第26話 レイヤー天国? 建国日?

 そんな訳で、文化レベルや服装などの説明を夕食後に聞く事になった。

五人になった家族・・と囲炉裏を囲みお茶を頂きながら話を聞く。


 リリスが簡単に説明をし、白銀と紅花が補足する格好で話しは進められた。


『まず、人族には五つの国があるのです。

それぞれの文化レベルなのですが、地球と比べると魔道科学や練成学が発達している事もあって、違う方向に進んでいるのです。


 マスター達の世界で言うとスチームパンク寄りな世界と表現するのが妥当なのです。

ただ、蒸気機関ではなく「魔道機関」を使用しているのですね。


 見た目の文化レベルは産業革命のあった19世紀から20世紀位になりますが、国によって様々です。

中世ヨーロッパ的な国も在りますが、魔道科学や練成学は進んでいる事もあって文化レベルは高いのです 』


『服装については問題ないと思うぞ、国ごとに根底にある文化思想が違っておるのだ。

地球で言う近代的なファッションからフルプレートなどの中世や前時代的なファッションも流行していた筈だがな 』


『たしか、着物もあったかと思いますよ 』


「……気のせいか? 夏と冬にビックサイトあたりに行くと見られる景色の様な気もするが 」


「要するに、サイバーパンクもスチームパンクも戦国時代も中世時代も……何でもありなのね? 」


『要約するとそうなるのです。 

 従いまして、マスター達がBDU《バトルドレスユニフォーム》だろうとタクティカルウェアだろうとコスプレだろうと、女装をしていても、誰も不思議に思わないのです。

 そう! レイヤー天国なのです!! 』


「そうなの! 」

おい、食いつくのはそこか?


「地球の普段着でも不思議に思われないのなら安心だな。

  それで、魔道科学や練成学が発展している世界とはどんななの? 

地球みたいに車や飛行機やロケットなんかもあるの 」


『車と鉄道は在るのですが、飛行機は危険・・なので無いのです。

 ただ、一般人で車をお持ちの人は居ない筈なのです。

所有は出来るのですが、走行のためには非常に多くの魔力を消費しますので、扱える人が限られるのです。

補助道具は在るのですが非常に高価なので賄いきれないのです。

そのために鉄道やバスに馬車を利用する人が多いでのです。

人族の五ヶ国は鉄道によって繋がれているのです 』


「鉄道か、長距離列車だよね、オリエント急行みたいなのかな? 」


『あれは中々の速度で走るぞ。

弾丸列車(バレットライン)と言われておるからな。

地球の新幹線の非ではないぞ。 魔道科学では風の抵抗を無くし、重力も軽減できるのだからな。

地球のリニアチューブに近い発想だな 』


「リリちゃん、そんなに魔道科学や練成学が発展しているのに空は飛ばないの?

それに飛行機は危険って? 」


『はい、危険を冒してまで空を飛ぶ必要性を感じなかったようなのです 』


『空は竜種の聖域・・・・・なの、竜種と遭遇して他国の上空で落下事故を起こした場合の事を考えたのよ。

自国内でなら言い訳も出来るけど、他国だとね……。 

 自国民の死者だけでは済まない、相手国に被害が出るのは明らかだし。

場所が悪ければ戦争になるのだから 』


「あれ? 竜種・・ってドラゴンですか? この世界に竜が居るの? 」


『竜や龍など、国により呼び方が変わるが、ドラゴンは居るぞ。滅多に遭遇はせぬがな。

昔、飛行船・・・と言う物を人族が造ったのだが、竜種と遭遇してな。

甚大な被害が出たのだよ。それ以降は空を移動する物は開発を断念したようだな。

最後まで諦めなかった国は西方の国だけだったが、逆鱗に触れたのか街が一つ消え去った。

その名残が湖となって残っておる 』


「そんな怖いのとは会いたくないな 」

(それはもう手遅れなの )リリス

(既に手遅れだがな )

(お兄ちゃん、手遅れよ )沙弥華さやか


さとる、もうお「ちょっ! シロ君、すぐに戦争だって聞こえたけど」……』

(紅花よ、言ってはならぬぞ! )

(白銀、いけないのか? 了解した )


『ウぉほんっ!……さとる殿、別におかしな事ではないのだぞ。 

元々が戦争をしていた国々なのだからな。

 今は戦争などは無いが、諍い程度はあるのだよ。

特に西方の国が危険でな。

 その辺はマップを見ながらの講義をしようと思っておる。

 それに、全ての国は行ってもらう事になるしな 』


なんか、はぐらかされた気がするのは気のせいかな?


