ある夏の日のコンビニエンスストア

黄金ばっど

第1話 コンビニエンスストア 前編

 この話しは今から10年ぐらい前の話で、実際にあった事なんだ。

 何故この話を唐突にしたくなったかって言うと特に意味は無いんだけど、言うなれば僕の気晴らしみたいなもんなんだ。

 だから気軽に読んでくれたら幸いかな。


 あの日は、むわっとしたような蒸し暑い夜だったのを今でも覚えている。

 あの頃ちょうど前の型のワゴンRが新車で出た頃で、僕はそれを新車で購入したんだ。

 初めて新車で購入したって事でちょっとテンション上がってたんだろうね。

 納車して一月ぐらい経った頃かな、話しの種にちょっと新型ワゴンRのってみたいなんて友達が言ってきたもんで、夕食後に友達二人と僕の3人でドライブに行こうって話しになったんだ。

 

 友達の一人はひろし(仮名)って言って何でも思ったことを正直に話してしまう城田優似の黙っていればそこそこイケメンという毒舌キャラ。

 もう一人は長ピー(仮名)っていう、口を開けば親父ギャグ、ダジャレ、下ネタしか話さない一流企業に勤める僕とひろし二人より二つ年上の変態サラリーマンだ。


 ひろしの職歴はなかなかすさまじい物があり、順番はよく分からないが、確かパチプロ、トレーダー、俳優、お笑い芸人、工場勤務、軍手の営業って言う恐らくこの日本でもなかなか居ない珍しい職歴を持つ青年だ。

 この頃は、記憶が正しければFXを研究しているフリーターだったはず。


 ちなみに僕は高校進学時期に親父の「もうすぐしたらわしは独立して会社を建てる。そうなればお前は2代目になる。だから高校も工業高校に入り土木の勉強をしてこい」と言う甘い言葉にだまされ、密かに初恋の女の子と同じ高校に進路を設定していたのを諦め、将来社長という甘い誘惑に乗っかって土木の道に入った。

 結局親父は結局独立せず、リーマンショックの煽りで親父が勤めていた会社も倒産。

 2代目社長の甘い夢も水泡と化し今はしがない現場監督をやっています。

 ちなみに成人式の時に初恋の女の子に出会った時、同じ高校に行かなかったことを後悔したよ。


 特段、別にお酒を呑んだ訳でも無いのに、僕ら三人はとりとめの無い話しで盛り上がっていた。

 この頃しょっちゅう―――では無いけど僕達はこうして夜な夜な俳諧しては男三人車の中でコーヒー飲んで良く食っちゃべっていた。

 今になって思うと何をそんなに話すことが有ったんだろうか不思議に思う。

 ああ、そうだ、思い出した。

 この日はワゴンRの乗り心地が結構いいでしょって話ししながら、当時僕とひろしがハマっていたMMOに長ピーを誘い込もうとしてたんだった。


 夜の地元を2時間程ドライブして、MMOの話しや、車の話をし、定番の彼女欲しいなって話になり、こないだ出会い系で遭った女とその日に8発やったって話しや、ひろしの友達の先輩が風俗を極めすぎて普通じゃ飽き足らず、出会い系で男と遭ってガチムチのガテン系のお兄さんにホテル直行で半レイプされたって話しで盛り上がったのを何となく覚えてる。


 え?

 ひろしの友達の先輩?

