本能寺にて絶命したはずの儂が冥界に召喚されてもふもふされる件
侘助ヒマリ
プロローグ 本能寺の変
如何と問われれば、「好かった」と答えるに足る半生であったとは思う。
しかし、悔い無しかと問われれば、答えは「否」。
人生五十年、夢幻のごとき生を思うがままに生きてきた。
散り際も華々しく潔く、戦場で散らすことを夢見てきた。
己の掲げる「天下布武」がいよいよ手の届くものとなってからは、安土城の天守にて己の統べる国土を見渡しながら高笑いをしつつ身罷りたいと思うてきた。
それが今宵この本能寺にて、あの“禿げ” の手に落ちようとは──
名も無き下賎の手下に討たれるは恥。
せめて最期まで派手に、華々しく、儂の思うがままの死を選びたい。
蘭丸に命じ、寺のあちこちに火をつけさせ、紅蓮の炎に燃え果てる人生を選んだはずであった。
なれど──
柱をなぎ倒す激しい音。
見れば炎の中を鋼の蔵か牛車のごとき
その速さたるや馬をはるかに凌ぎ、その勢いたるや猪数十頭に匹敵するであろう。
その恐ろしき姿に、儂は知らず笑いが漏れた。
冥界より来たりし異形の使者よ。
我が身を桜のごとく散らし主の元へ送りつけるがよい。
途半ばにして連れて行かれし分、そちらで大暴れしてやるわ!!
わーっはっはっはっ……────
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