「リリちゃん、入国に審査とかパスポートか身分証明書って必要なの? 」 


『はい、必要になるのです。 しかし、御安心下さい。

Mトレックで代用が可能なのです! 』


「はい? だって、異世界人の俺達の身元証明ってどうやるの 」


さとる殿と沙弥華さやか殿が此方に来て約十ヶ月になるな。

その間に開拓した未開エリアが今どうなっておるか判るか? 

AR表示で確認してみるが良い 』


「確認するわね。 え~と、[空白の大地]となってるわね 」


『そだろう。 だが、グレーで淡く表示されて無いか? 

その文字をタップしてみて欲しい、文字が消え入力が可能になった筈だが、どうだ 』

そう言われて俺も見てみる。


「あっ!? 文字が消えてカーソルが点滅してる 」 


『好きな国名を入れてみよ、問題無く登録される筈だが 』 


「シロ君、国名って? 前に言っていた領土化・・・の事かな、好きに決めて良いの? 」


『問題ない、沙弥華殿の好きに国の名前を決めれば良い』


「お兄ちゃん、リクエストある? 」


「好きにして良いよ、このまま趣味に突っ走るんだろぉ 」


「じゃぁ~、許可も頂いたので、に決めちゃうからねぇ~ 」

 そう言って、沙弥華は「風」と一文字入力した。


 アラームの様な物が響き

『システムコール ワールドマップ リオーガニゼイション 』

『領国名を「かぜ」と改編完了、建国記念日設定 20XX年 3月28日、領主設定に移行します 』

AR表示に領主設定画面が現れた。


「領主はお兄ちゃんでOKで、首都設定っと……リリちゃん首都ってここの事? 」


『はい、そうなのです。 この温泉のある初期マップが首都になり、この建物が領主の館になるのです』

「どうしよう。 お兄ちゃん首都名だって 」


「どうするって、ここ迄きたら なぎさしかないだろ 」


『流石兄妹だな。 良いではないか! 』

おい、どこまで染まった……


『そうね、中々良いと思うわ、それにしても港と赤橋・・・・が無いのは悔やまれますね 』

はい? 紅花べにばなさん? 貴女も染まったのね。


「これで登録完了! 」


『領国名登録及び改編作業は終了しました。 リブートを開始します、完了まで十秒…… 』


『沙弥華様、リブートが完了したら別メニューの入力が可能なのです。

領主設定項目に家臣設定が追加されている筈ですので、私達の名前を登録しておいて欲しいのです。

もう一人は後で追加するという事でお願い出来ますか? 』


「もう一人……あ~っ!?、シロ君のもう一人ね。 まだ会ってないから名前も決まってないものね」


『最初の疑問の答えがこれだな、Mトレックによって身分証明が出来るようになったな 』


「すげーチートだね。 他の国に本当に通じるの? 」


『問題は無い、神の神託と同等の効果があると説明したであろう。

人族には疑問に思う事も抗う事も不可能な上、 改編は、ありとあらゆる書類、記憶、深層意識に至のだからな。

ましてや、他国の国王・・王族・・へ下手な対応は出来まい 』


世界規模の改竄とか本当にチートだわ……うん?


「ちょっと? 白銀さん、王族・・とか言わなかった? 」


『そうだが、それがどうかしたのか? 』


「いやいや、王族・・って誰…… 」


『のんなの、 決まっているじゃない。 兄妹ふたりの事でしょ 』


「なんで? 」


『マスターは、先ほど領国の領主・・・・・として登録されたので問題ないのです 』


「いやいや、登録って…… 」


「お兄ちゃん! 気にしたら負け。 それに、もう手遅れ。 すっぱり、諦める! 」


「……そうですか 」

はぁ~恥ずかしい。

国民の居ない国の国王って言われてもね~。

各国を旅する間に国民をスカウトして行けば良いのかな。

でも移住して貰えるのかな~。

その辺はまた考えよう。


「そうだ!、この世界に冒険者みたいなのは居ないの? 」


『似たような職種はあるぞ、ハンターと呼ばれておる。 当然ハンターギルドもあるぞ 』


「そこへは登録出来るのかな? 」


『うむ、問題ないぞ。 登録せねば、各国を回るのに少々困るのでな。

そのつもりではあるぞ 』


『王族として訪問するのは色々と問題なのよ、ハンターとしての入国の方がお互いに困らないのね。

各国暗黙の了解の上に取り決められているのよ 』


「国王がハンターって、暗殺とか無いの? 」


『当然、王族と言う情報は伏せ申請するのだ。 何が起こっても自己責任と言う訳だがな 』


「随分思い切った自己責任だね 」


『怖ければ正規に王族として入国をすれば良いだけだからな、リスク回避も自己責任と言う訳だ 』


先ずはワールドマップを開放して、この世界の事をもう少し教えて貰わなきゃね。

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