 ゴリラーマンの実写版みたいな人らしいよ。

 詳しくは知らないけど、後日そのゴリラーマン、またそのガチムチのガテン系お兄さんと会ったらしい。

 世の中不思議だね。


 とりとめの無い話しをひとしきりした頃、そろそろ帰ろうかって話しになったんだ。

 一応長ピーは一流企業のサラリーマン。

 僕も朝は結構早いほうだったんで、その時はそうだねって話しでまとまったんだ。

 ひろしは結構空気読むんでこういう時は周りの都合を優先してくれる。


「あ、ちょっとばっどさん(僕、勿論仮名)トイレ行きたいからコンビニ寄ってくんない?」


 長ピーがそう言ってきたので運転手の僕はワゴンRを走らせコンビニをさがしてたんだ。

 5分ほど運転した頃だっただろうか、真新しいローソンを発見した僕は此処に行こうって言って愛車のワゴンRをローソンの真ん前の駐車場に止めたんだ。

 僕の住んでる街は田舎過ぎず都会過ぎずって感じの街だったので、コンビニの駐車場もそこそこの広さが合ったんだ。

 きっと大型の車も止めれるように配慮されてたんだろう。


「じゃ、ちょっと言ってくるよ」


 そう言うと、長ピーがトイレに一直線に向かって行った。

 僕らは手持ちぶさただし、この頃まだ喫煙してた僕は、新車の車内では煙草を吸うのは控えていたので、ローソンの入口付近に設置されていた灰皿の周りで煙草吸っていた。

 コンビニって前面が全て硝子張りになっているから内部の光が漏れて外でも結構明るいのよね。

 長ピーがトイレ行ってるとは言え、店の中にも入らず外で煙草だけ吸う。

 そういうのが実は僕ちょっと苦手で、コンビニでトイレ借りるとほぼ必ずコーヒーか何かは購入する癖みたいな物があった。

 そんな訳で、長ピーがなかなかトイレから出てこないし新しいローソンの店内にも興味はあったしちょっとひろしを誘ってローソンの店内に入ったんだ。


「取敢えず煙草買っとくわ」


 店内に入ってそうそう、ひろしに告げると、僕はレジにそのまま向かい店員さんに自分の煙草の銘柄を告げた。


「マルボロのメンソールライト下さい」

「え、あ~っと・・・はい」


 店員さんはまだ慣れてないのか、僕の指定した煙草を探していた。

 いやあなたの左上に有るんだけどね。

 僕は見かねて煙草の下にある番号を告げる。


「28番ね」

「あ、はい、こちらでよろしかったでしょうか?」


 そりゃ合ってるよ。

 僕が番号指定したんだし。


「280円になります」


 用意してた500円硬貨を無言で渡し、おつりの220円を受け取る。


「有り難うございました」


 僕は煙草を受け取ると、店員さんのお決まりの文句を聞きながら真新しい店内を散策する。

 まぁ散策するって言ってもローソンなんで店内をぐるりと周れば終了なんだけど。

 そんな中、奥の飲み物コーナーを軽く見ていると真っ白なTシャツにライトグレーのスエットを履いた細い眼鏡を掛けた眉の無い細身の兄ちゃんに遭遇する。

 一見して強面というか何というか。

 決して友達には成りたくない系の人種だなと思い、僕はなるべく眼が合わないようにする。

 カフェオレ買おうかなと思ってたんだが、丁度その強面の兄ちゃんがカフェオレの売っている棚の前に立っている。

 取敢えず僕はそこを通り過ぎて先へと行く事にした。

 触らぬ神に祟りなしと言うじゃ無いか。

 だけどちょっと気になってチラ見した時に、その強面の兄ちゃんと眼が合ってしまったんだ。

 この時何となく嫌な予感がしたんだ。

 こう言う予感は僕結構当るんだ。

 

 飲み物コーナーを過ぎると様々な雑誌が並べられている。

 所謂ブックコーナーだ。

 無数のさまざまなジャンルの本が並べられているその向こうにはパールホワイトの我が愛車、ワゴンRFXリミテッドが停車している。

 自分の左側を見ると細い通路が有り奥には手洗いが有りその手前にはトイレへと入る横引きの扉が有る。

 トイレの表示錠は赤いままだ。

 未だトイレから長ピーは出てこない。

 それにしても長い排便行為だな。

 きっとトグロ兄弟がコンニチワしてる最中なんだろう。

 兄は小柄でサクッと出てくるけど、中々弟が出てこないんだろうな。

 たぶん120%だぁ~!!とか言ってるんだぜ。

 まぁいいや。

 ほんとどうでも。


 僕の立つ右側にはひろしがなにやら雑誌を読んでいる。

 この頃はまだ雑誌等に封が為れていなかったので気軽に立ち読みできた。

 僕は漫画が好きなので、長ピーがトグロ弟と対面する迄の間少年誌を立ち読みさせて貰うことにした。


 しかし何時も思うんだけど何故少年誌の隣は直ぐにエロ本コーナーなんだろうか?

 一時のスロットブームでわずかだが少年誌とエロ本の間にパチンコ系雑誌で距離が出来たとは言え50センチにも満たない僅かな距離だ。

 一時期、東京都が青年コミックを販売廃止にするとかどうとか言ってたけど、まずエロ本隠す所から始めようよと僕は思う。

 この日本には至る所にコンビニがあってそのコンビニはどれもほぼ似通った作りになっていて、商品のラインナップもほぼ同じだ。

 勿論パスタはどこがおいしい。

 ホットスナック系は何処がいい、お弁当はこっち、パンは此処がこだわってるとか色々特色が有るのは知っている。

 でもこの成人コーナーと少年紙の距離は昔からどこのコンビニもほぼ変わらない。

 そして明け透けにおいてあるエロ本の表紙には、綺麗なお姉さんがおしりむき出しで現実世界の男性を誘惑しようと必死に劣情に訴えかけてくる。

 これはどうかとやっぱり思うよ。

 

 その隣には曜日代わりで少年誌が平積みされる。

 そして少年誌目当てにコンビニに来た少年達は嫌が応にもエロ本に眼が入る。

 表紙を飾る美女のおしりの横にはでかでかと「欲しがりすぎる爆裂巨乳人妻無許可本番20連発!!」とか銘打ってる。

 おしり出しといて巨乳売りかよとか突っ込み所は満載だけど、無垢な少年達がこう言うの見て女性を勘違いしてしまっているかも知れない。

 分からないけどさ。

 

 やっぱり日本っておかしな国だ。

 ま、海外行った事ないから何とも言えないけどね。

 この時の僕がこう言った事を考えたかどうかは定かでは無いけど、兎に角僕は立ち読みしていた。

 僕の右手には丁度ひろしが立ち読みしている。

 彼も漫画やアニメ好きなんだが、僕とは少し趣向が違っていて、少年誌より青年誌って言うのかなヤング○○系の雑誌を読んでいた。

 この時、僕とひろしの間には丁度もう一人立ち読みが出来る程度のスペースがあったんだ。


 そのスペースにが滑り込むかのように割って入ってきた。


 







 

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