古代ルニカに関する小文
今村広樹
本文
編者注:本書は古代ルニカ研究の大家であったイシさんによる、自身のルニカに関して調べたことを、研究者以外に広めるために書かれた文章です。
イシさんが本書執筆中にお亡くなりになったため、未整備な部分がたたありますが、故人やご遺族の意向もあり、最小限の編集、修整に止めております。ご了承いただければ幸いです。
またイシさんの絶筆である、死の前日に書かれた文章を、補遺として追加しました。
イシさんのご冥福をお祈りします。
私の故郷である、ルニカと呼ばれる都市とそこにある文化や風習、民話などを書こうと思った理由は、
「君の寿命は、後1年くらいにゃ」
と、宣告されたからである。
生い先短い身になって、今更ながらに、自分が今まで調べていたり、収集したモノを公表すべきだと考えた。
文章に関しては所詮シロウトなので、意味がとれない箇所や、文章が繋がってない箇所もあるだろうが、ご容赦いただきたい。
さて、ルニカは新世界最古の都市なのだが、その文化について考えるにあたって注意すべき点がある。
それは、幾度かの他文化交流や、人間の侵略により複数の文化が結合してしまっている、という問題である。
人口20万の都市に、たとえば四畳半の和室で紅茶を飲むといった、外から訪れた人間には理解しがたい和洋折衷の習慣があったりするのだ。
とは言うものの、長年の研究の成果から、最初は所謂『メソアメリカ』すなわちアステカと、19世紀の英国が混ざったような文化であったと推定される。
やがて、前記のようなことがあって、今のルニカに至るというのが、一番有力なルニカ文化の展開である。
ルニカを象徴するのは、古代ルニカ猫が信仰したというジャガーを祀ったピラミッド上の階段を上がった先にある神殿である。
ジャガーは人間から逃げた猫たちを率いて、このルニカまでの道を先導したという。
都市としての特徴は、海に面している為、サケやイカを初めとした魚介類が取れ、またこの海にそそぐティトラン川を中心とした肥沃な地形で、ジャガイモなどが取れるという風に、食料にはこと欠かないのだが、それ故にある程度自給自足出来てしまい、人間やその人間と共存する猫たちとは、最小限の交流しかなされなかった。それは今もあまり変わらない。
ルニカは、先に書いたように現存最古とされる猫文明の遺跡があり、また世界有数のサンゴ礁を有するビーチもあり、この2つを観光の柱としている。
そのため、人間や他地域の猫も住むようになり、今では共通語圏の1つとなってしまった。
我々猫は、語尾や『な』のつく言葉ににゃないしはニャをつけるが、元々は母音につけていたのが、当時のルニカを記した資料に書かれている、がそれは失われてしまった。
それ故に、私がこうして、記録しなければならないのであるが。
さて、古代ルニカ文明が遺跡を残して崩壊した理由は、奇しくも彼らが真似たのであろうアステカと同じ外部からの侵略によってである。
ここを『発見』した人間たちは、かのコルテスの如く、古代ルニカを破壊してしまった。
後世まで残ったのは、ジャガーを祀る神殿のみである。
しかし、ここに住んでいた猫の生き残りは、ジェロニモと呼ばれる猫を中心にゲリラ活動を続けた。
やがて、人間たちの間に闇夜に隠れて、背後から
シャー!!!
と、喉に爪痕をのこして去っていく猫の集団が認知される。
そうした結果、ルニカの猫たちはかろうじて居住地は守ることができた。
人間の側も、過去の経験から共存した方が得策と判断したのである。
現在では、人間や人間と猫の混血である『メスティソ(雑種)』、そして他地方からの移住猫などによって、ルニカ猫は相対的に少なくなってしまっている。
ルニカに暮らす20万の内、1万くらいである。
ルニカ猫には、他の地域にはいない、いわゆる三毛猫という特徴があり、そのため、ルニカ猫と他の猫との区別は容易である。
この辺りには、『ケダマ』と呼ばれる、モフモフした生命体がいて、ルニカの猫たちは愛玩用として飼っていた。今では人間やルニカの外の猫にも飼われている。人間文明における犬や猫のようなものである。
とまあ、ここまでは人間文明におけるメソアメリカの要素ばかりが目立つが、猫としての特異さとして古代ルニカで『ヴァレット』と呼ばれる者たちについて書いておく。
ヴァレットとは、奇しくも人間におけるイギリスでそう呼ばれたそうであるが、いわゆる従者のことを指す。
役割としては、雇用主に対して身の回りと世話から、旅の手続きと通訳をして、ようは雇用主が快適に過ごし、威厳を保ち続けるためのあらゆることをこなす。
この職業がなぜ古代ルニカにあったのかは謎であるが、一説によると猫の人に付く習性の延長であるという。
さて、ルニカにはご多分に漏れず、その土地のモノを使った料理があり、たとえば
ジャガイモ:1個
いかのシオカラ:大さじ1つ
で、ジャガイモをきれいに洗って、皮つきのままラップでくるんで、4分くらい加熱する。
そして、器に盛って、ジャガイモに十字の切れ込みをいれてそこにシオカラを乗せれば、ジャガシオカラという料理が
また、銘菓として
チーズ:60グラムくらい
バター:50グラムくらい
卵:1個
サーモン:40グラムくらい
で、まず容器にバターを入れて、木べらでクリーム状にする。
さらに、グラニュー糖を加えてすり混ぜ、卵を3回に分けて加え、そのつど混ぜる。
そして、薄力粉、ベーキングパウダー、塩をふるいながら、牛乳、チーズ、サーモンを混ぜ加える。
最後に、紙の容器に上記のモノを入れて、トッピングに好きなモノをのせて、15~20分程度焼く。中心に竹串をさして生地がついてこなかったらチーズとサーモンのマフィンが
さて、ここで稿を改めて、ルニカに伝わる伝承や昔話を、いくつか書いてみようと思う。
ルニカの祖である、ワイルド・ガードと呼ばれる猫は、犬のコロンと二匹、創造主に飼われていた。
しかし、ワイルド・ガードはイタズラっ子で、ある日創造主の大事にしていた杖を壊してしまった。怒った創造主は、ワイルド・ガードをルニカに捨ててしまった。
弱肉強食の理、小さいが故に狙われたワイルド・ガードであるが、ある老いたジャガーに救われた。それで、その老いたジャガーをワイルド・ガードとそのの子供たちは崇めるようになったという。
ティトラン川の上流に両岸がそそりたった絶壁があり、山の斜面には草木が密生していて、歩きにくい所がある。
ここには、白髪頭の山男が住んでいるから、近寄ってはいけないと言われている。山男はなんでも追いかけ捕まえると、手で引き裂いて食べてしまうと言われる。
彼は、煙草が好きだから、煙草に火をつけて差し出せば危害を加えないという。また、猫のように毛も耳もないそうだ。
昔、ある老猫夫婦がバッファローという動物の血の固まりを煮たらと、赤ん坊になる。そしてその赤ん坊はあっという間に大きくなって、さまざまな動物を老猫夫婦に与えた。
やがて、大きくなったその猫は冒険の旅にでた。
とある村の娘と恋仲になるが、
「子牛と言ってはいけないにゃ」
と、彼は娘に言っていた。
しかし、ある時
「あの子牛をとってにゃ」
と言ったばかりに、その猫はバッファローになって走りさってしまった・
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