X102年 11月20日

朝:トースト

昼:買ってきたお弁当

夕:オムライス



ここ最近はお互い仕事も落ち着いて穏やかな日々が続いている。しかし、彼は何か悩み事があるみたい。家にいても心ここにあらずといった感じだ。心配して聞いてみたら、「大丈夫」と笑った。こういう時は、だいたい大丈夫ではない。私は彼を抱きしめた。彼はぽつりと「ありがとう」と言った。


その後、疲れていたみたいで彼は早めに寝てしまった。仕事で何かあったのだろか。助けになれない自分が歯がゆい。


ふと彼と出会ったときを思い出した。

あれはもう5年前か。

私が働き始めてこの町で暮らすようになった頃、美味しい紅茶が飲める喫茶店に通うようになった。彼はその店の店主の息子で、時々店を手伝ったり席でお茶を飲んでたりしていた。同い年だったこともあり少しずつ話すようになって、気が付いたら大事な存在になっていた。

彼が告白してくれた時に淹れてくれた紅茶の味は今でも忘れられない。いつも冷静で表情の変わらない彼、告白の時も表情は変わらなくて、だけど紅茶の味がすごく苦くて。ああ、緊張しているんだと笑ってしまった。

今はその喫茶店は閉店している。店主…彼の父が病気で亡くなってしまったからだ。その時も彼はあまり感情を出さなかったが、葬式が終わった夜にお店で一人で泣いていた。思わず私は彼を抱きしめた。彼は何も言わず私の腕の中で泣いていた。

本当に強くて不器用で優しい人だ。


そんな彼を一生支えていきたいと、その時思ったのだ。

彼の力になりたい。

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