危険があるんだ。


「マッテテ、一昨日ミツケタ「ジャパリまん」を取ってくるね」


 意外にもジャパリまんはあったようで、僕の腕から離れて赤ボスはそれを取りに行った。


あれ……見つけた?

もしや、赤ボスも探索していたのか? もしそれがイヅナに捕まる原因になったとしたら……まあいいか、赤ボスが捕まって何かあったわけじゃない。


 程なく赤ボスがジャパリまんを二つ持ってきてくれた。それを頬張りながら、これからどうするかを考えた。


「でも、もうすることなんて……」


 ちょっと、いや結構疲れた。到着次第博士たちがどうにかしてくれるはずだ。一応怪我人が出ないように何か手伝うのが手一杯だ。


 そうだ、こんなときは綺麗な庭でも見て心を落ち着けよう。心労のせいで思考がネガティブに寄っている可能性も否めない。




 そう思い立ち寄った庭を見て、言葉を失った。


 セルリアンが、庭を歩き回っている。セルリアンに歩くような足があるかは疑問だけど。


「な、何これ?」


 おびただしいほどのセルリアン。大きさも形も色も様々だったけど、その中に一段と目を引くものがいた。


 ――紫のセルリアン。


 雪山と湖畔を襲ったコピーのセルリアンが、その体色も両腕にある大きな鎌の形もそのままに跋扈していた。見回すと、この形のセルリアンが一番多かった。イヅナはこれを気に入ったりしたのだろうか。


 セルリアンがはびこる庭の様子は、普段の静かな庭とは比較もできないほど賑やかだった。紫、青、緑、赤、白……見慣れたものもそうでないものもたくさん。しかしセルリアンは時々こちらに体を向け、不気味な一つ目でこちらを見ることはあっても襲い掛かってくることはなかった。


 小さいセルリアンに近寄って頭……というか角のような部分を軽くなでると、喜ぶように目を細めてピョンピョンと飛び跳ねた。



――もしセルリアンがフレンズを襲うようにできていなければ、仲良くできたのか。


 

 そんなもしもは今となっては存在しようもないし、イヅナと仲良くすることすらできていない僕が考えるのは、きっとおこがましいことだ。


「でも、なんで襲ってこないんだろう?」


 セルリアンは何であれ近くに『輝き』があればそれを取り込もうとするはずなんだけど……攻撃したら相手も敵対するとかかな?


 そうは考えたものの、セルリアンとはいえ襲ってこない生物? のようなものを攻撃するのは気が引ける上に、もし本当に敵対したら空を飛べない今、この数のセルリアンは手の付けようがない。


「外は、どうなってるんだ」


 イヅナがどうやってこの量のセルリアンを生み出すだけのサンドスターを用意したかは謎だけど、この数を用意できるなら外にも配置していておかしくない。昨日もそんな趣旨のことを口走っていたのを覚えている。


博士たちがここの場所を把握していることも恐らく知っている。本来大量に外に配置すれば怪しまれるけど、場所が割れているなら外にも配置した方が守りやすい。守ろうとしている僕が外に出たがっているのは何の皮肉か。


「もしかして、赤ボスなら外の様子分かったりしない?」

「……ア、サンドスターヲスキャンスレバ、セルリアンノ居場所ガ分カルカモ」

「じゃあ、お願いできるかな」


 赤ボスは壁の近くに行ってスキャンを始めた。セルリアンたちは赤ボスにも無反応だった。こっちからは『輝き』が感じられないからかもしれない。


「外ニモセルリアンラシキ『動くもの』ガアッタヨ」


「そっか、ありがとう」


 やっぱり外にも配置していた。博士たちは空を飛べるけど、地上近くに降りてきた時が危ないか。赤ボスを通して連絡を…………やめた。今更話なんてできない。


「はぁ……中で休んでようかな」


 今僕にできることは何もない。待っていても博士たちは来るし、イヅナも何かしてくるはずだ。いつもの朝食の時間に来なかったことは気になるけど、大方博士たちの対策をしていたに違いない。



 畳の上に仰向けに転がって、ボーっと天井のシミを眺めた。時間が過ぎてゆく、一秒、十秒、一分、十分と。時間が経つにつれて体から力が抜けていく。いや、抜けているのは力じゃない、変えたいという願いだ。


 何もない、何も起きない。起きるまで寝ていよう。果報が来てくれればうれしいけど、待つだけの僕に選ぶ権利はない。


 どうして、こんなことになったんだろう。『僕』に、こうなることを止められたのかな? もしや全部、『僕』が前に決まっていたんじゃないか。頭に過るのは責任から逃れるための言い訳。もう眠ってしまおう、その方がバカなことを考えずに済むから――




 



「……うぇ!?」


 腹部への強い打撃を受け、僕の意識は眠りから引っ張り起こされた。


「こうして起こすのは三回目ですね」


「……こんな乱暴に起こされたのは初めてだよ、博士」


「今は急ぎです、今度があれば優しく起こしてやるのですよ」


「あはは、それはよかった」


 そういえば、周りを見てもいるのは博士一人だ。


「助手とかは、どこに?」


「助手、それとヘラジカとライオンは、屋敷の周りのセルリアン……あくまで敷地内だけですが、それらの駆除をしているのです」


「……そう」


 駆除か。きっとその中にはさっきピョンピョンと飛び跳ねていたセルリアンもいるんだろう。そんなことを考えている暇じゃないのは分かるけど、よく分からない気持ちになった。悲しい、のかな?


