第4回 interesting_story.nako3

 コンピュータが「面白い」と言う小説を書け。


 そんなお題の小説コンテストが開催された。

 機械が小説を審査する。それは今どき珍しくない。小説コンテストの一次審査の多くが、機械によって行われるようになっていた。機械は物語を作れない。しかし、評価はできるのだ。といって、ふつう最終審査は人間が行う。今回は、最後まで機械が行う点で新しいといえる。

 わたしはこのコンテストを知って、またとないチャンスだと思った。これまで何度も賞を逃してきた。しかし、それは人間の選考による落選ばかりであって、機械の評価に落ちたわけじゃない。

 機械に「面白い」といわせる絶対の自信がある。わたしは作品を書き上げ、満を持して提出した。


 それがこの小説だ。


●(AがBとCを)書くとは

 Bを表示

●(AのBが)開催とは

●(AがBを)審査とは

●(AのBのCがDに)よとは

●(Aに)なとは

●いたとは

●しかしとは

●(Aを)作るとは

●(Aの)だとは

●といとは

●(Aが)行うとは

●(AまでBがCでDと)いえるとは

●(AのBを)知るとは

●(AとBと)思うとは

●(AまでBを)逃すとは

●きたとは

●(AのBにCで)あとは

●(AのBに)落とは

●(BにAとCのDが)あるとは

●(Aを)書き上げとは

●(Aを)持すとは

●提出とは

●(AがBの)小説とは


## アピール文


 私の決めたルールは、作中にも書いたように、梗概を評価して「コンピュータが『面白い』と言う」ことです。

 この梗概は、プログラミング言語「なでしこ3」で書かれています。なでしこ3簡易エディタ (v3.0.48) に梗概をコピペして実行すれば、「面白い」と出力されるはずです。梗概末尾の `●` や `←` はなでしこ3のキーワードで、関数を定義しています。

「面白い」という文字列を出力するプログラムを書くのは、とても簡単です。しかし、ここで書かねばならないのは、コンピュータ・プログラムではなく、日本語によるSFの物語です。それは、当たり前の前提でありながら、非常に厳しい制約でもあります。私が自分に課したルールは、機械がそれを満たしていることを保証してくれます。しかし、この前提部分が成立しているかは、個々の読者の判断に委ねるほかありません。この梗概を日本語で書かれたSFの物語だと感じていただけたなら幸いです。

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