出航
「んー…………むにゃ、寝てた?」
木彫りの小舟の上、ゾン子ががばりと身体を起こした。舟の上で船を漕いでいたレグパがかくんと首を落とした。
「んにゃーなんかすげー夢見てた気がする」
「起きたか。起きたなら操縦変わってくれ」
大きな木の板を海中から引き抜く。オールのつもりだったらしい。ゾン子の水のタリスマンの力であれば、航行は造作ない。
「あいよ。レグ兄は?」
「寝る」
「えー遊んでよー」
「死ぬほど、疲れている。頼む」
言い終えると大男は横になった。体力無尽蔵のレグパが疲労なんかに負けるはずがない。だからこれはサボるための言い訳だ、とゾン子は当たりをつけていた。彼女は兄貴分がどんな苦境を泳ぎ越えてきたのか知らない。
(カンパニー、本筋から外れる流れ……)
あまり、関わるべきではないだろう。微睡みの中、レグパは密かに決意を固めていた。妹分共々、あの冒涜的組織とは決別すべきだ、と。もしかしたら本筋の中で敵対することもあるかもしれないが、それはそれだ。
大海原は快晴の船旅。長くても一週間もすれば故郷に辿り着いているだろう。そんな束の間のバケーション。
――後日、カンパニーの次期社長決定戦の代理として猛威を奮うことになるとは知らずに。
了。
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