第7話「いけすかねぇ奴」
な!?喋れたのか!?
それに話が違うとはどういう事だ?
崩れ落ちた親玉中年親父に突き刺さる槍を抜き取り、手から離れた小綺麗な剣を回収し、刃先を中年親父に向ける。
「ハァ、ハァ。」と今にも親玉中年親父は死に絶えそうだが、気になった事は聞かないと気が済まない性分だ。
「おい。今のはどういう意味だ?」
「我ラハ、‥古クカラ此ノ【クジャ族】ト争ッテキタ。‥ダガ、【クジャ族】ノ産ミ出ダシタ呪術二ヨッテ、結界ガ張ラレ、攻メレナカッタ。」
「そんな昔話を聞きたい訳じゃないんだがな。」
親玉中年親父は俺の言葉を無視し続ける。
「ソンナ時。‥【クジャ族】ノ男ガ我ノ前ニ現レ、取引ヲ‥持チカケタ。」
「なんですって!?」
反応したのは先程裸で連れてこられていた少女だった。
俺の視線は自然と少女に向けられ、見るなり俺の全神経が硬直する。
褐色肌で紫色の髪を腰まで伸ばし、鍛えられているのかスタイルは引き締まる場所は締められ、出る所は立派で豊満な双丘を持つ超絶美少女だった。
俺だって純粋な人間の男だ。それに5日間の孤独もあった所為か俺の息子が反応しない訳がない。
だが今は抑えろ俺!耐えるんだ!!
忍!忍!と自分を戒め、顔を左右に振るい、再び親玉中年親父に視線を戻した。
見てはならん!自我を失いかねん。
それにしても、今こんな事を思うのは不謹慎かも知れないが、死ぬ前に良く喋る奴だなと俺は思った。
だが蔑ろにするのも悪いし、その先が気にならなくもない。
俺は「その取引とは?」と話を続けさせた。
「他ノ村人ノ命ヲ差シ出ス代ワリニ其処の族長ノ娘を拐エト言ウ物ダッタ。」
「私を?それじゃ、…これは一族内の裏切り。そんなの嘘よ!」
信じられないといった表情を浮かべ声を荒げた。だが、親玉中年親父は首を横に振る。
「残念ダガ、‥コレハ全テ事実ダ。」
「それは分かった。だがお前達にとってのメリットが余り感じられないのだが。」
「メリットナラ有ル。我ガ一族ハ、人間ノ女ヲ媒体二増エル。寿命ハ長クトモ我ガ一族ダケデハ繁殖デキヌノダ。」
そう言う事か。会話が出来るなら分かり会えるかとも思ったが肝心な場所が相入れ会えず対立していたのか。
息を切らしながら親玉は更に話を続けた。
「ダガ、ソレデモ人間ニワ強イ者モイル。決断ヲ下スノヲ戸惑ウト、男ハコウ話ヲ継ギ足シタノダ。「俺ガ一族ノ守リ人ヲ一人残ラズ殺ス。ソノ隙二族長ノ娘ヲ拐エロ」ト。ダカラ我ラワ誓イノ刻印ヲ交シタ。ソノ男ノ腕二、コノ紋章ト同ジ物ガツイテイルダロウ。」
親玉中年親父は腕に浮かび上がる独特の文様を見せた。
「そんな‥それは召喚の紋。だから私達の結界をくぐれたのね。守り人を全てを殺したのはゴブリンじゃなかったなんて。」
少女は口を手で覆い隠し、今にも泣きそうだ。
召喚?おいおい。そんなもんまであるのこの世界は。
まぁこんな生き物がいる時点でもう驚きはしないが‥。
だがその紋章が犯人探しの証拠になりそうだが気になる事が一つある。
「その紋章はお前が死ねば消えるのか?」
「消エヌ。コレハ、我ガ一族トノ契約ノモンダ。我ガ死ンダトテソノ契約ハ消エズ、我ガ配下ガソレヲ受ケ注グ。」
「ならいい。ここまできたら其奴の名ぐらいは聞いておきたいな。其奴の名は?」
「ソノ男ノ名ハ、‥」ズシャァ!!!!
親玉中年親父が名を告げようとする瞬間、後方から槍が飛んできて親玉中年親父の顔面を射抜いた。
「ルナ様!ご無事ですか!?」
飛んできた方へ振り返ると、先程ミド僧を蹴散らしていた美男子が立っていた。
それに吊られる様に村人らしき人もゾロゾロと3~4人入って来た。
「カリュ!帰って来てくれたのね!それに皆んなも無事だったのね!」
「カリュのお陰で何とか助かったよ。」
「ルナ様こそ良くぞご無事で。」
正に村の救世主って訳か。
だが、俺は小さく舌打ちする。
あとちょっとで犯人が分かるって時に余計な事を。
ん?
待てよ。
守り人って事は一族の用心棒的な存在なんじゃないのか?
って事はある程度、腕に覚えが会ってミド僧と戦っていても良いんじゃないか?
ミド僧との戦闘経験で、戦い方さえ掴めばそんな大した敵では無い事は身を以て承知済みだ。
傷は追っていたとしても1人2人ぐらいは戦っていても変な話じゃない。
逃げ惑っている人ばかりと言うのは変じゃないか?
「おい。ルナとか言ったか?戦えるのは守り人だけなのか?」
俺の不意の質問にルナは表情を止める。
「え、‥ええ。」
そー言う事ね。
俺は不敵な笑みを浮かべる。
カリュは急ぎ足でルナに近づこうとするが、俺は槍でその行くてを拒んだ。
「な!!?」と村人達は慌てだすと、カリュはそれを「大丈夫だ。」と抑える様指示する。
カリュは眉一つ動かさず、むしろ平然と話かけてきた。
「済まない。先に礼を言わなければ行けなかったね。状況からして君が先にある程度片付けてくれていた様だ。感謝する。俺はこの集落の守り人のカリュだ。君はその外見からして旅人か?」
カリュは爽やかに笑うと、色黒の肌から白い歯が輝きを見せた。
男前だからか?いや、無きにしも非ずだが根本的に嫌いな奴だ。
かなりいけ好かねぇ。
「まぁ‥そんな所だ。」
太々しく俺は応えると、またカリュは爽やかに笑う。
「そうか。なら見た所腹も好かせているだろう?助けてくれた礼は村総出でしたいと思う。どうだ?」
「そら‥楽しみだ。」
俺の答えにカリュはフゥ、胸を撫で下ろす様な素振りを見せた。
「そうか。ならこの槍を下ろしてはくれまいか?」
俺は頬を人差し指で掻き、カリュの腕をチラ見したが布が巻かれていて見えない。
しかたない。
「すまねぇけど、腕の布取って見せてくれねぇか?」
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