11月07日 それはまるで、夕焼けのように

 ゆっくりと視線を、体ごと反時計回りに回転させる。

 背の低い樹木が波打ち、順番に背丈を伸ばしていく。

 青々とした緑から黄色へ。徐々に色づいて、やがて真っ赤な大木へと視線は辿り着く。

 見上げた場所にあるのは、モミジバフウだ。

 手のひらのような葉っぱが、夕焼けのように赤く燃えている。

 樹上部だけ、鈴なりになった実が風に吹かれて揺れていた。

 ああ、クリスマスリーフの材料になったっけと、ゆっくりと回想する──


 雪車町地蔵だ。

 読者諸氏はいかがお過ごしだろう。

 私は紅葉にうつつを抜かし、なかなか戻ってこないとお説教を食らったばかりだ。

 いやはや、木々の美しさが悪いと思うんだよね、うん。


 この季節になると、いよいよ紅葉も見ごろで、緑と黄色、茜色のコントラストが見事に調和している。

 実をつける樹木もあり、それを探すのもまた楽しい。


 お酒でも持って行って──とは思わないでもないが、自然というのは気を抜くと足元をすくわれる。しらふで楽しむのが一番だろう。なに、十分陶然とした気分は味わうことができる。


 忙しくなる時期でもあるから、ハイキングなんてのは難しいかもしれない。

 それでもふとしたとき、街路樹や遠くの山々の色付きを眺めて、ほっと一息をついてほしい。

 そう思う雪車町であった。

 以上!



(モミジバフウというと、戦前に持ち込まれたやつか)

(それにかぎりはしないでしょうよ、土地柄的にも)

(なるほどなー)

(それでは、アデュー!)

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