第13話 ネコ魔王とイヌの井戸端会議
ニャー様の居城がある村、既に村というより街規模になりつつある、この場所はネコにとって楽園と言って過言ではない。
しかし、だからと言ってネコしかいないかといえばそうでもなくイヌもネコ程ではないが生息はしていた。
住人もネコに愛らしさを感じているがイヌに感じなくなっている訳ではなく、単純にネコの方が好きだという住人が多数いるというだけである。
一応の棲み分けがなされ、特に大きな問題も起きずに日々を過ごしてきたがここにきて暗雲が漂い始めた。
指導者というべき謎の少女が現れ、時は大きく流れ始める。
打倒、魔王を胸に抱く謎の少女。
棲み分けされる壁をどうにかしたいイヌ達の両者の思いが重なる。
「さあ、今日こそ革命の時よ!」
ワンピースを翻す、金髪のショートヘアの謎の少女は腰に手を当てて胸を張りながら楽しそうに高笑いをした。
革命と聞いた瞬間、謎の少女の周りに集まっていたイヌ達が尻尾を股の間に隠すようにして耳を垂らす。
情けないクゥ~ンという鳴き声を聞き付けた謎の少女は手を横に力強く振る。
「情けない、情けない! イヌがそんな事でどうしますか! そんな方法で魔王からお姉ちゃんを取り戻せない!」
謎の少女に一喝されて更に情けない鳴き声と共に伏せをするイヌ達。
基本的に気の良いイヌ達だから棲み分けが出来ていただけあって、攻めの姿勢が強い謎の少女にイマイチ同調出来ていなかった。
仕方がないとばかりにウンウンと頷く謎の少女がイヌ達を睥睨するようにして言う。
「押して嫌われたら嫌だな~と腰が引ける気持ちは分かる! でも、そこに愛があるなら……」
ぐぐぐっ、と拳を握る謎の少女に注目するイヌ達。
「押して駄目なら押し倒せ! 私はこれでお姉ちゃんに愛が届いたと信じてるぅ!」
本当!? と言いたげに耳をピンと跳ねて興奮の為に舌を出すイヌ達に力強く頷く謎の少女だが、謎の少女の姉が今のセリフを聞いていたら「まったく届いてない」と言っただろうが聞かれなかった謎の少女の誤解はこれからも続く。
「さあ、私と一緒に頑張ろう!」
そういう謎の少女にイヌ達は突撃するようにぶつかり、顔をペロペロと舐めて友情を確認し合った。
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「あれ? 公園でイヌ達と戯れてるのはターニャ様じゃないですか?」
「ん? そうだな、あんなところで何をしてるやら」
串焼きを片手に食べながら歩く私が両手一杯に荷物を持たされるペーターと一緒に公園の横を通りかけるとターニャがイヌ達に舐め倒される所に遭遇した。
むむむ、顔中ベトベトにされているのに嬉しそうなターニャは変態なのだろうか?
私なら飛んで逃げてシャワーに突撃するがな……
「まったく見苦しい姿だな」
「そうですか? まだアレは微笑ましいレベルだと思いますけど? もっと性質が悪いのは……」
横目でジッと見つめてくるペーターに「何だ?」と問うと「ナンデモアリマセン」と棒読みで答えられ首を傾げる。
なるほど! ペーターが言いたい意味が分かったぞ!
「私は舐められたいんじゃない。私はニャー様を舐めたいんだ!」
「……レティス様、手遅れかもしれませんが病院行きましょ?」
し、失礼な事を言う!
そう思ってペーターを睨みつけようとしたが全てを許そうと考えているような労わりを感じさせる笑みを向けていて私は戸惑う。
後ずさるようにする私。
「どうしてそんな目で見る!」
「大丈夫です、レティス様が悪い訳じゃありません。レティス様で治るようでしたらターニャ様も治療が間に合いますね?」
優しさ100%の視線で見つめられる事に耐えられなくなった私は脱兎の如く、ペーターを置いて魔王城へと疾走した。
走り去った私だが、正直、追いかけて来て欲しい女心というやつであったが追いかけてやってきたのは白いモコモコのイヌ、ポチだけが私を追いかけてきた。
はっはは、と息を荒らげて私を見上げるポチにしゃがみ込み口をへの字にし、何かに耐えるようにして頭を撫でてやる。
「いつも邪険にしてごめんな? これから少しは優しくなるように気を付ける」
ワンと吠えるポチに友情の証に串焼きの肉一切れを投げて落とす隣に一滴の水が私の頬から落ちた。
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