宮内浩 春 37
ぐるぐる迷って出した結論は単純明快だった。
この前のライブを見たよ、と深水葵に声をかける。
そこで眠る少女のライブの感想を言う。最初に自分の言いたいことは伝えない。
それが結論だった。
婆ちゃんに言われたことの一つに「良い作家になりたかったら、良い読者になりなさい」というのがあった。
僕は良い小説を書きたいとは思っているけれど、良い作家になりたいと思っている訳じゃなかった。
ただ、婆ちゃんの言うことには納得ができた。
本に対する良いエッセイや書評を書く作家の作品はどれも良いものだった。
自分の言いたいことをちゃんと伝えたいのなら、相手の言うことをちゃんと聞くべきなのだろう。
深水葵が僕に言いたいことがあるのかどうかは、また別の問題だけれど。
僕は家に戻って眠る少女のCDを流しながら、眠る少女の曲の良い所、心惹かれたフレーズ、声、音と言ったものを原稿用紙に書いていった。
自分が書いた単語やフレーズに引っ張られ、次の言葉が浮かんで手は勝手に動いていく。シャーペンの芯が折れた時、ふと書いたものを読み返した。
それはまるでラブレターみたいで、途端に照れ臭くなった僕は書くのをやめた。
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