第27回SEASONS IN MELLOW

8月11日(月)


北島守はひどい頭痛を感じ、目を覚ました。右手を置くと何か柔らかいものに触れた。え?えーっ?


隣りで野上薫子が全裸で寝てる。えーっ!そうか昨日サイゼリヤでワイン飲み過ぎて、カラオケBOX行って、そこでもレモンサワー飲み過ぎて、勢いでラブホテルに突入したんだった。


北島は感慨深いものがあった。中学からずーっとあこがれ続けたマドンナが今自分のものになっとるのだ。


野上は無邪気に寝息を立ててる。夢なら覚めないでほしいなあ……。



先に目を覚ましたのは我道だった。昨日は岸森明日菜が乱入してきて、シャドウのことが相当気に入ったみたいだ。凄い勢いで酒を飲んでいた。


「私の彼氏だからあなたにはあげないわよ」と言ったが、「奪っちゃおうかなー」なんて返してくる。


「本城センセどうすんのよ?」そしたら明日菜は目を上に向け「センセかあーそうそう私センセのこと好きだったんだっけ……」なんて笑みを浮かべる


「過去形なの?」


明日菜は「それは秘密!フフフ……」


それから芋焼酎一本開けても酔った感じじゃなく、いつの間にか朝だ。今7時半。シャドウを起こした方がいいのか?


昨日はほぼ3人で雑魚寝状態。明日菜もすやすや寝てる。


我道はシャドウを起こし、朝食を作る。8時にシャドウが出ていく時間になっても明日菜は爆睡状態。


やっと起きたのは昼12時。「えーそんなに寝てた?」明日菜はさっぱりした顔をして、伸びをする。


「あああ、昨日久々に日本に帰ってきたんだよね」


「アフリカは一周出来たの?」


「一応ね。危ない状況もあったけど、私もタフみたい。帰りの旅費は働いて稼いだ」


「やばいことしてないよね?」


「やばいこと?」明日菜は相変わらずのとぼけぶり、カマトトぶってても実は頭は切れることを我道は熟知していた。


「普通に船に荷物運んだりのガテン系の仕事だよ」


「よくあんたに出来たね?」


「なんか、腕力ついたみたい。腕相撲してみる?」


「そんなことより、あんたこれからどうするの?」


「う~ん、高校生存続は難しいし、またどっか旅立とうかな?寅さんみたいに」


「とりあえず、そのチンドン屋みたいな服装どうにかしないと。なんか貸すよ、私のサイズで合うでしょ?」


「サンキュー!助かる」


岸森は朝食をたらふく食って、夕方頃「そろそろ行くよ」と言い出す


「お金あんの?何だったら貸そうか?」


「大丈夫、なんとかなる」そう言って再び旅立っていった。




1年A組野球部3番センター剛力和利は3年A組の高橋・サファイア・ライト・里見に絡まれていた。


「君、1年生で野球部3番って凄いね。顔も可愛いし」


剛力はサファイアの美貌が眩しく目を合わせられない


「ねぇ、一緒に遊ばない?」


「え?」


「かーわいい……お姉さんが色々教えてあげるわよ」


「えぇー?」


「ひょっとして変な想像した?」


剛力は益々落ち着かない。


前からサファイアにぞっこんの梶五十歩が来る。サファイアは待ってましたと言わんばかり、剛力と腕を組む。


梶の顔がどんどん赤くなってくる。


「この人私の新しい彼氏」そう言って剛力にべったり。剛力は顔が硬直する。


梶の頭のてっぺんから蒸気が出たが如く、突進してくる。


その時梶の肩を引っ張る巨体、サファイアの弟のアクアマリンだ。


「てめー!離せこの!」


アクアマリンは巴投げで、梶を吹っ飛ばす。


梶は落下してくたばる。


「おつかれさん……」アクアマリンは手をはたく。


「ありがとね、剛力君」


サファイアはアクアマリンのバイクの後ろに乗り、風のように去って行った。


剛力はあっけにとられて、放心状態。




月ノ輪哲郎は”バー・リデル”でジン・ライムを飲みながら、本を読んでいた”幻想”というタイトル。”生まれてくることの快感、月に届け”……。


「ふーん、随分固そうな本読んでるわね……」横から我道幸代が覗き込んでる。


月ノ輪はギヨッとして、至近距離で我道と目を合わせる。その瞬間頭がくらーっとしてくる。なんか凄い香水の香り、すったおれそうになる。


我道は月ノ輪の隣りに座り、スコッチのロックを頼む。


月ノ輪は酔いが回ったのか、我道に酔ったのか判断しかねてる。


我道は薄ら笑いをしてる。


2015(H27)6/15(月)・2019(R1)11/13(水)

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