第16話 16

「おまえたちに用はない。お頭の所に案内してもらおうか?」


蛍は野盗、源夜叉のアジトである鎌倉大仏にたどり着いた。


「黙れ! 殺してやる! 一斉にかかれ!」

「おお!」


野盗の手下が集団で蛍に襲い掛かる。


「無限蛍。」


蛍の一振りで無数の蛍が飛び散った。


「ギャアアア!?」


一瞬で野盗の手下の集団を倒した。


「お頭を出してもらおうか?」


蛍は再び歩き始める。


「私がお頭だ。」


その時、自分はお頭だと名乗る聞き覚えのある声を蛍は聞いた。


「か、楓!?」


そこに現れたのは、さらわれたはずの楓だった。


「遅かったな。おまえが来るのが遅いので、この子供の体を借りさせてもらった。」

「な!? おまえ・・・楓じゃないな!? 何者だ!?」


蛍は楓に何か悪い悪霊が憑りついていると悟った。


「知りたいか? 知りたければ私に勝て。そうすれば私の正体を教えてやろう。」

「・・・。」

「無理か? おまえにこの子を傷つけることはできないな。なら・・・死ね!」


何者かに操られている楓が刀で蛍を襲う。


「うわあ!? やめろ!? 楓!?」


蛍は楓の攻撃を交わしていく。


「ほれほれ! どうした? 逃げてばかりだと、この子は助けられないぞ!」


楓は蛍を追い詰めていく。


「クソ!? 卑怯者!?」


蛍は操られている楓を攻撃する訳にはいかなかった。


「どうすればいいんだ!?」

「とどめだ!」

「しまった!?」


楓が刀を振り上げて、蛍目掛けて振り下ろす。


「やめろ! クソガキ!」


ピクッと楓の動きが止まる。


「目を覚ませ! クソガキ! おやつの団子の時間だぞ!」


蛍は畳みかける。


「ほ、ほ、蛍ちゃんの嘘つき! 蛍ちゃんは甲斐性なしの貧乏人だ!」


楓と蛍の強い絆が憑りついている何者かを楓の体から追い出した。


「じゃあ、お団子いらない?」

「食べる。蛍ちゃんの意地悪。」


蛍と楓は飾らずにケンカできる仲の良さ。


「いつもクソガキと呼んでおいて良かった。」

「蛍ちゃん! 頭いい!」

「楓を飼いならしてるからな。」

「ワンワン!」

「わっはっは!」


蛍は楓を救い出し、二人に和やかな雰囲気になる。


「それでは本題に戻ろう。」

「ワン。」

「いつまで犬の真似をしてるの?」

「ニャンもできるよ。」

「そういうことじゃなくて・・・。」


蛍と楓は大の仲良し。


「おまえはいったい何者だ!?」

「ただの通りすがりの者だ。」

「・・・いや、それは俺のセリフだから。」

「すまんすまん。一度、主役のセリフを言ってみたかったんだ。」

「迷惑な!」

「蛍ちゃん! 大人げない!」

「うるさい! クソガキ!」

「はい! クソガキいただきました! わっはっは!」

「まったく、調子狂うな。」


これでも蛍と楓は仲良し。


「私の名前は、平将門だ。」


悪霊の正体は、平家の平将門だった。


つづく。

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