第25回ユニオン・オブ・ザ・ビール











2022年8月8日(月)


昨日のパーティーは夜11時半で終了。


ベータは夜中12時半には寝付いた。





"オーバー・ザ・サマー・アポカリプス”の製作は猛暑で難航していた。


ベータと数人のスタッフ以外はテントでくたばっていた。


愚蓮京介監督もめまいを覚えていた。


「資金もギリギリ、時間との勝負だな」愚蓮は崎守叶香マネージャーに撮影再開を告げる。


カメラマン達もミネラルウォーターをラッパ飲みしたり、頭から被ったりしていた。


撮影は夕方まで続いた。


一日の仕事が終わり、俳優さんからの差し入れのはちみつレモンドリンクがキンキンに冷えていて喉が満たされた。ベータは一気に飲み干した。


夕食は絵里江さんと外で食べることになってる。




7時に駅前で待ち合わせをしていて、絵里江さんは先に来てる。青のブラウスに紺のジーパン姿。


「待たせた?」


「いいえ、私も今来たところです」


「和食がいいんだよね?」ベータはハンドタオルで顔を拭う。


「本城さんに任せます」絵里江さんはピシッとした佇まいで相当姿勢がいい。


「いつも行く所でいいよね?」


「はい」






結局大戸屋へ行ったのだが、彼女は初めてらしく、「こんな家庭料理が食べられる所があったんですね。美味しい」満足してくれたようだ。


「愚蓮監督の映画の製作は進んでますか?」


「う~ん一進一退という所かな、なにせこの猛暑。ほとんどのスタッフはくたばってる。公開は未定だね」


「ほとんど完成しているんですか?」


「そーねえ、やっと8割出来てきた感じ」


「早く観たいです」絵里江さんはきりっとした瞳でベータを見る。


「俺も楽しみだよ」






体育教師生田直樹は天国口高校の柔道部室にストックされてる缶ビールを呷る。「う~ん幸せ」


部室のドアが開いて、元教え子で今は教師の浦兼好恵が入って来る。


「センセイずるいよ」


生田はバツが悪そうに「わかった。お前にもおすそ分け」


生田が投げた缶ビールをキャッチ。「ひえ~冷たい」次の瞬間「う~ん天国」浦兼は上を向いて合掌。


「お前本当にビール好きなのな?ビールの神様にでもお祈りか?」


「ビールなかったら生きていけない。あれそういえばまだ家に帰らないんですか?汐留先生、放っておいていいの?」


生田の顔が一気に曇る。


「え?私なんかまずいこといった?」


「違う、違う、お盆で子供も連れて実家に戻ってる。今家には誰もいない。寂しさ紛れにこの部室に来た」


「はあ、そういうことか、こうなったら希林先生も呼んで、飲み明かす?」


「構わんけど、ここ暑いだろ、職員室に移動しない?」


「校長と教頭にばれたらまずいと思う」


「いや2人とも帰ってる」




そろそろ暗くなりそうな夜7時半。2人は部室から大量のルービーを職員室に運ぶ。


校庭ではまだ野球部が練習してる。部員たちをよそ目に職員室へ。


職員室に入って、一番歓喜の声を発したのが、当たり前ながら希林直美先生だった。


浦兼は腕を組んで意味ありげに希林先生を見る。


「浦兼先生、その誇ってる姿勢はどういうつもり?」


「いやーやっぱ希林先生もビール好きなんだなあという確認ですよ。深い意味はないです」


この晩3人は学校で夜中3時まで飲み明かした。




夜中の駅前ストリートミュージシャンが綺麗な音色を立てている。


天使”リョッシー”は久々に地上界に戻って来た。


熱帯夜に天使が汗だくで彷徨う。


神秘的に夜を彩る。


2017(H29)8/12(土)・2019(R1)12/13(金)

















 
























 





















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る