第19話「天孫」
第十九話「天孫」
「せっかちだなぁ、ま、いいか」
そう言いながら無遠慮に、警戒心の欠片も無い状態で俺の元に近づいて来る男。
「僕たち
いつも通り、
ーー特殊な能力?ああ、あれもそうか……
「人と違う能力、神秘的な能力、人では理解できない能力、そういうモノって昔から尊敬と畏怖の対象、つまり信仰になるよね」
「……神には奇跡がつきものってやつか」
「そう、そう、相変わらず
呆れながらも俺はその人を食った情報源に耳を傾ける。
「
「……」
「その奇跡ってやつがね……不味いことに彼女のはわけが違うんだよ……ってか格が違う?」
「格?」
「この地域にはね、
ーー
「それが”てんそん”か?」
「”
半信半疑、しかし俺は話の腰を折らずにそのまま確認する。
「ただね、一年かけてそんな大がかりな儀式を行う必要と、
ーーなるほど、映画やアニメの異能力者と比べれば随分制限がある
「各々の信仰神の祭りで年に一度それを補充するのか」
俺の問いかけに、
「そこまでして、それ位しか出来ないのが現状、それが
言葉は自虐的ともいえるが、
「
「本物があると困るのか?」
俺には理解できない、別に
「困るんだろうねぇ、俺は自分たちのもつ能力が偽物とは思わないけど、より強力な本物の奇跡があれば、それに劣る奇跡は奇跡じゃなくなると考える者達もいるって事だよ」
「……」
俺は黙り込む。
ーーくだらねぇ……
ほんと、くだらねぇ……こんな”
「……
俺が急激に興味を無くしていくのが表情から解ったのか?急遽話題を変えてくる男。
「……」
無論、俺は答えない。
「可愛そうに、十歳程の少女が、ちょっと特殊な能力を授かって生まれたからって、両親に利用され、カルト教団の象徴に……遠い街の出来事だったし、随分と前の事件でもあるから、ほじくり返されさえしなければ、覚えている者は少なかっただろうけど……」
わざとらしく、大げさに、嘆き節の演技で続ける
俺に向けたあからさまなパフォーマンスだが、それでも俺は終始無言を貫いていた。
「当時の関係者とか?」
情に訴えるのが無理だと判断すると、一転、直球ど真ん中を投げてくる
「質問しているのは俺だ」
そして、やはり俺は駆け引きに乗るつもりは無い。
「こっちは情報出してるんだから、そっちも協力してくれると嬉しいんだけど……」
「…………」
俺は、ならいいとばかりに
「きゃっ!イヤ、ゆるして!」
途端に悲鳴をあげる
「ああ、冗談!冗談だよ
「……」
慌てて取り繕うフリをする
「いじめっ子だねぇ、
ーーどっちがだ……
どこか余裕のある男……俺が、
「……
気を取り直して俺は質問を続ける。
「違うよ……前にも言ったでしょ、学生連はそんな
「……お前の言うことは鵜呑みに出来ない」
俺の言葉に、
「じゃあさ、一年前に彼女の見せた奇跡の話って知ってるの?
「…………」
俺は
「知ってるんだ?なかなかどうして、彼女のことに関してはリサーチ力凄いね」
俺がそれを知っているのは、そんなんじゃ無い……
ただこの学校にいると、
俺はそんな言い訳を頭の中に思い浮かべていたが、結局言葉には出さなかった。
この
「…………」
そして俺は、”どうでもいい、先に進めろ!”と目で促していた。
「ふぅ、まあ、あれで学生連に目を付けられたのは確かだけど……」
「
「?」
ーー聞く相手が違う?……知らないじゃ無くて、聞く相手……どういうことだ?
「ともかく……俺は
「……」
少し考え込んでいた俺は、飄々とした
「!……はぁ……」
緊張が緩み、肺の奥から大きく息を吐き出す少女。
その直後、俺は背を向けて、屋上の出入り口に向かった。
ーー
ー
ーおっと……そうだ
そして、二つばかり聞き忘れた事を思い出し、数歩歩いたところで立ち止まって振り返る。
「…………」
「…………」
相変わらず緊張感無く佇む男と軟体動物の様にへたり込んだままの少女。
「……今回の件の首謀者は誰だ?」
「……」
俺と
目が合った
「……学園OBの……
戸惑いがちな少女の言葉を確認した俺は、右手を高く掲げて彼女にそれを示す。
「!わ、私のスマホ?いつの間に!」
「
「…………RN01AM20IA……です」
中々素直な反応を示す、未だコンクリート上で、へたり込んだままの少女。
脅しがかなり効いたみたいで何よりだ。
「借りてくぞ」
俺はそう言い残して、今度こそ
第十九話「天孫」END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます