第42回 UNIVERSE IN EARTH

8月28日(木)


僕のワイフは通りを踊ってステップを刻む


俺はつられて、電信柱に衝突……。


「なんだっけこの歌?」


「え?何か言った?」と映見はスマホを操る手を止める。


「いや、なんでもない……」伊藤影道は頭を掻く。なんか変だよな最近の俺。


今日も朝久里映見のアパートで朝食。


映見は本命だった我道のことを聞いてこない。


昨日から泊まってるわけだが……大人だよな、とても年下とは思えん。


「影道、そろそろ仕事じゃない?」


「うん、あと30分くらいで出る」


朝久里映見はこだわりのないサッパリした性格で、伊藤影道のガールフレンドの中でも一番付き合い易かった。


「映見も仕事だろ?」


「今日は昼からなの……」




天国口高校の夏休みもあと4日。先日の怪奇現象は色々形を変え、校内に広まっていった。


体育教師生田直樹は汐留先生へのアタックがうまく言ってない。演歌スナックへ連れて行くわけにはいかないし、どうしたものか……?


相変わらず昼間からビールを飲んでる。しばらく禁酒していたがやはり酒なしの生活は無理だった。


今日汐留先生は休みだ。メールしてみるか?なんて書いていいのかわからん。


生田は柔道部の部室から職員室へ向かった。向こうから細身で貧相な男が歩いてくる。佐々木道忠先生だ。


こうはなりたくないなという37歳同い年の典型的なモデル。


職員室には宮田教頭と吉本月子先生しかいない。生田は自分の机に座り、汐留先生になんとメールするか試し書きしようとレポート用紙を取り出す。




ベータは霧の濃い道端でまた眠っていた。アナザーワールドに迷い込むと必ず眠くなるということが多い。


今は8月28日木曜日。また一日寝てる。微かに彼方に灯りが見えた。近づくと定食浜里と出てる


入口を開くと香ばしい匂いがしてくる。客はいないようだ。店の親父さんは奥で新聞を読んでる。


不思議と腹は減ってないが、さばの塩焼き定食を頼む。


ベータはおそるおそる「ここは何町ですか?」と聞いてみる。


親父さんは表情を変えず「この世の果てだよ」と言う。


ベータは予想通りの答えにため息を吐く。



ネットカフェの中で長いキスを終え、北島守と野上薫子はカップラーメンを食べる。


「北島、お金大丈夫なの?」


「平気、平気、君のためなら何でも可能さ」


野上は少し顔を赤らめる。


北島は野上と付き合い始めて、破天荒なわりに純情なとこがあるんだなと気付く。


「ネットカフェ代が大変なら、本城の所に泊まればいい、我道もいるんだろ?」


「うーん、なんかあの2人いい雰囲気だから、邪魔したくないかな?結婚するみたいだし……」


「そうか、本城と我道がね……」


夜も更けてきた。北島は野上にお金を渡し、ネットカフェを出る。




月面でアルテミスがポセイドンからの連絡を受ける。


側にいたアポロンは「ゼウス様も気まぐれだな……」と一言。


「地球が青いうちは大丈夫だよ」アルテミスはアポロンの肩を軽く叩く。


2016(H28)1/27(水)・2019(R1)11/17(日)




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る