主に猫で綴る世界の昔ばなし

今村広樹

チベットの昔ばなし『転がるツァンバ』

 昔、金持ちで太っちょの兄と、貧乏でやせていた弟がいた。ある日、弟はツァンパという粉で作った団子を落としてしまった。

「待ってにゃ~」

 転がるツァンパ団子を追いかけると、ある洞窟に転がっていったので、弟も入っていった。

 そこには、虎がいて

「ツァンパ団子をありがとうニャ。お礼に色々な幸運が舞い込む宝物をあげるニャ」

と、言った。

「ありがとうにゃ」

「今日は、ここに泊まっていけニャ」

 という訳で、虎は1日もてなしてくれた。

 弟は、宝物を持ち帰り、しばらくすると豊かに暮らすようになった。

 弟が金持ちになったのを知った兄は

「なんで、急にそんなんなったにゃ?」

「実は……」

「なるほどにゃ」

と、事情を聞き、自分もツァンパ団子を無理に転がして洞窟に行った。

 すると、虎は

「うむ、モフモフしてて、うまそうな猫ニャ」

と、兄を食べてしまった。

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