再び
まず俺達が取り掛かった事は、レイジの記憶をたどって元々いたであろう場所を、ある程度の範囲で絞り込む事。
それが済めばその範囲内のそれらしい建物や神社、
頭数は別荘内にそろってるし、ここまで一緒にいる日々が長いとそれぞれに得手や不得手も分かってくる。
得意分野で貢献できるように作業を割り振れば、こういった作業も案外スムーズに運んでいく。
その中で俺は…お茶や飲み物を出したり、メモを見ながら買い物に行ったり位しか手を出すことが無いのが申し訳なく思える。
――今も市川母と二人で買い物に向かう途中なのだ。
「ねぇシンジ君」
「は、はい!!」
ふふふっ
運転していた市川母が俺の方を向いたと思ったら突然笑い出した。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よぉ。とって食べたり……しないから」
――その……間はなんですか?
「あ、いえその、き、緊張してるわけではないんですけど……」
「真司君てウソがつけない良い子なのねぇ。なんとなくわかる様な気がするわ」
「えと……何の話ですか?」
「あぁ、そうそう……そういえばここの別荘を買う時に少し聞いた事があるんだけど、この前伊織ちゃんと日暮さんが踊ってたあの舞台って確か前は違うところにあったらしいのよね」
「へぇ~そうなんですか……ん? それってどういう事ですか?」
その話が気になった俺は、買い物に行き予定の店の駐車場で詳しく……といっても市川母が聞いた範囲の中での事だけど聞かないといけないような気がした。何かが俺の心と頭に引っかかりを感じたからなんだけど。
「それじゃぁ……もしかしたら……すいません!! 予定変更できますか?」
「え!? ええできますよ。買い物は……しないの?」
「しますけど、後にしましょう!! 電話しておきます!! 今からそこに向かってください!!」
「分かったわ」
車は駐車場から出て大きな道路に向かう。
日暮さんのウチの方へ――
「やぁ藤堂クン待ってたよ」
「いつもすいません突然で」
「構わんよ。さぁ市川さんもどうぞ……ウチの娘がお世話になってます。迷惑かけてませんか?」
「いえいえ迷惑だなんて……楽しく過ごさせてもらってますよ」
着いた俺と市川母は連絡をしていたこともあり日暮父に温かく迎えられた。
社交辞令ともいえるような会話をする二人だけど俺はどうしても聞きたい事があってここに来たのだ。
「あの……」
「ああ……すまない」
「それで、ここにこの社が建つ前は何があったのですか?」
「ココには何もないよ。草木が茂るただの野原だったようだ。ただ……藤堂クンが電話で話してた通りに昔の書物を読み返してみたら舞台の場所には確かに何かあったみたいだね」
「それってどんな物だったかはわかりますか?」
「う~ん…書いて無いなぁ…そもそも二百年とかそれ以上前の話だからなぁ……」
「そうですか……とりあえず舞台とその周りを見せて頂いていいですか?」
「もちろん構わんよ」
日暮家を後にして再び舞台へ。
市川母に頼んで運転してもらいながら揺れる車中で考える。
答えに近づいてるはずなのに一向に姿を現さない事に歯がゆさを感じる。
レイジが俺達の前に現れたのには理由があるはず。
その理由は伊織の事だけ。
そんなはずはない。
『そうねぇ……間違ってはないわねぇ』
突然自分の座る真横に現れた白い
「ぶふっ!! 母さん!!」
「え!? 母さん!? わ、私はそんな関係じゃないわよね!? まさか……響子と? それとも理央かしら」
――運転しながら俺の言葉に反応した市川母がとんでもない勘違いをしてるようなので、こういう場面ではきっちりと否定しておいた方が後々トラブルになることをある程度は防げるだろう。
「あ! すいません。その市川さんのお母さんの事ではないんです。亡くなったウチの母が今横に出て来てるだけでして。それからお嬢さんたちとは決して今のところそのような関係ではありません!!」
「そうなの? ふ~ん。
》達もまだまだねぇ」
市川母がニヤニヤしながら一人で納得してる。
――一応の誤解が解けたからこの場は良しとしておこう。それよりも今は母さんだ!!
『真司、あなたの目の付け所は悪くないと思う。ただみるところが見当違いなだけじゃないしら』
「え? そうか…探す場所が違う…か。ありがとう母さん、何かわかりそうな気がして来たよ。それと聞いても良いかな?」
『かしら? 今のカレシ? もちろんいませんよ? 慎吾さんloveですもの」
「げ!! そんな事聞かねぇよ!! 伊織の事だよ!!」
『伊織ちゃん? 確かカレシはいないわよ。好きな人はいるみたいだけど?』
「だから聞いてねぇって言ってんだろ!! ちょっと好きな人ってとこは気になるけど、レイジとの関係の事だよ!!」
――なんだろう? 本当に俺の母さんなのかな?
――俺が小さかったから母さんを知らないだけなんだろうか? このノリの良さって……
『もちろん知らなかったわよ。伊織ちゃんだってそうでしょ? なら
「うん。だよね」
そんな親子喧嘩にも似た会話をしてる間も車は動いていて、もうすぐ舞台へと到着しようとしていた。
数日前にここで事件が一つ解決した――
その捜査がまだ続いているので、立ち入り禁止のテープがいたるところに貼られている。
ザザザー
キィッ!!
「着いたわよ」
「ありがとうございます」
「私もついて行った方がいいかしら?」
「そうですね。大人の力も借りないといけないと思いますから、一緒にいってもらえると助かります」
「素直ね。ふふっ。好感度アップよ」
二人で車を降りて舞台の楽屋控室の方へと向かう。
その前に隣接されている事務所に立ち寄らなくてはならない。
ウチの父さんを知ってる人がいると助かるんだけど、そんなにうまくはいかないだろう。
最悪捜査を邪魔するなって追い出されるかもしれない。
思いながら歩を進める俺はある場所に眼を奪われていた。
それは前に来ていた時には気付かなかった。
事務所から楽屋へと続く通路に突如現れるドアらしきもの。
見た時から感じていた。俺は
※作者の落書きのような後書き※
この物語はほぼフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。
ついに第7章も大詰めになりました。
振り返るとこの7章が一番長いお話(話数的に)になってしまったようです。
もうしばらくお付き合いくださいm(__)m
楽しんでもらえるように鋭意執筆を重ねてまいりますm(__)m
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