惑星フラター:未開の星でハーレムサバイバル!?
@peperon0
第1話 Livin For The Weekend
Livin For The Weekend その1
〔まもなく衝突します〕
赤く光る回転灯に照らされ息苦しい宇宙服の中で焦っていると、傍にいる名も知らない女は語気を強める。
『なにしてるの?早くして!』
「こんなのやったことないんだよ!」
厚手の生地に包まれた手を突き出し弁解するが、彼女は歯牙にもかけずコンソールを急ぎ操作していた。
既にヘルメットに表示されたタイマーは残り一分を切り、船は大きく揺れ彼女はバランスを崩し倒れ背負っていたカバンから中身が散乱してしまう。
「もう限界だ、逃げないと!」
『わかってる!』
背後では既に火の手が上がり今にもこちらへ噴き出してくる勢いだ。
落ちた荷を拾い集めようとする彼女の腕を強引に掴み、エアロックを開け
背中を強く蹴とばされるようにして外へと吹き飛んだ、地球から遠い遥か銀河の彼方の星へ。
こんなことになるなら、あのまま地球で腐っていた方がまだマシだった。
そんな後悔と共にもう帰ることのない母星へ思いを馳せた。
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数日前
おれは宇宙人に会ったことがある。言葉は通じず見た目も、価値観も、テリトリーも違う。
そんな奴等と毎日のように顔を合わせる場所、それが学校。
「このアンケート終わったやつから自由にしていいぞ」
担任の教師は「夢破れこんな仕事」を顔に出ながらもプリントを配っている。
期末テストから解放され周りの宇宙人たちは夏休みを目前にして独自の言語体系と価値観で騒ぎ始めた。
『試験の出来はどうだった』だの『夏休みは海へ』だの。所詮ただのひと夏の思い出を作ることで頭がいっぱいだ。
しかしプリントが全体に行き渡ると皆どよめき、授業中らしい落ち着きを一時的に取り戻し、
つられて内容に目を通すと彼等が不審がるのも頷けた。
【今が楽しくない?】
【このまま子供でいたい?】
【多くの異性から好意を持たれたい?】
はいといいえで答えるマークシート形式のアンケートだった。
素っ頓狂な質問に面を食らい周りを見ると誰もがふざけて適当に答え、終わった順からぺちゃくちゃと騒ぎ立てている。
最初から最後まで目を通すと心理テストかのような同じ問が続く。
【努力より才能?】
【なにをせずとも評価されたい?】
どれもこれも’’はい’’を強く囲まざるを得なかった。
日々の虚無感や願望を打ち付けるようにチェックを入れ数十問、気が付けば最後の問に。
【地球に未練はありますか?】 いいえ
チェックを入れ終わると力がこもりすぎたのかシャーペンの芯が折れ、教室の窓から遥か彼方へ飛んで行った。
しかし一体こんなものの統計を取って何に役立つのか、考えた奴の顔が見てみたいものだ。
教壇に目をやると騒ぐクラスメイトをよそに教師は我関せずと、テストの採点を始めている。
こちらも自習に甘んじて外界をシャットアウトし顔を腕の中へうずめた。
学校が終わり誰とも話すことなく出来合いの晩飯を買って帰り、レンジに放り込み、テレビをザッピングし食べ終えると風呂に入り歯を磨き気づけば今日もベットに横たわっている。変わらない日々
あいの風でカーテンが揺らめき遮るもののない月明かりが差し込み眩しい、もしあの光よりも向こう行けたら人も学校も全部忘れることができないだろうか、月光を遮るようにして今日もまた宇宙へ向けて人を乗せた船が飛んでいく。
明日の終業式が終われば明後日から夏休みに入る、しかし夏休みが終わったらまた学校が始まってしまう。それぐらいなら...
