第62話 再会と

 午後になり、待ち人の到着を会議室で待つ事数分。

目の前はサリアさんとタケル伯父さんだけが座っているが、他の武官などは同席しておらず、先日のメンバーの他には誰も居ない。


マリアは件の来客を出迎えに行っていた。


こちらは、白銀しろがねに、フレイアに俺だ。

リリスは今も目覚めぬ沙弥華さやかの側に居て貰っている。


 程なくして、ドアがノックされマリアと待ち人が入室してきた!?

マリアの後ろから入ってきた人物には、見覚えがあった!


忘れる筈もない…… 九年前に永遠の別れをした筈……


大分? 若返ったみたいだ……


間違える筈は無い!


「ちょっ……と、父さん? に……母さん? だよね!? 」


『うむっ、 さとる殿の御両親で間違いは無いが、ちと…… 違いもあるのだが…… 』


「ああっ……さとる、久し振りだな。 十三年……いや、お前にとっては九年振りか? 」


「色々あったみたいだけど、元気そうで良かったわ 」

両親がそこに居る…… 不思議な感覚だ。


「マリアさん、 皆さんは知っていたのですか? 」


『う……むっ。 済まぬな、皆を攻めないでくれると有り難いのだが。 色々と事情もあってな、すぐには話せなかったのだよ 』


さとるさん。 それに、このお二人は貴方達の御両親でもあるし、そうでは無いとも言えるのよ 」

マリアが続ける。


父、雅輝まさきは三十九歳。 母、亜里沙ありさは三十八歳で他界した。


父は現在は二十九歳と此方で過した時間は十三年、母も同様で二十八歳だそうだ。

俺と沙弥華さやかが目の前の人から生まれる訳が無い。


「お二人の意識や記憶と言った物は、生前のままよ。 

だから彼方達の事も当然覚えておいでよ 」


さとる、父さん達はあの事故で死んだ・・・・・・・・のは間違いない。 そして、この世界へと転生した 」


「そうよ。 ただね、こちらへは十五歳の姿で渡ってきたの。 

以前の記憶も無くさずに 」


「最初は混乱したが、親父の事もあったからな。 

それに、母さんにとっては生まれた世界だ。 すぐに受け入れたよ 」


「あなた達、兄妹ふたりの事も気になったのだけれど、この十三年はこちらの世界でやっていく事に必死だったわ 」


『それにな、さとる殿、あの事故は偶然ではなく…… 作為的に行なわれたモノなのだよ。

人の生き死には因果率で決まっておるのだがな。 

稀に、強い害意により捻じ曲げられる事もあるのだよ。


だが、人の想いとは奇跡も起こす事があるのだ。

その想いが強ければ運命も変えられるやも知れぬ。

それが証拠に、目の前に居るだろう…… 主等の両親が 』


「作為的なもの? それと、何故この世界に若返って転生しているのか…… 

召喚されたの? それとも!? 

もしかして…… あの覚えの無い魔法か!? 」


『ここまで言えば理解したかの? お主の九年前の願い。


 当代の勇者はお主らの御両親なのだよ。

お主ら二人の想いと、さとる殿の魔法が二度目の人生を与えたのだ。

スペルブックにあったであろう、「転生リーンカーネーション」その魔法により御両親は転生したのだよ。

母君の生まれたこの世界へな (他の力も働いた様だが…… ) 』


「俺の魔法? でも…… なぜ俺が九年前に魔法を使えたんだ? 」



 まず、召喚魔法や送喚魔法にも種類があるらしい。

不慮の事故や天命などで亡くなった人を招く場合は転生召喚となり、送る場合は転生送還となる。

逆に身体的、霊的にも健康体の人を、その姿のまま招く場合は生体召喚となり、逆は生体送還になるそうだ。


転生の場合は、魂魄たましいの状態でスキルを融合し、転生先で肉体が再構成される。

生体召喚・送還の場合は、後天的に身体および霊体、所謂魂魄たましいの強化がなされ、ギフトとしてスキル等が付与される。


肉体が再構成される場合は二種類有り幼生体、所謂赤ちゃんとして誕生する場合と、転生先で受肉する場合があり、俺の両親の場合は後者となるそうだ。

ただ、元々父は勇者の血統だったため、より強い魔力を持って転生送還されたそうだ。



『うむ、 それが我にも判らぬのだ。 

それを知る為に、二人に来てもらったのだがな 』


さとる、お前に渡すモノがある。 

これはお前の祖父さん・・・・から託されたモノだ 」


「受け取って…… そうすれば全てを思い出すから 」


そう言って、父と母が言霊を紡ぐ


「ちょっ、ちょと! 待って…… 」

俺の言葉はそこで途切れ、暗く深い水底へと落ちていく様に意識を手放して行く。


「「時の力を秘めし『黄昏の鍵』よ、古の盟約に基づき、真の姿を我の前に示せ。

一柱かみとの盟約のもと我らが命じる! 『神聖封印解除セイクリッド・シールド・リリース』 覚醒せよディサルージャン!! 」」


詠唱と共に魔法陣が展開し、全てを眩い光が飲み込んでいった。


俺は、薄れゆく意識の中で、白銀しろがねに抱き抱えられているような気がした……。


    ◇    ◇    ◇    ◇


別室ではリリスが沙弥華さやかの眠るコクーンを見守る。


『……!? なに? 』


突然、コクーンの中より魔力の上昇を感じた!


沙弥華さやかさま!? いったい…… 』


次の瞬間、コクーンが、魔力により一刀の元に両断された!


そこに現れた紗弥華さやかには、今迄見たこともない程の魔力が揺らめいていた!


その表情には余裕が感じられず、焦り? 怒り? 焦燥が見え隠れしている。


「不味い! 急がなきゃ! 」

瞬間、沙弥華さやかが掻き消えた!!?


『えっ!? さっ、沙弥華さやかさま……!? 』

突然の事にリリスは混乱したが、すぐさま白銀しろがねへと念話で現状を伝え、自分もさとるの元へと急ぐのだった。

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