「外のセルリアンは?」

「そっちはまあ、この壁を越えられないでしょうし、後回しでもいいかと」


 それにしても、ヘラジカとライオンか。平原にこの屋敷があるのなら援軍としてこの二人に協力を仰ぐのはよく考えれば当然のことだ。でも、来てもらったってことは、この件のことを話したってことになる。


二人も、事情を知ってるの?」

「ええ、説明は必須でしたから」


「な、なんて説明したの?」


「端折りつつあることないこと混ぜて話しましたが」

「え、待って、あることないことって……」


「お前が碌な説明をしなかったせいですよ」


 は、話せるわけがないよ。だって、その、あの、話そうと思い起こすだけで眩暈がしてしまうから……比喩でもなく本当に。


「要約すれば、『イヅナがコカムイを無理やりにでも手に入れるために連れ去った』という感じで伝えたのです」


 ……大体合ってるから別にいいか。


「何も言わないところを見るに、おおよそそんな感じだったのですね」


 それでも、どうしてドンピシャで言い当てられたのかを不思議に思い

「どうしてそんな風に伝えたの?」と聞くと、

「何となく、アイツを見ているとそんな感じがしたのですよ」と博士は遠くに視線を移して言った。


 そっか、博士は何となく感づいてたんだ。博士ってもしかしたら僕が思っているよりも賢いのかもしれない。カレーとか、食べ物に関する出来事が強く印象に残って、賢いと感じるような印象が薄かったから、ちょっぴり意外だった。


「な、なんですか、その目は」


「博士って、賢かったんだね」


 博士の目が細くなり、剣呑な雰囲気を発した。まずい、地雷を踏んでしまったかもしれない。


「え、えっと」

「いえ、構いませんよ? そうでしたか、私のことを賢くないと、ええ。いいのです、怒っていないのです」


 明らかに博士は怒っている。もしかしたら、イヅナの時も無意識のうちに彼女の気分を害してしまったことがあるかもしれない。……気を付けなきゃ。


「ほう、説教中によそ見ですか!?」


「わ、いてて!」


 頬をつねられた。結構痛いけど、博士が頑張ってジャンプして僕の頬に手を伸ばしているのを見ると少しほっこりした。


「全く、いつも一言余計なのです、黙って私を敬えばいいのですよ」

「あはは……ごめんね」



 すると、外の方から足音が聞こえた。その音が聞こえたすぐ後に障子が開いて、助手、ヘラジカ、そしてライオンが部屋に入ってきた。


「なるほど、屋敷とはこういう建物なのですね」

「ライオンの城と似ているな!」

「おお、過ごしやすそうだね~」


 屋敷の内部を見た三人の反応はまさに三者三様だった。


「二人とも、久しぶりだね」


「私とは久しぶり、というほどでもない気がするが、とにかく助けに来たぞ!」

「でも私とは久しぶりだね~、元気にしてた?」


「まあ、ね。今はこんな有様だけど」


 ヘラジカの方は全然変わらぬ元気さで安心した。しかしライオンがこっちを見てニヤニヤしているように見えたのが少し引っ掛かった。何かおかしなことでもしてしまったのかな。


「ねえ、ライオン、何か――」


「さあ、これからのことを話すのですよ!」


 ライオンに問いかけようとした言葉は博士の言葉と手拍子と共にかき消されてしまった。


「聞きたいことなら、後で聞くよ」


 そうだね、まずはここを出ていってからだ。


「では、『作戦』について話すのです、まずコカムイ」


「う、うん」


 博士は一度言葉を切って、僕をまっすぐに指さしてこう言った。


「お前はもう一度イヅナを説得するのです」


 それはまさに青天の霹靂、思いもよらないチャンスだと思うと同時に、これ以上何ができるのだろうと、尻込みしてしまった。しかしこの期に及んでなぜ博士は僕に説得をさせるのだろう。


「な、なんで?」


「博士、まだ何の作戦か話していないのです」

「そう言えばそうでした、助手、作戦名を」


「はい、その名も、『イヅナ捕獲大作戦』……なのです」


 捕獲作戦……?


