カレンとお出かけ

 カレンは語る――

「そのコとは幼稚園からの長い付き合いでさ、お互いに家に遊びに行ったり、来たり。ずっと仲良くしてて。中学生になって学校は離れちゃったけど、それでも連絡したり遊んでたりしてたのよ」

 少しだけ言いよどんだ顔には、悲しそうな表情と複雑な思いが見て取れた。

「あの事件のあった後、すこしたって体調も良くなったし、お見舞いとかにも来てもらってたから、お礼もかねて遊びに家まで行って会ったんだけど……なんだか様子が変わってて……」

「それで?」

「それで、最近忙しくなっちゃったから会えてなかったんだけど、一週間くらい前かな……ライブの帰りに偶然見つけて追いかけて呼び止めたんだ。でもなんだか別人みたいになってて。あたしの事もよく覚えてないみたいだったし……」

 言葉尻が小さくなって聞き取れなかったが、カレンの表情を見ただけでかなり心配そうにしているのは分かる。

「だからさ……」

「お断りします」

――言われる前にスッパリと言っておこう。うん。


「何よ!! まだ何も言ってないじゃん!!」

「言われてなくても大体わかってるからだよ。俺に見てくれって言うんだろ? やだよ。知ってるだろ? 俺はそういうモノ達と関わりたくはないの!基本的に慣れたくないんだよ!!」

「うっ!! な、なによ、そんなに強く言わなくてもいいじゃん」

――あれ? 俯いちゃったけど…カレンまさか泣いてないよね?

 あれ? 俺が悪いのかな?

「わ、分かったよ。見るだけ、ほんとに会うだけだからな」

「ほんと? いいの?」

 顔を上げたカレンは泣いてなんかなくて、むしろ舌を出していた。

――こいつ!! 女優か!!

「お、男だからな。二言はないよ」

 わぁ~いって両手上げて素直に喜んじゃってるし。

――こういう時はほんとにかわいいと思うんだけどなぁ……

「で、どうするんだ?」

「そうねぇ……それじゃ今週末開けておいてよ。迎えに行くからさ」


 は?

 って顔したな、たぶん。



そして週末――

 キっ

 という音とともに今藤堂家の目に黒塗りの車が止まる。

 時間は午前9時少し前。

 カレンと再会した週末。時間が過ぎるのは早いよね。


 ピンポーン!

 ピーンポーン!

「はぁ~い」

 今日は両親ともにいないらしく、義妹いもうとの伊織が玄関へと駆けていく。

 この時俺は完全に寝ていた。そもそもがこの日に約束していたことをすっかり忘れていたのだが…。


 タタタタッ

 バーン!!


「お、おに」

 ――鬼?

「お、お義兄にいちゃん。お、お客様が!! そ、その!!」

「あん?」

 まだ布団の中から顔だけ出して返事する。もちろん出る気はない。

「せ、セカンドの!!」

「お、落ち着け伊織。珍しいな」

 大変珍しい、うちの義妹いもうとの慌てる姿。

「だ、だって[セカンドストリート]のカレンが来てるんだもん!!」

「あん? カレン? ……あ、カレンって」

 がばっと跳ね起きて時計を見ると九時を過ぎたばかり。

 ――来るのはやくねぇぇぇ? つかやっべぇ、忘れてた。


 慌てて着替えること五分。

 ようやくまとまった姿で玄関へ向かうと、伊織がまだ信じられないって顔してカレンと向き合っていた。

「早く来るなよ」

「早い? てあなた今何時だと思ってるの?」

「あぁ~わり! 忘れて寝てたんだよ」

 すまんすまんと両手をあわせて謝っていると、隣にいた伊織の視線が俺に当たっているのに気付いた。

「お、お義兄ちゃんてカレン……さんと知り合いなの?」

「え、あ、うんま……な」

 フシギそうな視線だったものが尊敬のまなざしになっていくのを感じる。

「初めまして、妹さん? 私は日比野カレン。よろしくね」

 はい、出ましたアイドルスマイル。そしてその笑顔に瞬殺されるわが義妹。

――でもカレン、伊織の存在知ってるよね? 今の演技?


「あ、あの、私伊織です。あ、サ、サインいいですか?」

「いいよぉぉ」

 と、にこやかに返すカレンの返事を聞いた途端に自分の部屋に駆け出していく伊織。

「カワイイ義妹いもうとちゃんね」

クスクス

「知ってるくせに今更なんだよ」

 拗ねたように返事を返していると、手にサインペンと色紙のようなものを持った伊織が降りてきた。カレンは笑顔で対応する。

「じゃぁ、行きましょうか」

「ん、ああ、そうだな。伊織、悪いけど少し出かけてくるから戸締りだけはしっかり頼むな」

 と、声をかけて車に乗り込もうとすると

「え、お義兄ちゃん二人ででかけるの?」

 そんな声をかけられた。

「い、いや、勘違いするなよ。その、友達に会いに行くだけだからな」

「そうなの、ちょっとお兄さん借りるわねぇ」

 声をかけた後、車は走り出した。

 少し違和感があったような気がするけど、この時の俺は気づいてはいなかったんだ。



 立派な門を過ぎてからついた家は、とても立派な日本家屋で、庭もこれが日本庭園ですって感じのすごいとこだった。

 車から降りて、運転してくれていた、現セカンドストリートのマネージャー今田さん(女性の方でちなみにこの人には何も憑ついてなくて安心した)に迎えに来る時間を確認をする。


 [市川]と書かれた表札の下のボタンを押す。

 ピンポーン

 カレンが押すとすぐにインターホンから反応があって、お母さんと思われる女性が迎えに出て来てくれた。

 さすがに小さい時からの顔なじみとあってすぐにリビングに通してもらえたけど、女性が俺をいぶかしげに見ている目が気にならないではなかった。

 そのあとすぐに呼びに行ってくれた。

 しばらく他愛もない話をしていると、今日訪れた目当てのコと思われる少女がドアを開けて入ってきた。


「あ、響子ちゃん来たよ」

「いらっしゃいカレンちゃん。待ってたよ。すぐ部屋に行くでしょ?」

「うん」

 じゃぁおば様とか挨拶しているカレンの横で、[響子]とよばれた少女を見ていた。もちろん頼まれたことを果たすためであって、男として見ていたわけじゃない。

 この[響子]、見た目はもちろんお嬢様な感じが出てるし先ほどカレンと話をしていた感じからしても全く何も感じられず、もちろん何かが憑いてる気配はしない。

 部屋に移動する間も二人から「カレシ?」とか聞こえたけどとりあえず聞こえないフリをしておこう

 ハズレだな、良かったと思いながら二人の後を歩く。


 ブアァ

 ザワッ

 全身に寒気とともに鳥肌がたつ。頭から汗が流れだして背中に冷たい汗となって流れる。

 体が近づくなと警戒しているのがわかる。


「こんにちはカレンちゃん」

「来たよ、理央ちゃん」


 部屋から見えたその声とその姿に驚いた。[響子]がもう一人、地味目な服を着て立っていたからだ。


――双子か!!


 そして見えたモノはそれだけじゃなくて。それはこの[理央]にまとわりつくべったりとした黒いだった。





※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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