第4話偲香抄
五色の雲に乗ってえも云われぬ香りがただよってくるのは、まやかしではありませぬ。春日野で死んだ女人の魂が、白梅の香りとなって匂い立つのです。あの白檀の香は興福寺の美僧のものでございましょう。浄土に咲く蓮の香りをまとったのは、ひときわうつくしい稚児でございます。御仏もたいそうお気に召しておいででしょう。
さて、あなたさまの香りはいかがいたしましょうか。
伽羅の香りは値が張ります。沈香はどなたにもお使いいただけますが、あなたさまのお持ちの珊瑚の数珠には柘榴の香りがふさわしゅうございますな。一体幾人の魂を吸いとっておいでなのやら。どれひとつ、私にもお見せ下さい。これは我が兄の魂でございましょう。
第三十六回 Twitter300字ss
お題「雲」
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