第19話 開拓者の称号

 この世界へ来てから既に一ヶ月が過ぎ、今日も初期マップの探索を続けていた。


ここを拠点ベースキャンプにするため、設備の充実を図っている最中だ。

休憩所に脱衣所とトイレは設置は済みだ。問題はトイレだが、これもそう深く考えなければ簡単な解決策がある。

え? 昔ながらの汲み取り式? 違いますよ! 

それだと排泄物の処理の問題が出るでしょ。


 キャンピングカーユーザーならお馴染みの物が有るのです。

カセット式のポータブル水洗トイレと言う便利な物がね。

値段もそれ程高価なわけでもなく、排泄物は下部のブラックタンクに保管される。


消臭防腐剤が入っているので臭気も比較的抑えられる。

防腐剤が無いと、とんでも無い事になるのだよ! 

腐敗するとガスが発生するよね、タンクがガスで膨張する訳だ、そうなるとガス圧に耐えられなくなって……。

お分かりですよね、飛散して悲惨な目にあう訳です(洒落じゃないよ)。


 聞きなれない言葉があったよね。「ブラックタンク」これは排泄物用の物ですが、グレータンクと言う物も有るのです。

これはシンク用の排水を貯めるタンクを指しています。

汚水処理の出来る場所が、内容物・・・によって変わるので覚えて置くと良いですよ。


    ◇    ◇    ◇    ◇


話が逸れたけど、次話は本題に戻ります。


 初期マップと言いながら、その面積は神奈川県と変わらない位広く探索した範囲は中々広がっていない。


マップ内の情報はナビ画面、もしくはMトレックでも検索が可能だったので、徒歩でもスマホ感覚で使用できる。

ただし、歩きスマホ状態にはならない、AR表示で視界に表示されているからだ。

高度な眼鏡型ウェラブル端末、と言うか眼鏡の要らないウェラブル端末かな?

兎に角便利なのです。


 基本機能はナビ準拠なので、車内同様な検索及びナビゲーションが可能だ。

個別メニューの「近くの温泉」や「近くのキャンプ場」など現実世界のナビと変わらないメニューもある。


今来ている温泉は野湯その物だったけど、キャンプ地は野営可能なひらけた場所だった。

当然、地球の様な温泉宿や高規格キャンプ場などがある訳もないが。


 その他のメニューには「近くの釣り場」の他「近くの狩場」や「近くの街」もある。

但し、「近くの狩場」と「近くの街」はグレー表情で、地図LVを上げなければ選択出来ないとメッセージが出る。


 温泉地のベースキャンプ近くを探索しようとナビの確認していると、画面の地図表記に変わった物を見つけた。

「領地の取得が出来ます? 」 


「リリス? これはなあ~に? 」

色々と教え忘れ? 

が多いようですが、仕方ないですね。

自分も余り検索していませんので……と言うか説明書など読む気になれなかったのですよ。


『マスター、これはですね。 その言葉のままです 』


「いやいや、それじゃ判らないよ 」


『え~とですね。 前にお話しましたが、このエリアは未開エリアで入植した者も無く、周りを急峻な峰に囲まれ、東側は海に面しているために手付かずなのです。

従って、領有権・・・を主張する者も居ないのです。

マスターの称号リストに「開拓者」が増えていたのをお気付きですか? 』


「へっ?  称号なんて有るの? 開拓者? 」


『はい、マスターの称号は「遊者、繋ぐ者、探求者、技巧士」がありましたが、新たに開拓者が増えた様なのです。

開拓者の称号取得で制限が解放されたのです 』



「称号は後で確認するとして。

さっきの、領有権を主張する者が居ないと領地に出来るってどういう事なの? 

 たかが、ナビ画面の中での話しだろ。

この世界にどれだけの国があるのか知らないけど、この機械だけで済む事じゃないって誰でも判るよ 」


『それが違うのです。 これ・・で決定した事は実際に効力・・が発生するのですよ。

ただし、元々が他の領地や領域の場合は無理なのです。

 今回の場合は、未開地であり領有権を主張している他者が居ないので可能なのです。


 登録処理を実行すると、即座に世界へ改変処理がなされますので、他国に文句を言われる間も無いのです。

神の神託・・・・と同等の効果があるので、人族には疑問に思う事も抗う事も不可能なのです。

改編は、ありとあらゆる書類、記憶、深層意識に至ります! 』


「……ちょっと? 世界規模の改竄とかチート過ぎるだろ!! 」


「それに、『三種類の拡張機能を与えられたこの車は、まさに、走る弾丸、走る要塞なのです』と言っていたけど、それ以上じゃないの?

領地を広げ放題だって事だよね? 」


『哲殿、少し良いかな? 』

そばでやりとりを見ていた白銀しろがねが割って入ってきた。


『少し、それに関する事で説明しよと思うのだが、沙弥華さやか殿も宜しいかな? 』


 了解の意思を示して休憩所に移動する事にした。


 囲炉裏に火を入れる。

天井の梁からは自在鍵じざいかぎが吊るしてあり、そこへケトルを吊るし席に向かうと、皆が座るのを待って、白銀しろがねが話しはじめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る