 博士たちはイヅナを捕まえるつもりだったのか。でも、だったら尚更僕に説得をさせる理由が分からない。


「お前の疑問もまとめて説明してあげますから、まず最後まで聞くのです」



 博士の作戦はこうだ。


 博士たちはロープと網を持って来た。それは今外に置かれている。網でイヅナの身動きを制限し、ロープ、いわゆる縄を使って縛り上げて運ぶ算段らしい。


 この作戦の欠点は、イヅナに隙が生まれないと逃げられたり、狐火などでの反撃が容易であるという点だ。だから僕に説得をさせ、イヅナの注意を別の所に引き付けておく必要があるらしい。


「それに、これはチャンスでもあります。説得に成功すれば、これらの手荒な手段は必要ではないのですから」


 確かにそうだ、そうなんだ、またとないチャンスなんだ。だけど、僕は失敗した。一週間もここにいて、心を微塵も動かすことが出来なかった。昨日はあまつさえ怒鳴って、感情を乱暴にぶつけてしまった。


 もう、説得だなんて――


「あー、コホン」


 突如、ライオンが大きくわざとらしくせき込んだ。


「どうかしたのですか、ライオン?」


「いやね、ちょっとコカムイくんにアドバイスをと思って」


「アド、バイス……?」


 それをもらったところでどうにかなるものか。そんな思いもあったけれど、何か変わるかもしれないという淡い希望を抱きつつ僕はそれを聞くことにした。


「大したことじゃないよ、ただ、ここまで来ちゃったら一度”プライド”を捨ててみるのもいいんじゃないかな~……ってね」


 プライド、僕のプライド? それが、説得の邪魔になっていたのか? 本当にそうだったなら、僕はなんて馬鹿げているのだろうか。


「無意識のうちに、『これは使いたくない』って思ってた方法、思い切ってそれを使うのも手じゃないかな?」


 無意識のうちに僕が忌避していた手段――それはきっと、『アレ』だ。


 『アレ』を使ってしまえば、イヅナの言葉を、彼女が夢見ていた存在を肯定してしまうから。僕が、認識されなくなってしまうかもしれないから。


 ライオンの言う通り、本当にプライドが、自分を認めてほしいという思いが、その方法を使うという考えを、頭の中から消し去っていた。


――もうここまで来てしまったんだ。例えずっと前からこうなると決まっていたとしても、それを変えることは不可能じゃないはず。


「ありがとう、ライオン。活路が見いだせた気がするよ」


「それはよかった、頑張ってね、コカムイくん」



 博士が再び手を叩き合図をした。


「では我々はの準備にかかるのです」


「……分かった」


「あくまで最終手段です、我々のことは気にせず、ガツンと言ってやるのですよ」


「あ、あはは……ありがと、助手」


「お前なら大丈夫だ、その強さを見せてやれ!」


 ヘラジカは僕の背中を手のひらで叩いた。程よい痛みと共に、覚悟が決まった気がした。


「ありがとう、ヘラジカ、行ってくる」


 キツネの姿になって、イヅナの居場所を把握した。イヅナのいる部屋へと向かった。






「入るよ、イヅナ」


「……ノリくん?」


 その部屋は明かりが遮られ、前がほとんど見えなかった。声が聞こえなかったら、イヅナの場所も掴めなかった。


 狐火で明かるくすると、イヅナは布団の上に座っていた。髪や耳の様子からして、つい先ほどまで寝ていたことが分かる。


「どうしたの、まだ、私を外に連れ出そうと?」


「イヅナ、僕は――」



「いいよ、行っておいで、私はここにいるから」


 その、希望を失った声に驚愕した。目を見ても、光が感じられない。こっちを見ているけど、見ていないようにも思える。


「どうして、僕はイヅナと一緒に外に行きたいのに……」


 言葉を出そうか出さまいか、迷うように口をパクパクさせていたけど、やがて一つの言葉が出てきた。


「そればっかり」


 その瞬間に、堰を切ったように言葉が濁流のごとくイヅナの口からあふれ出した。


「ノリくんはそればっかり、私はここでノリくんと幸せに暮らしたいのに、ノリくんはここでの暮らしをずっと拒んでる、ノリくんも楽しんでたのに――」


 思いが強くなりすぎると、同じ言葉しか出てこなくなるみたいで、イヅナはこんな言葉を十回近くは繰り返し喋り続けていた。



 だから、それもここで終わらせよう。


「イヅナ」


 僕は、手を伸ばした。


「ノリくん、私はもう嫌、ここで一緒にいられないなら、私は……」


「前に、『何でもしてあげる』って、言ってくれたよね」


 それは、『カミサマ』という存在を認めること。


「僕と一緒に外に出ることは、その『なんでも』には入らないの?」


 そしてイヅナにとっての『カミサマ』という存在が、僕であると認めること。