馬鹿な考えを締め出すように窓を閉めラジオをつけると、すぐさま眠気が襲ってくる。
「....を出発する彼女からのリクエスト! トニー・ベネット&レディ・ガガで……」
電波が悪くノイズが混じるが耳に残り自然と眠りに入った。
朝は何も食べず、起きて歯を磨き、髪を整えることもなく制服に袖を通す。気重に準備を整え、姉の部屋のドアをノックする。
「行ってきます」
そう言い、少し遠回りをして学校へ向かう。近道だからと見たくもない花束や届きもしない手紙や食べ物を目にする必要はないだろう。
校門をまたぎ教室のドアを開けるとぽつぽつと男女入り混じって楽しそうに話している。誰の視線も感じることなく椅子に座り、いつものように顔を腕にうずめうつ伏せになると校内アナウンスが流れ出す。
「2年5組の星野 守、至急校長室へ来なさい」
校長室へ呼ばれるだけで、身に覚えがなくとも焦り動悸が激しくなる、それも「至急」となると。
『なにしてる!早くしろ!』
不安を抱えながら一階へ降りると、粗暴な学年主任は苛立った素振りでこちらへ近づき、腕を引っ張り校長室へ押し込まれた。
中には安っぽさが見てとれる合皮のソファが向かい合い、それぞれに座る二人の男がその場限りの話をしている。
一人はソファとセットで売っていたかのような安っぽい茶色の背広のデブ校長。
そしてもう一人はこの二束三文の部屋に似合わぬ糊の効いた上等なスーツ、その胸元には自身の階級を示すのであろうピンを付けた30代ほどの男性が。
二人はこちらに気づくと校長が立ち上がり背後に回り肩を揉むような手つきで掴んだ。
『君は我が校の誇りだ!』
そう言うと随分と機嫌良さげに肉厚な掌で背中を叩き、スーツの男の向かいへ座らせ満足げな顔で背後に立っている。
相手の男は足元から見るからにブランドもののフラップ式のブリーフケース取り出し、中から一枚の用紙を取り出しこちらに差し出した
『このアンケートを書いたのは君だね?』
渡された紙は確かに昨日配られたアンケートだった。
男は軽く咳ばらいすると胸のピンの角度をわざとらしく調整し
『君は選ばれたんだ』
そう言い放つと、俺の手を取りいかにも高級でございという万年筆を握らせもう一枚紙を取り出し、目と口を同時に動かし笑った。
それからはトントン拍子というには、あまりにスタッカート調子な日々が始まった。
男に渡された書類へ言われるがままサインさせられると、校長室にはカメラとレコーダーを持った人達がなだれ込み
次の日にはニュース番組や聞いたこともないような雑誌でインタビューを受け、彼が用意したメモ通りに答え、何ひとつ状況を理解できないまま既に学校は夏休みに入っていた。
ここ数日手配したホテルでの寝泊りの日々の中、深夜の2時
インターホンが鳴りドアの前には胸のピンが2つに増えたスーツの男が"あの"笑顔で玄関先に立っている。
『さぁ乗って』
寝間着のまま無理やりリムジンの後部座席に押し込まれるとすぐさま発車した。
「今日はどこで、何するんですか」
この一週間、この縦に広いリムジンに押し込まれるたびに聞く質問に今日は答えずにいる。
外に目をやろうとすると今までと違いリアウィンドウには内から黒いスモークがかかり外が見えなくなっていた。
数時間、睡魔と車に揺られているとウィンドウのスモークが晴れ、外にはマイアミのセブンマイルブリッジかのような長い橋と海が延々と広がっている。
海風を浴びようと窓のスイッチを押すがなんの反応もない、いい加減答えろ。そう凄もうと決意を固めると
足元からガス漏れのような音がし狼狽えると彼の声がスピーカーを通して聞こえる
『ほか乗組員は既に船の中でコールドスリープについている、航路はAIがコントロールしてくれる。』
突飛でわけのわからないことを淡々と話す彼の肩を掴もうとすると
気づかぬ間に運転席と後部座席の間にはガラスで遮られ、足元から白いもやのようなものが漂ってくる。
「おい!なんなんだ!おい!」
ガラスに掌を叩きつけ訴えるが、次第に手足が痺れ意識が濁っていく。
落ちてくる瞼の隙間からとてつもなく大きい白い建造物が見えてきた。
『いい旅を』
これが地球での最後の記憶
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