くすっ
「だ、ダメだ!! 綾香さん!!」
男の元に走り出していた俺は、男に向けられた憎悪を伴う綾香の腕を振り払おうと――
『やめなさい。あなたの子の腕はこの人を
その前に幽体である母さんが綾香さんの腕を振り払った。
「か、母さん!?」
『な!?』
『落ち着きなさい。あなたは仮にも神に舞を
「ひ、ひぃぃ」
『さぁ、あなた方もまだ死にたくはないでしょ? 全部話してしまいなさい。さもないと……この
――うわぁぁ……幽霊にニコってされたらこえぇぇよぉぉ。
まぁ、結果的に母さんのニコォって言うのが二人の戦意を失わせることになったようで、その場に崩れ落ちた。
近くにいた警備員の方に連絡してもらってこの催しの関係者の方に来てもらい、証拠画像と映像ともを一緒に引き渡した。後はしっかりと調べてくれることを祈るばかりだけど、たぶんそれも難しいと思う。何しろ前からあった事柄なのに、今日この日までこの鶴田が参加できているという事がその証拠だ。何らかの力を使ってもみ消してきたことは想像に難しくない。
――それを解消するための人がもうすぐ来るはずなんだけど、その前にまだやらなきゃいけないことが残っているんだ。
「急に頼み事してごめんな、みんな」
俺はペコっと頭を下げた。
「なんか楽しそうだから全然いいよ」
「そうそう待ってるのつまんないしね」
「カレンがうるさいから連れてきちゃった」
市川姉妹の発言に不快そうで恥ずかしそうな表情をするカレン。
でも三人とも楽しそうだ。
「で? 電話じゃまだやることが有るって言ってたけど、これからどうするのよ?」
俺の肩に手を置いたカレンが少しもごもごしながら言う。
「ゴメン、ちょっと力を貸してくれ!!」
「何しに来たと思ってるの? そんなの当たり前じゃない」
響子と理央もうなずく。
「じゃぁ今から説明するからよろしく頼むよ」
俺の胸に温かいモノが込み上げてきたけど、今はその感情に浸ってる場合じゃない。
一通りの説明をした後、俺達はそれぞれの目的の場所へ散っっていった。
舞台袖の楽屋近くでは――
お
「ちょっと、連絡来ないんだけどどうなってるかしら」
「由紀ちょっと落ち着きなよ!! あんまり騒いでると気付かれちゃうよ!!」
「うっ!! そ、そうね」
慌ただしく動き回る女性二人。
「もう遅いと思いますよ」
少し離れたところで今話し終えたばかりのケータイを片手に持ち、私は隅でこそこそと話をしている二人の方に静かに歩いて行く。
――この二人が、綾香さんから聞いていた女性に違いない。
「今、
声を掛けられた二人は体を大きく震わせて、明らかに動揺しているようだ。
「な、なんの事かしら」
「そ、そうね。なんの話をしているのか分からないんですけど」
演武の準備のため集まっていた人たちも私たちの子の話し合いに気付いたみたいで、手を止めてこちらに顔を向け始める。
綾乃さんも気づいたみたいで静かに近寄ってきて、私の横まで来ると立ち止まった。
そのまま二人を見つめる。
私は一つ大きなため息をついた。
「そうですか。素直に言ってくれれば事を大きくせずにこのまま引き取ってもらおうと思っていたんですが……」
隣にいる綾乃さんに視線をチラッと向けてまた前にいる二人に戻す。
「??」
視線に気づいた綾乃さんが不思議そうに私を見てきたけど、その視線に微笑みだけを返した。
――本当ならここから先の話は聞かせたくなかったんだけど……仕方ないですね。
周りに人が集まって輪のなりつつあり、ざわざわとし始める。
「松田さんに北方さんですよね? お二人なんですね綾香さんの亡くなった事件の犯人は」
「「な!?(に!?)」」
目の前の二人はもちろん、隣にいる綾乃さんも含めこの言葉を聞いた周りの人たちからざわつきが消えた。
「向こうで男性二人がすべて話してくれましたよ。すべてはあなた方二人が真ん中で踊るって事の為だけに綾香さんに手をかける計画をして、男性二人がその準備をしてあなた方がそこへ綾香さんを誘い出したと」
二人に向かって淡々と話しかける。
「ちょ、ちょっと!! 何を証拠に言ってんのよ!!」
「そ、そうよ!! 言いがかりだわ!!」
「義兄と一緒に私の知り合いの方たちが、いろいろな場所にある証拠を集めてこちらに向かってますけど……それでもお認めになってもらえませんか?」
お願いするように声を小さくした。
「あ、当たり前でしょ!!」
「あたしたち、し、知らないし!!」
しかし二人はフンスと胸を張り、伊織の言葉を受け入れる気はさらさらなさそうだ。
改めて二人を見つめる。
――くすっ
「??」
「何がおかしいのよ?」
私の顔は今すごく嫌な表情をしているに違いない。この人たちはたぶん言っても分からないし認めようとはしないだろうな。そんなことは分かってた。
――だけど……
「二人とも、この
始めは薄く、そして少しずつその姿が表れてくる。
「え? そ、そんな……」
「ま、まさかそんな……だって」
二人の前に現れ始めた薄い霧のようなモノ。それは時間と共に少しずつこくなって行き、最終的には一人の姿へと変わっていた。
「「あ、綾香」」
『お久しぶりね二人とも』
その
その表情とは違い、二人に向けられた言葉は私の肌にも鳥肌が立つほどの、とても冷たい感情に覆われていた。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。
この物語を書くにあたって大事にしていること……真司とかかわる皆さんの繋がり方ですかね。
いかに成長していっているかも表現できるように誠意鋭意執筆してまいります。
次回はエピローグまでの二本立て。
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