第13回JUST THE TWO OF US
さてあと6時間のうちに華越絵里江さんをクドかなくてもいいから電話番号くらいはゲットーしたいもんだ。
彼女の作ったギムレットは最高に旨い。
「何か自信のあるカクテルないの?」らしくないなあ、俺って。自分から積極的に働きかけんくせに自然と口が滑る。
彼女は指を顎について「名前は付けてないんですが、試験的に作ったカクテルはあります」
何気ないしぐさがグサグサとベータを差していく。
なんで初対面の子にこんなにときめくのだろう?
いけね、今日我道が金持って行かなくていいとか言ったから財布の中は空っぽだ。
「お手洗いどこ?」苦し紛れである。
「右へ行った奥です」
「ありがとう」
ベータは慌てて我道の所へ行き、「お前今幾ら持ってる?」
「なんで?」
「そこのショットバーで飲んでるんだけど、会費と別払いなんだ」
「幾ら欲しいの?」我道は財布を取り出す。
「3万くらいあれば足りるかな?」
「はい」そう言って我道は5万渡す。
「悪いな今度返すから」
ベータは会場を迂回してからショットバーに戻る。
8席くらいあるが、誰も座ってない。
「ただいま」
「おかえりなさい」とはにかみ顔を見せる彼女。かわいい……。
さて、どうやって電話番号を聞き出すか?
でも電話番号聞いてどうするんだ?取って食おうというのか?
そんなつもりはないよ……お友達になりたいだけだ……なんて下心見え見え。
この会場を見渡すと結構な美形の女性が揃ってる。
彼女絵里江さんは明らかに地味系の美形だった。でもベータにはどストライクであった。
彼女は試作のカクテルを出してくれてからはやることがないみたいで携帯をいじってる。
さてかれこれ10時になろうとしている。まだまだ宵の月である。
なんか無性に楽しいというか、新鮮というか……恋は突然って本当なんだなあ……。
どうやって電話番号聞けばいいんだろう?
俺もプレイボーイじゃないからねぇ……よく言うよと言われても反論のしようがない。
あと5時間って所にスリルを覚える。
42歳って今おっさんとは言わないんだろうか?お兄さんとも言われんよなあ。微妙。
独特な魅力を持つ絵里江さんを見てると電話番号なんかどうでもよくなってきた。
そういうことじゃないんだよね、俺の求めてることって。
女性の美しさは世界の宝だ。もっと大事にせんと……。
「絵里江さん」
「あ、はい、すみません」謝る必要ないよ。
「何かお勧めのカクテル作って」
彼女は警戒心のない表情で「はい、お待ちくださいね」そう言って棚からボトルを下してる。
彼女のことを見てるとなんだか胸がいっぱいになってきた。
だってあまりにもかわいいんだもん。オヤジのセリフだけど,そうとしか言い様がない。
かわいい、ひたすら、かわいい……。
君とだったら空に城を作ることもできる……。
君とだったら宇宙も天国も越えられる……。
我道の方に振り返ると、相変わらず人に囲まれて談笑してる。
本城ベータ42歳。まだまだこれからだな……。
2017(H29)3/6(月)・2019(R1)12/5(木)
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