6『第5相ダイジェスト』
乙「ちょっと気付いたことがあるんですけけど」
甲「なに?」
乙「これって、第8相まで振り返るダイジェストですよね?で、これから始まるのは第5相の解説ですよね」
甲「うん。今回も長い所だからあんまり前口上したくないんだけど」
乙「今日、土曜日ですよね?ゴールデンウイークあと2日しかありませんよね?」
甲「……どこで計算間違えたかなあ」
乙「アホですか」
甲「私のせいじゃない。元々立てた見通しが甘かったんだ……まぁ、続く6,7,8相は内容はともかくかなり短いから、そこを纏めて収めるか」
乙「あとは、通常更新を含む火曜日まで食い込ませるか、ですか。連休中に終わると思っていた各位には大変心苦しいですが……」
甲「だねぇ。まぁとりあえず、今回の解説を始めていこう。書いた人は後で死ぬほど謝るように」
Q1 この相はどんな展開が起こる?
甲「さて気を取り直して……前相のラスト、怒涛の展開によって自分の置かれた状況がある程度クリアになり、同時に新たな行動指針が定まった石井だけど」
乙「その代償というべきか、目の前で凄絶な死を遂げた同僚……にして同じ被験者、鏑木の通夜からこの相は始まります」
甲「真相は伏せられ、事故死として執り行われる彼の葬儀。その中で石井は初めて、彼の婚約者である白石と顔を合わせる事になるんだけど……」
乙「突然最愛の人を奪われた彼女は、鏑木と最後に会っていた石井へ半ば八つ当たりのごとくぶつけ、それが彼を更に疲弊させていきます」
甲「何も知らないが故に容赦がなく、そして何も語れないが故にただ受け止める事しか出来ない両者。誰が報われるでもない責め苦の構図だ。ただ、彼女は悲嘆からの盲目に陥るほど愚かではなかった」
乙「ええ。聡明な彼女は石井の様子から、言外に予期せぬ何かがあった事を悟り掛ける……そんな気付きを塞ぐように現れたのが、やはり三吾美恵でした」
甲「美恵は見事な演技でその場を収め、ふたりを引き剥がすんだけど……それは石井の助け舟でもなんでもなかった」
乙「単に彼女は、石井の身に新たな試練が訪れた事を知らせに来ただけでした。蘇生薬の副作用により人でなくなりかけている者……石井は初めて、自らの意思を保ったままその処理に当たる事となります」
甲「彼のやるべきことはそれだけじゃない。手筈の説明を受け、作戦開始の連絡を待つ間を、今度は自分の記憶探しに費やす事となる」
乙「名前しか記憶にない大学時代の友人、事故を起こした航空会社の上役、そして記憶を失う直前、自分がいた異国の地、ハイチについて……手掛かりを求め八方へと手を伸ばす彼は、その途上にある女性の影を見出します」
甲「当時の自分と共にハイチに赴き、しかし事故を起こした帰りの便には乗っていなかったという女性。過去の交際相手という新たな人物に戸惑いながら、その正体を探ろうとする石井だったが……」
乙「彼女の事に関わらず、全ての詳細にあと一手届かない。うっかり三吾美恵に殺されそうになりながらも懸命に調査を続ける石井でしたが、ついにひとつの刻限を迎えてしまいます」
甲「藤沢芳也より入る、被験者の誘い出しに成功したという連絡。窮地に追い込まれながら、辛くも初の実戦を生き延びた石井だったが、改めて見せつけられる人を殺すという現実、そして殺した人を食べる三吾の姿を前に、彼の胃と心は人の肉を受け入れられなかった」
乙「……かくして初陣はその苦労に見合わず、何の収穫も得られない結果に終わりますが、彼の受難はそれだけでは終わりません」
甲「例によって、一旦間を開けよう。まだまだしんどい展開は続くから、ここらで一息つくといい」
※ ※ ※
甲「さて再開。再び襲いくる空腹に出勤どころではなくなり、家で苦しむ石井に弟の和也より緊急の連絡が入る」
乙「それは急に母親が倒れたという知らせでした。弟をなだめながら病院へ向かい、彼は数年ぶりに望まざる肉親との再会を果たします」
甲「そこでも彼は自分の身に起きている事を見透かされそうになる。母のなせる業なのか、それとも女性は皆そうなのか……」
乙「両方だと思いますけどね。か……白石の言動を見ても、やっぱり女性の勘働きって男には想像できない領域ですよ」
甲「私にゃわからんねえ。両方ともいなくなって久しい」
乙「とにかく空手では帰るまいと、石井は母と弟の両方から件の女性に対する手掛かりを、そしてナースからは藤沢の病院にまつわるある噂を得るのですが……それを精査する時間はありませんでした」
甲「再び人の肉を摂取しなかったことによる禁断症状に苦しみだす石井を、藤沢芳也が病院へと強制的に連れ出す……ここからの彼の言動、ちょっと私でも空恐ろしいね」
乙「というと?」
甲「ここから彼の露じたある手筈で、結局石井は人の肉を摂取することになるんだけど……それが結構えげつない、その上で自分にも石井にも、悪い事をしているという実感を認めさせないんだ。さらに無関係な他人を引き合いに出して仕方ない事だから、合理的だからと納得させる。悪事を悪事と開き直ってやる連中より、よほど何かが欠落していると思わない?」
乙「その手前、勝手に石井を蘇生させたという大悪の自覚があるからこそ、それ以上悪事を重ねる感覚を覚えたくない……というところですかね」
甲「まあ、罪の意識に耐えられなかったからこそ、彼は三吾と袂を分かっているわけだ。大事の前の小事というか……こずるいというか、人間臭いというか」
乙「同じく類稀な才覚を持つ三吾と藤沢ですが、そんな両者の決定的な違いが見えるシーンを最後に、この相は幕を閉じます」
Q2 この相のキーポイントは?
甲「ここはもう、石井の記憶の捜査線上に浮かんだ『ある女性』その正体に限るだろう」
乙「普通に読み進めていけば半ば当然、あるひとりの姿が浮かびますが……それが正しいかどうかは、ぜひ今後の本編を読んでいただければというところですね」
甲「それでは」
乙「また次回」
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