第14話「一難去ってまた一難」

「誰?」


「ほっほっほ。こりゃすまなんだ。儂ゃこの世界の創造神の重蔵じゃ。そんでもって儂の隣にいるのが芸術神のラルフじゃ。」


そう言って紹介してくれたのは白い髭を長く伸ばし木刀を携える老人だ。


特徴的なのは後頭部がやたらと長くて身長が150ちょいぐらいで小さい。


イメージで言えば、日本の妖怪の【ぬらりひょん】みたいな奴だ。


そして隣にいる老人は全身茶色の毛で覆われていて、これまた小さい。


だが身体つきはガッシリとしていてズングリとしている。手には自分と変わらないぐらいの大きなハンマーを持っていた。


見た目のイメージでいえばファンタジーの映画などに出てくるドワーフだ。


「ってか神がなんで?って俺また死んだんじゃねぇよな!?」


「ほっほっ。そう慌てるでない。今回はお主と会う為のものじゃ。まだ死んではおらん。それに源ちゃんにお前を鍛えてやってくれと頼まれておるでな。」


「源ちゃん?」


「そう源ちゃんじゃ。お主のいた世界の創造神とは幼馴染でのぉ。」


神の幼馴染!?どういう経緯でそんな風に?神で幼馴染とか神の世界は別であるのか?


考えたら長くなりそうなので俺は考えを打ち切ると、ドワーフの方のラルフが話だす。


「それにしても神よ。これは困ったぞ。此奴は鍛えようにも魔力がてんで無いじゃねぇか。」


「ふむ。もともと源ちゃんの世界には魔力は存在せんかったからのぉ。無いのも無理ないわい。」


「じゃぁ教えようがねぇじゃねぇですか。」


俺は頭の整理が追いつかず突っ立っていいる間にドンドン話は進んでいく。


「無いなら作るまでじゃ。」


重蔵はニタリと不敵な笑みを浮かべた。



〇〇〇〇




俺は今どんな顔をしている?


きっと凄い虚像を浮かべているだろう。


何故なら一本道の洞窟の中を全速力で走っているからだ。


「うおぉぉぉ!!!なんなんだあの玉はぁ!!」



時は少し遡る。


「お主にはこれから試練を受けてもらう。」


「試練?なんのだよ。」


俺が怪訝な表情で質問し返すと、重蔵は話を続ける。


「多世界から来た者が魔力を得る為の試練じゃよ。しかしコレをクリアした者は今まで1人もおらんのじゃ。失敗すれば死じゃな。」


「無理。」と即答で答えた俺だが、ラルフはニタリと笑い俺を担いだ。


「お、おい!!何すんだよ!俺は行かんからな!絶対!絶対にだ!!」


何て力だビクともせん!!


「はっはっ。生きがいいじゃねぇか。鍛え甲斐があるぜぇ。期待はしとらんが此れをせん事には話が進まんでな。行ってこい。」


「ちょっ!馬鹿野郎!」


ヒョイ、っとラルフは俺を軽々と投げ飛ばすと、その先に空間の亀裂が現れ、俺はその中に吸い込まれる様に入った。


ドテン!とまた地に落ちて辺りを見渡すと其処は何もない洞窟の中だった。


何故分かったかというと、辺りの壁に苔の様な物が生えていて、それがほんのりと明かりを灯していたからだ。


だがその明かりも本当に僅かな物で、見晴らしが良いとはとても言い難い。寧ろ明かりがあるのは足元だけだ。


「おいおい。何処なんだよココは?神ってのは勝手な奴等ばっかじゃねぇかよ!」


怒り現わに地面を蹴りつけると、苔に滑って転んでしまう。


ズテン!!ポチッ。


転けた衝撃音と共に嫌な音が鳴り響く。


そう、まるで何かのスイッチを押したかの様な音だ。


ゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!


奥から音が鳴り響く。


これは多分。いや、恐らくトラップの定番の奴だ。


「に、‥逃げろぉ!!!」


俺は直ぐに起き上がり走りだした。


何処に走る?そんなの関係無い!ただ走って逃げるんだ。


やがて追いかけてくる物の姿が真後ろに現れだす。


それはやはり大きな岩の玉だった。


死ぬ!マジ死ぬ!!岩玉の方が速度早いし!助けてくれぇ!!!当るぅ~!潰されるぅ~!!


そんな時、救いを差し伸べるかの様に横穴を見つけだし飛び込むと、真横を岩が通過し難を逃れた。


「危ねぇ。あとちょっとで死ぬ所だ。」と胸を撫で下ろした瞬間、今度はその横穴がトラップになっていて、底が抜け滑り落ちる。


「ぬぅぉぉぉ!!!」


しかも軽くじゃなくて、ズザザザザザと最早三分程は滑り落ちている。


始めは焦りと恐怖で喚きに喚きまくったが、俺の神経は思ったより丈夫みたいで、2分もたたないうちに喚く事と足掻く事を諦め悟りを開き始め、次に何が起こっても大丈夫の様に心の準備をし始めた。


さて、もう何が起きても大丈夫だぞ。


そんな事を考えながら落ちていくと、とうとう先が見えた。


見えた先は先程いた場所より明るく照らされている場所の様だ。


バシャーン!!!


水!!!?冷てぇ!!


今度は水か、どんなけ嫌がらせしたいんだ?と思ったが、痛いのを想像していた俺はまだ幾分か安心していた。


良かった。まだ生きてる。


冷静になり辺りを見渡すと、其処彼処に青白く光るキノコが生えている。


どうやら明かりの正体はこのキノコらしい。


え!!?


不意に足元に何かに触れた気配がした。


慌てて俺は水に顔をつけ、水中を見渡すと、少し離れた場所に魚影が見えた。


デカイ。


いやデカイってもんじゃない。


体調3メートルはあるんじゃないか?


徐々にその魚影は此方に迫り、丁度真下10メートルほどの所で動きを止める。


その形は鮫に似ている。


ん?


見ているとその鮫の口が真上の俺に向けられる。


何かヤバイ気配がビンビンする。と思った瞬間。


鮫は大きな口を開き鋭い牙を光らせると俺目掛けて突っ込んできた。


恐怖!!まさに恐怖だ!!食われる!!凄い速さだ!ダメか?いや、食われてたまるかよ!!


咄嗟に#無限収納__インベントリ__#から槍を取りだし、鮫の口に槍を立てにつっこみ噛まれるのを回避したがバシャーン!!!と水面に押し上げられた。


「うぉぉあぁ!!っの野郎!!」


そのまま槍を手放し逃げても良かったが、恐らく逃げれる様な相手じゃない。


上陸できる場所が近くにあるなら話は別だが、 周りもしっかりと見渡せてない今は探す所から始めなければならない。


それに近くにあったとしても助かる可能性が少し上がる位で、水中では鮫の方が断然早い。


岸に辿り着けるかも微妙な話だ。


ならどうするか?


ここで#殺__や__#るっきゃねぇ!!


#無限収納__インベントリ__#からもう一つの槍を取りだし鮫に突き刺した。


ザン!!!!


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