伊織の憂鬱(ゆううつ)
車に乗り込む義兄あにの後ろ姿を見ながらため息をついた。
「また、お
ホントなら兄の隣で微笑む役目は自分なのだと心の中で何度も思う。
その思いが伝わることは今は無いだろう。
なぜなら私は大事な秘密を隠している。それが義兄に知れてしまうことを恐れているから。せっかく仲良くなれて今はとても大事に思ってくれているだろうことは十分に私に伝わってくる。
だから今は言えない。
だけど、いつかは話をしなければと思う。
そう、私にも義兄ちゃんと同じモノが見えているという事を……
私はお父さんを良く知らない。
お母さんと同じ職業だったことは知ってるけど、それ以外はお母さんがあまり話をしてはくれないからだ。
それに外見だって知らない。写真もない。
小さい頃はお爺ちゃんと、お婆ちゃんと暮らしていたけど、お父さんの話が出ることもなかった。
そしてそのモノがいることも当たり前だった。
私も小さい時から見えてたんだ。お母さんもお爺ちゃんもお婆ちゃんも、そのモノは見えてないみたいだったから話せなかったけど、私にはそれが普通の事。
ある時思い切ってお母さんに話したら、すごく悲しそうな顔をして涙を流してた。それが小さい私にも悲しくて泣いちゃった。
それからはお母さんにもそのモノの事は話してない。
私のことで泣いてほしくなかったから。
それから少し大きくなった私に、突然変化が起きた。
お母さんが大きな男の人と、私より少しだけ歳が上の男の子を家に連れてきたの。
この時のことはあんまり覚えてないんだけど、大きな男の人に会ってビックリして泣いちゃったみたい(^-^;。
その時、男の子が私の頭をポンポンなでなでしてくれたみたいで泣き止んだんだって。実はその時に撮られた写真が残ってて、今は私の大事な宝物としてずっと持ってるの。
それからしばらくしてその二人が新しい家族になった。私にお
「いおり~いくぞ~」
「まってよおにぃちゃぁ~ん」
どこに行くのも一緒だった。私はお義兄ちゃんを追いかけ続けた。
だからすぐに知ってしまった。お義兄ちゃんにも見えていること。お義兄ちゃんはそのモノたいがすごく嫌いだってことも。だけどなぜかお義兄ちゃんに寄って行っちゃう。
すごい嫌な顔しながらお義兄ちゃんはそのモノ達のことを助けちゃうの!!
すごいよね!!
だけど、やっぱり怖いみたいで何度も逃げ出すとこも見ちゃった。
だから私は思ったの。
「お義兄ちゃん、今日から私が助けるからね!!」
「はぁ? 何言ってんの?」
てお義兄ちゃんに言い返されちゃったけど、私の決心は変わらないんだから!!
なぜか私にもそのモノ達が見えるのに、私にはまったく近寄ってこないの。
それどころか消えちゃったりすることもあって、これって使える!! とひらめいた。
そう、私が近くにいればお義兄にはそのモノたちから影響されないって。
すごいでしょ!?
だから、どこに行くときも一緒にいるんだって。
ずっと、ずっと思ってたのに――
「シンジくーん、聞いてる?」
「ああ、カレン聞いてる、聞いてるからあんまり近づくな!!」
お兄ちゃんの後ろに、ふわふわ
――かなりベッタリしてる。
うぅぅ~!!
心配だけど私がそばにいれば、すぐにでも離れていくと思ったから少しだけ様子を見てた。
――あれ? でもこの人……何か今までのモノ達とはちがうんだよなぁ。何がっては……言えないんだけど。お義兄ちゃんもこの人に協力してるっぽいし。なんだろう? 気になるなぁ……
突然アイドルになるための面接とかどうしちゃったのかと思ったけど、お兄ちゃんには何か考えがあるみたいだし私も少しだけ気になるし、1回だけならそういうのもありかも!!
ってうわぁぁ、この男の人、こわぁぁい!! う、後ろに真っ黒いもの憑けてるぅぅ!!
けど、うぅ頑張る!! お義兄ちゃんのためだし。
それに、お義兄ちゃんの後ろにいる女の人が怯えてるような感じが気になるんだよねぇ……
お義兄ちゃんがこの人を気にかけてるのと関係あるんだろうなぁ……
面接も無事終わったし、すこし楽しかったな。アイドルになるのもいいかも!!でも私にはお義兄ちゃんだけいればいいし。
もう少し様子を見ようかなって思ってたら、あのお義兄にいちゃんが一人で突っ込んで行っちゃった!!
あんなに怖がりで、私と同じ見えてるはずなのに全然慣れなくて、ホントは心優しいお兄ちゃんがまさか一人でなんて。
義父さんが動いてくれてるみたいだけど、間に合ってくれるかなぁ?
私には待ってる事しかできないのがつらいなぁ。
帰って着たら、無事に帰って着たらたっぷり甘えてあげるんだ!! 今日の事を忘れちゃうくらいに!!
お義兄ちゃんは無事に戻ってきた……その後ろにはもうあの女のひとは憑いてなくて、少し残念なのと、安心したのと複雑な感じ、なんでだろう? わかんないや。
それからはいつも通りの日常に戻った。
相変わらず、見えないモノたちにお義兄ちゃんは好かれてるみたいだけど、なるべく私が側にいるからか大事にはならずに済んでるみたい。
桜が咲いてお義兄ちゃんは高校生になった……
私は少し不安になる。だって学校が離れちゃうんだもん!! 一緒にいれる時間が少なくなっちゃう!!
その不安は的中することになる。
またあの女の人が現れたのだ。生身の人として。あの時はあちら側のモノだったから良く見てなかったけど、この人って……
「お、お義兄ちゃぁんカレン、カレンがいるよぉぉぉぉぉ~!!」
「 忘れてた… 」
って、えぇぇぇぇぇぇぇっ!!
あの時は[幽霊]さんでふわふわだったけど、今日はちゃんと足で立ってる。しかもあの私の好きなアイドルで頭の中がパニックですぅぅ(>_<)
それに――
二人でお出かけって(運転手さんもいるけど)お義兄ちゃんどういう事なのぉぉぉぉぉぉΣ(・ω・ノ)ノ!!
と、心の中で絶叫する伊織であった。
しかし伊織の受難は続くとか続かないとか――
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます