昼食

「 総監からお前らに命令だとよ。今すぐ帰れ。ふつー電車でなっ! 」

「 命令命令と多いですね 」

「 はいはい、帰る帰る。大家さんに私が鍵を返しておきますので。はい 」

 竹下と中沢は目を合わせた後、ポケットから鍵を取り出し、差し出した。

 ほかで証拠を探そう、という感じか。


「 では。おつかれさまでした 」

 馬場がバカにしたように敬礼した。


「 中沢くん、引き上げましょう 」

「 仕方ありませんね 」

 二人して馬場に揃って敬礼。

 びしっ!

「 お疲れ様でした 」

 服を踏み分けて外へ出た。


「 竹下さん、車に穴開けて何分稼げると思ったんですか? 」

 手を擦りつつ長沢が聞いた。

「 ………35分 」

 中沢がぼやくとさらに空気の運動量が減ったように感じられた。



 アパートを出て大通りに立ち止まった。

「 中沢くん、例の写真、持ち出せましたか? 」

 中沢は満足そうに懐から写真を出した。

「 ばれずに。やりましたよ 」

 二人して微笑んだ。

 まさに"おぬしも悪よのぉ"という感じがする。


「 ちょっと、ラーメンでも、食べて行きますか 」

 中沢の指差す先には少し水蒸気と香りのたつ店があった。

「 たまにはそういったものもいいかもしれませんね 」


 二人は少し足を早め、店の扉を開けた。

 いらっしゃいませー、と声が飛んだ。

「 おすすめ二つ、お願いします 」

 伝令が飛び、数分もすれば大きな丼が運ばれた。


「 この中で森さんはおそらくこれ。この一つ飛んだ右隣にいるのが井村さんのように見えます 」

 竹下はビニールの袋越しに写真を指差す。

 中沢は頷きながら音を立て麺を啜っている。


「 食べるか見るか、どっちかになりませんかね…… 」

 そのおすすめというのが納豆ラーメンだった。


 竹下は不審がりながらも興味があるようで箸で麺を突っついている。

 中沢はもう必死で口に運んでいる。

「 うまいっ 」

 汁が飛び散るのがまた、絵になる。

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