考察
二人は中沢の車に乗り込んだ。
車はすごすごと高校を出、近くのコンビニに止まった。
中沢はポケットから録音機をだした。
「 竹下さん、どう思いますか?あの人 」
竹下は眉間にしわをよせ
「 今の聞き取りでわかったことなど大してないですねぇ 」
といった。
「 大して、ない? 」
「 どれが事実か、また真実であるか、言葉だけではわからないからです 」
中沢は録音機の再生ボタンを押した。
先ほどの様子が蘇る。
「 あ、そこです。はい。止めてください 」
一つ目の質問の「 誰が出禁命令を出したのか? 」のところだ。
「 ここで校長はすぐに警察側がお願いしてきた、と話していますね 」
「 そうですね。私たちに捜査権がないのだからそういった刑事がいるとなれば問題になります 」
フロントガラスから差す日がほのかに暖かく心地よい。
「 いいえ、馬場さんが来たのは私たちが捜査権停止を言われる前です。
早すぎます。その可能性は捨てましょう 」
「 他に何かありますかね 」
「 もし仮に、馬場さんたちが校長に私たちを入れないように願ったのが事実であるならば、彼らは私たちを逆賊扱いし、手柄を自分のものにしようとした、というのが考えられますね 」
「 あの人たちの性格からして、それはないのではないと思いますが 」
「 私もそう思います。しかし可能性としてはなきにしもあらず。
馬場さんとしては早く出世してしまいたい年頃でしょうし 」
「 そういえば馬場さんって定年もそう遠くはないですしね。
いま、彼60超えていますよね 」
竹下は頷くとちょっと一息、中沢はコーヒーとケーキを買ってきた。
「 ちょっと遅めですが、クリスマスケーキです 」
小さなケーキに小さなイチゴが映える。
竹下は「 では、」というと蓋を開けた。
中沢はチョコケーキだ。
甘い香りがコーヒーとマッチする。
「 この時期、ケーキなどは特に品揃いがよく嬉しいです 」
それは車内で食べるものではない。
家で食べるものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます