おいしい失恋の淹れ方~ここは恋し浜珈琲店~
白野よつは
■プロローグ
どこにでもありそうな海沿いの小さな町。海を間近で臨めるその場所に、まるで絵本の中から抜け出てきたような可愛らしいログハウス風の店がある。
店の名前は【
地名にどんな商売をしているのかをくっつけただけの、なんの捻りもない店の名前だけれど、そこからはいつもコーヒーのいい香りが潮風に乗って漂う。
店員はひとり。二十代後半の、黒髪で痩身で眼鏡がよく似合う男性だ。
リンリン、と来客を知らせるベルが鳴れば、彼は眼鏡の奥の柔和な瞳をふっと細めて、
「いらっしゃいませ、ここは恋し浜珈琲店です。お好きな席へどうぞ」
カウンターの奥からにっこりと笑いかける。
今日もまた、コーヒーを飲みに来た客が、ひとり。
「――あの、失恋を美味しく淹れてくれるって聞いてきたんですけど」
「はい。ここは恋し浜珈琲店ですから。美味しく失恋を淹れて差し上げます」
そう尋ねたその人に、彼はまた、ふっと笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます