第72話 紅蓮との合流そしてローベンシアへ
向かった先はアルヌスの中央教会
『まったく、あの馬鹿! 』
虚空へと現われた
『…… 何処に居るの? これ? か…… しら? いた! 』
微かな魔力を掴むと、
『まったく、魔力切れで治療も出来なかったて事?
て…… これは酷いわね!! 』
その姿、受けた傷が余りにも酷かったから……
身体の前後から剣戟を受けたのか、骨まで達する刀傷が胸と背中に斜めに走っていた。
身体を捻る事で、深くまで傷を負わない様にしたのだろう。
その傷は普通では入りえない角度で身体を抉っていたのだ。
『
魔力も枯渇寸前じゃない。
それにしても、
今のままじゃ不味いわね……
無詠唱の魔法では、魔力体の傷が癒しきれないからだ。
『我は命ずる、天使の歌声、癒しの旋律。
我は願う、女神の歌声、癒しの聖歌。
世界に廻りし生命の息吹よ、ここに集え、彼の者を癒さん!
淡い燐光が
光が掻き消えると、其処には傷一つ無い
『とりあえずは…… 戻りましょうか 』
そう呟くと、
◇ ◇ ◇ ◇
「奥様、こちらを 」
年嵩の執事らしき人物が、ラフレシアへとメモ? を手渡した。
ラフレシアは、それを受け取り目を通すと、其の視線を車窓へと向け呟く
「そう…… 」
「お祖母様? どうなされたのですか? 」
ラインハルトはラフレシアへと問掛ける
「
改めてお越しになるとの伝言よ 」
そう答えるラフレシアは、残念さと心配とが入り混じった
複雑な表情をしている。
「お祖母様? またすぐにお会いできますよ! 」
「えぇ、その事では無いのよ…… こちらに戻る事が
「あの方達の身に何かが有った!? 」
ラインハルトは表情を強張らせる。
「恐らくは、そう言う事でしょうね。
今は……
深い傷を負った? と考えるのが良いのかしら……
予測だけれど、そのために
「お祖母様? あの方達に傷を負わせた者が居ると!? 」
ラインハルトは
そのための驚きだった。
「ええ、居るのでしょうね。
それに…… 以前の強さを今も、と言うのが違っているわよ 」
「違っている?? 」
「
いえ、存在感と言ったら良いのかしら?
以前の半分以下よ。
それでも、人のそれとは次元が違うのでしょうけど 」
「私には判らなかったのですが 」
「貴方に判られたら、私の立場が無いわよ?
これでも
ラフレシアは車窓の景色を眺め、
「もうすぐね…… 」
と呟いた。
流れ行く車窓は、間も無く中央府へと到着する景色に移り変わっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
今二人が居る場所は、ヘルヴェスト連邦とローベンシアの国境付近だ。
時空跳躍で一気にローベンシアの中央府に飛ぼうとしたのだが、異常な魔力を感知したため地上へと降りたのである。
幸いな事に、
ただ、自身の脚で立つ事が出来る状態ではなく、お姫様抱っこされた状態であったが……
『さっきの波動、
ここまで届くほどの魔力…… 何が
『サヤねえ? だよね。 あの魔力…… 』
『あなたもそう思う? でもねぇ、考えられないわょ 』
と、その時!
『あれは……なっ!! なにっ!? 』
突如としてローベンシア中央府の上方へと巨大な魔力を感知した。
天空には巨大な雲が渦を巻き、中央にはポッカリと開いた孔が開いている。
その穴は、禍々しい波動を放つ瞳の様であった。
その空いた孔の向こうから、地上へと強大な殺意が注がれはじめた!
次の瞬間、眩い閃光と共に轟雷の如き大音響が響き渡った!
天空だけで無く
神の一撃!? それ程の威力を秘めている様に感じたのだ。
『あれは、不味いわね。 もう、ここからじゃ間に合わない! 』
『紅ネエ! あれは、不味い! 奴らと同じ感じがする…… 』
『あなた、あれと同じ奴にやられたの? 』
『同じ奴じゃないと思う。 でも、気配が似ている…… 』
二人は歯噛みした、今からでは間に合わない。
ましてや、
今は唯、その光景を眺める事しかできなかった。
天空より照射されたソレは、魔力障壁と接触すると、硝子を砕く如き破砕音を響かせながら、地上へと進撃していた。
上空へと多重に張られた魔力障壁が次々と砕かれ、破砕の余波により辺りが揺らめいて見える。
二人はただ、破砕される障壁を眺め立ち尽くす。
ふと、
『
天空から地上へと目掛け殺到する殺意の篭った眩い閃光が、轟雷の如き大音響と共に
鬩ぎ合う殺意と、阻まんとする
だが、殺意の閃光を喰らいきる事が出来ないのか、
『紅ねえ…… まだ、あれじゃぁ、足りない…… 』
其処に行けない自分の不甲斐なさに……
『まだ大丈夫! あれはリリスね! 』
八翼を広げ三方より銀の鈴のように澄みとおった声歌を紡ぎ、
展開された
其々が鬩ぎ合い、その軋みが大音響となって世界を揺さぶる!!
『あれでも、まだ防ぎきれないの! 』
しかし、次の瞬間、新たな魔法を感じ取った?
『あれは? ……
天空へと向かう一撃!……
天空に開いた邪眼に向け、
一条は
突如天空へ白き竜が現れ
轟音が響き渡り、幾つもの破砕音と悲鳴の如き擦過音? を響かせながら、辺りを白く眩い光で染め上げていく。
どれ程の時間、轟音が世界を支配したのだろう…… 突如、音が止んだ。
一瞬の静寂のあと、ダウンバーストの様な現象が起き、天空より降りしきる雪のように落下して来るのは魔力の残滓!
魔力の残滓は障壁へ衝突すると砕け散った!
雷鳴の様な破砕音を轟かせ、砕けた破片が榴弾の如く周囲に飛び散っていく。
『あれは、白竜…… 彼女が来たのね 』
『紅ねえ、皆の所へ早く行こう 』
頷くと
皆の待つローベンシアへと。
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