おじさんとパフィンちゃん〜トキノコリスペクト編〜
「映画館……パフィンちゃんたのしみでーす!」
「とか言っちゃって、実はポップコーンとかが目当てなんじゃないですか?」
「そ、そんなことありませーん!」
男とアカリに挟まれて二人と手を繋ぐパフィンは、映画館の前でアカリに茶化されながら無邪気にはしゃぐ。
少し前に映画鑑賞のチケット三人分を手に入れたパフィンが、二人を誘ったのだ。
「今回も付き合ってもらっちゃって、本当にすいません……」
「いやいや、大丈夫ですよ。パフィンちゃんやアカリさんからのお誘いなら、断る訳にもいきませんからね」
「そ、そんな……あ、順番回ってきましたよ!」
何ともないと返す男の笑みにほんの少しばかりの胸の高鳴りを覚えつつも、アカリはそそくさと受付へと二人を連れて向かう。
チケットを渡し、指定された館内のホールへと向かう三人。
これから三人が観るのは日常系ドラマ『トキとツチノコの初めて』というもの。
「どんな映画なんですかね?」
「パークの中でも人が近寄らない場所にある洞窟に住んでいる野良フレンズのツチノコさんが、トキのフレンズさんと出会って地上の生活に溶け込んでいく……って話ですね」
「まだかなーまだかなー…………あ、始まるみたいでーす!」
しばらくして館内が暗くなっていき、宣伝や館内マナーに関する映像が流れた後、映画のタイトルがスクリーンに浮かび上がる。
そして____
『トキ……』
『ツ、ツチノコ……ここじゃだめ……んっ……』
『誘ったのはお前だろ?』
『ほ、ほんとにダメ!人がきちゃ……んあっ……!』
「ア、アカリさん……これは……!?」
「えええええちょちょまま、ま、なななんなん」
日常系ドラマかと高を括って鑑賞していた三人。
しかし、話が後半になるにつれて何やら妖しい雰囲気が少しずつ漂い始め……
『んっ……はぁ……ツチノコぉ……』
『トキ……いい匂い……んむっ……』
ついに濡れ場、しかも女性同士のソレに今まさに突入しようとしているのだ。
「あれなにしてるんですか?服脱いでチューしてむぐっ」
「アカリさん出ましょう今すぐ出ましょうすぐに出ましょう」
「は、はははははいぃ!!」
スクリーン越しの二人が何をしているのか全く理解できていないパフィンを抱えた男が脱兎のごとく館内を後にし、それを慌ててアカリも追いかける。
〜〜〜〜〜〜
時を同じくして、三人の後に続くように映画館を飛び出す影があった。
(んもぉ〜こんなの聞いてないぞぉ!何が日常系ドラマだよメチャクチャスケベな映画じゃないかタイトル詐欺もいい所だよバカヤローコノヤロー!!)
顔を真っ赤にしてズンズンと街中を歩くのは、全体的に迷彩模様がありフードから赤く光る大きな目のデザインが覗くパーカーが特徴のヘビのフレンズ、ハブだった。
ドンッ
「わっ!?」
「あら……」
そんな彼女はうつむきながら曲がり角に入った所、誰かに勢いよくぶつかり尻餅をつく。
「あだだだ……」
「大丈夫ですかぁ?……あら、ハブさんじゃないですか」
間延びした声と共にハブに手を差し伸べる影。それはハイビスカスの髪飾りが特徴の鳥のフレンズ、ヤンバルクイナだった。
「な、なんだ、ヤンバルクイナか……」
「どうしたんですか?そんなに急いじゃって」
「い、いや、ちょっと映画館に行ってだな、映画を見てたんだけど……」
「…………何を見たんでしょうか?」
「……ヤンバルクイナ?」
ふと、ヤンバルクイナがハブに視線を合わせるようにしゃがみこむ。
そして一気に顔を近付けてにっこりと微笑む。
「どんなロマンチックな映画を見たんでしょうねぇ?」
「……お、お前まさか……」
「ふふふ……」
「見た……のか……?」
こくりと無言で微笑みながら頷くヤンバルクイナ。その笑みに底知れぬ何かを感じたハブは床に座り込んだまま猛スピードで後ずさりする。
「ハハハハブはノンケだゾォ!そりゃ確かにフレンズ達の尻尾をハムハムするけどそういうやらしい意味じゃないゾォ!!」
「うふふふ、冗談ですよぉ。いやですねぇ、本気にしちゃって」
そう言ったヤンバルクイナは、ハブを手早く立ち上がらせるとどこか機嫌が良さげにステップを踏みながら立ち去っていった。
ぽつりと取り残されたハブは激しく動いたからか、胸の鼓動がやたらうるさく鳴り響いて顔の赤みもしばらく抜け落ちなかった。
〜〜〜〜
栗饅頭さんの作品『トキノココンビ』シリーズのリスペクトネタでした。
雑内容、お許しください!
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