1-06 キツネ宿の夜
ふぅ。
一旦休んでからまたやろう。少しお腹が空いたからジャパリまんが食べたい。
「ねえキタキツネ、ジャパリまんってどこにあるの?」
「…さっき、あっちの辺りでボスが持ってたよ」
ボス、ってことはラッキービーストだね、ついでに見てみるチャンス、ラッキー!……なんちゃって。
キタキツネが指さしたあたりに来てみると、温泉が見えた。見回してみるけどそれらしきものはいなかった。
「こういうときは呼んでみた方がいいかな……おーい、ボス~」
少しすると、ぴょこぴょこと足音を立てて青い耳と尻尾をもった小さいロボットが頭にジャパリまんの入ったかごを乗せて出てきた。
「何カ用カナ」
「えーとねー………とりゃぁ!」
「アワワワワワ……」
不意打ちでボスごとジャパリまんを取ることにした。「ジャパリまんノ一人占メハダメダヨ」とか言ってたけどこっちはボスそのものが目当てだ。
僕にも一体くらいお付きのラッキービーストがいてもいいじゃないか。ジャパリまんは2つもらって残りはカゴと一緒に他のボスに渡した。
「そういえばもうこんな時間か……ボス、今何時?」
「今は大体7時くらいだよ」
ボスの声が後ろから聞こえてきたので振り返ったら、かばんちゃんの手首のボスが反応していた。
「あ、かばんちゃん、そういえば何してたの?」
「サーバルちゃんと一緒に前に作ったかまくらの近くにいってきました」
「かまくら……ってかばんちゃんが作ったの?」
「そうだよ! もうなくなっちゃってるかと思ったけど残っててよかった!」
「コカムイさん、そのラッキーさんは?」
「ああ、僕にも一体いた方が何かと便利かなって思ってね」
部屋に戻ると布団が3つ敷いてあった。
「あれ、同じ部屋なの?」
「え、どうかしたの?」
「…えっと、一人でゆっくり眠りたいなって」
「じゃあ、奥の部屋にこの布団持ってくね!」
「あ、自分でできるよ」
布団を隣の部屋に動かした。さて、これからどうしようかな。
「ねえ、おんせんに入ろうよ!」
「え、温泉? って待って腕引っ張らないで!」
「ほら、早く入ろうよ!」
「一緒に入るの!?」
「え、一緒に入るのはいや?」
冗談だよね、いくら元が動物だからって一緒にお風呂なんて……ギンギツネとかばんちゃんは顔を赤らめているからサーバルだけわかってないみたい。
「今日は何かと一人になりたいんだ、先に入っててよ」
「そっか…。じゃあかばんちゃん、入ろう!」
なんとか危機回避できてよかった。その後、キタキツネとゲームで対戦することになった。
ピコピコ ピコピコ……
ゲームは結果だけ言うとキタキツネの勝ちだった。普段からこのゲームをやってるからある意味当たり前かもしれない。それでもちょっとは善戦できたからまあいいか。
「そういえば、サーバルたちが入ってるお風呂とは別のお風呂があるわ。
そっちに入ったらどうかしら?」
「……いい湯だな~」
夜の景色もまた綺麗でいい場所だ。
ついうとうとしてしまいそうになるくらい気持ちいい。
「いい湯だろうねねね……」
「そうだねねね……って、え?」
知らないフレンズが入ってきた。
「カピバラだよよよ……」
この際そんなことどうでもいい。せっかくサーバルたちと違う方に入ってきたのに構わずこっちに入ってくるフレンズがいるなんて……
ギンギツネが止めてくれればよかったのに。そんなこと言っても仕方ないしもう十分温まったからさっさと上がろう。念のためとはいえタオルを巻いていてよかった。
「さあ、今日の日記を書こう」
『3日目
バスでゆきやまちほーにある温泉宿に来た。ゲームを立て直してから遊んだ。
ついでにラッキービーストを捕まえた。明日はみずべちほーとしんりんちほーを越えて図書館につく予定
初めて出会ったフレンズ
キタキツネ ギンギツネ カピバラ』
こんな感じで大丈夫だろう。
「じゃあ、寝ようかな……」
「オヤスミ、コカムイ」
「ん……んー?」
なにかがしっくりこない。何だろう。なにかむずむずする。
「あ、ボス。コカムイじゃなくて、”ノリアキ”って呼んでよ」
「ワカッタヨ、ノリアキ」
よし、自然な感じになった。苗字で呼び捨てはパークガイドロボットらしくない。
「それじゃあ、おやすみ、ボス」
宿にいるみんなが寝静まった、丑三つ時くらいのこと
「えっと、日記は………」
ピピピ
「ノリアキ、コンナ時間二ドウシタノ?」
「……ふふ、なんでもないよ」
そう言って手帳をしまった。
「月が、綺麗だね」
「ソウダネ」
「……そうじゃなくて、こんな時は『死んでもいいわ』っていうんだよ?………なーんてね、冗談だよ。だって、今夜は月が青くないから」
月が雲に隠れて、暗くなったような気がした。
「肌寒いし、寝よっと。おやすみ、ラッキー」
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