「イヅナの言う、『”カミサマ”の願い事』は、聞いてもらえないのかな」


 一度考え、イヅナを壊してしまうかもしれないから、『カミサマ』を認めたくないから、心の奥底にしまった方法。



 イヅナは泣いた。


 それもそうだ、彼女の言ったことを言質として、彼女自身の願いと正反対のことをさせようとしているんだから。


「ずるいよ……そんなの……」


 だから、こう言われてしまっても仕方のないこと。この方法も失敗かと、そう思った時、


「……ぅぅ……」


イヅナは、僕が伸ばした腕を掴んだ。


「イヅナ……」


「あと、一回だけだから……!」


「え……?」


「だから、『カミサマのお願い』はあと一回だけ! ……今回は、ノリくんと一緒についていってあげる」


 一緒に出るという願いを聞いてくれるということにも驚いたけど、あと一回は聞いてくれると言ったことにも驚いた。びっくりしているうちに、イヅナは僕の額に手をかざした。


「これで、飛べるようになったよ」

「あ、ありがとう……」


 でも、一体なんで……


「ノリくん、『カミサマ』って呼ばれることが苦手だったよね、そう見えた。だけど、『カミサマの願い事』って言った。そこまでしてノリくんがしたいことなら、私はついていかなきゃって思ったんだ」


「そこまで、『カミサマ』にこだわるの?」


「うん、だって白狐は、カミサマの使いだから」


 まだまだ、僕はイヅナを理解することが出来ない。今も迷っている。イヅナを変えるために動くべきか、今のままのイヅナを理解しようとするべきか。


 変えるなんて、傲慢だ。理解するだなんて、おこがましい。どっちもどっち、そう思う。だから、どっちがマシとかそういう基準じゃなくて、僕がどうしたいかで、決めることにしよう。




 ひとまず、縄で捕縛するような事態は避けられた。


「博士、入って大丈夫だよ」


「全て聞いていました、うまくいって何よりです」


「うぇ、博士……」


 博士の姿を見て、イヅナは露骨に嫌そうな顔をした。その様子を見て、博士も眉間にしわを寄せた。


そして博士は実にわざとらしく話を始めた。


「おやおやイヅナ、私は今回のことはお咎めなしとしようとしていましたが、そんな反応をされては考えが変わってしまいますね……助手」


「はい」


 どこからともなく現れた助手がイヅナを後ろ手に縛ってしまった。


「え、え!? なんで?」


「あえて言うとすれば、博士を敬わなかったから、なのです、ヘラジカも運ぶのを手伝うのです」


「縛るのは、コカムイが失敗した時だけじゃないのか?」


「事情が変わりました、一度外に持って行ってから図書館まで運びます」

「ヘラジカ、お前は外まで運んだら帰っていいのです」


 事情が変わった、ね。大方嘘なんだろうな、と思うくらいに手際よくイヅナは外に運ばれてしまった。


「では、こいつは借りていくのですよ、コカムイ」


「ああ、うん」



 そしてどういう風の吹き回しか、屋敷の中でライオンと二人取り残されることになってしまった。


「ともあれ、うまくいってよかったよ」

「あはは、ライオンのアドバイスのおかげだよ」


「褒めたって何も……いや、応援くらいはしてあげよっか、頑張れコカムイくん、まだまだ始まったばっかりだよ~」


「うん、そうだよね、全部これからだ」


 応援の言葉を述べつつも、ライオンのニヤニヤが止まっていなかったのがやはり気がかりだったけど、まあいいか。


「じゃあ、これからどうしよっか」


「……あ、セルリアン!」


 今更思い出した。屋敷の敷地内のは片づけられてたけど、外のはほったらかしじゃないか!


「ああ、それなんだけど、あのセルリアンたち、なぜか全然襲ってこなかったんだよね~、外のも中のも」


 一切襲ってこない……多分イヅナが何か細工したんだけど、能力についても謎が増えるばっかりだ。


「じゃあ、図書館までついていくよ」


「私は城でゴロゴロしてようかな~……ふわぁ~……」


 じゃあねと言いながら、大きくあくびをして、ライオンは行ってしまった。



 じゃあ、僕も行こう。


 赤ボスを抱えて、図書館まで飛んでいく。今日は雪山に……と思いながら、そこにキタキツネがいることを思い出してやめにした。久しぶりにロッジにお世話になろう。


 キタキツネは、どんな思いを持っているんだろう。イヅナともども、何が起こるか一切予測できなくて、心の底からドキドキさせられる。


 どちらにせよ、思いに応えるには僕の中にあるこの「嫌悪」とケリを付けなければいけない。



 まだまだ、大変に楽しくなりそうだ。


 そんなことを思いながら、僕は数日ぶりの空を悠々と飛ぶのだった。


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