第6回truly madly deeply

我道幸代の肩を叩いたのは高校の同級生だった学級委員の野上薫子だった。


「薫子じゃない、久しぶりねぇ、5,6年ぶりかな?」


「幸代も大物になっちゃって、凄いね」


「今何してるの?」


「今は働いてない。探してるけど」


「そう……私もこのイベントの責任者だから、なにかと忙しい。またね」


そう言って我道幸代は現場に戻る。


野上は寂しそうに口をつぐむ。





天国口高校の近辺に40階建てのマンションがある。


その男は金髪にサングラスをかけ、年の頃20代前半というところ。スレンダーで身長もそこそこ高い。


「40階建ての40階か、めんどくさい」


男の名は”欅坂蓮次郎 24歳”……姉加寿美に呼び出される。


エレベーターの中は蒸し暑い。それでも日差しがレーザービームのように差す外よりはましという所か。


姉加寿美は2年前に離婚して、慰謝料ががっぽり入り、この高級マンションを購入した。


姉の加寿美は浪費家なので蓮次郎がある程度は見てないと危ない。


「あら、やっと来たの?夕ご飯まだでしょ、食べていきなさい。」


リビングには飲みかけの赤ワインが置いてある。


牛のヒレステーキにトマトのスープ、春雨のサラダと手の込んだ料理が出てくる。


「姉さん、料理上達したよね?」


「そう?今の彼は褒めてくれたことないなあ……」





加寿美のマンションを出ると、雲のない真っ黒な夜空が広がっていた。


蓮次郎のステディ”天津玲奈”のアパートに寄る。


玲奈は薄いシャツにショートパンツと綺麗な体の線が強調されてる。


「玲奈はアナザーワールドに興味ある?」


玲奈は雑誌を見ながら「そうねえ、あまり興味ないかも」と返す。


「一度門をくぐったことがある」


玲奈は顔を上げて「ほんと?」


「ああ、霧が濃かったな」





玲奈のベッドの脇の窓からは月は見えない。蓮次郎は隣りですやすや眠る玲奈の寝顔を見てる。


玲奈の穏やかな寝顔を見てると、酷暑の夏も一瞬忘れてしまう。






アンドロメダ星雲……アポロンはX軍の中枢へ向かっていた。彼が乗るフェニックス・ブルーは数機のボルゾックに先導されていた。


「アポロン、X軍の本拠地に着くよ」


同行したアテーナーは正面スクリーンを映し出した。


「スクリーンには黒い兜を被ったブラック親衛隊総帥が現れる」





7月26日(火)


本城ベータは、汗だくになって、目を覚ました。


「またアンドロメダの夢だ」手を額に当てる。


朝の6時、彼が目覚めたのは天国口高校の柔道部の部室だった。


2017(H29)1/14(土)・2019(R1)12/3(火)






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