第47回復活のベーヤン

ベータはまたいつの間にか眠りに落ちていた。


ハッとして、周りは6畳くらいの民宿の一室。


さっきの牢獄みたいな白い部屋は夢だったのか……ほっとしたというか、体中汗だらけだ。


どうも体の感覚がおかしい。眠気が取れんし……なんかだるい。


今何時だ?外の明るさで言えば朝か?


下に降りると、キョウと多分彼女の母親が台所で働いてる。


キョウが振り返って、「ああ、起きたの早いわね」と言って「母です。一緒にこの民宿をやってます」


キョウの母親が振り返って、「土方美紗緒と言います。おはようございます」微笑むと目じりに皺が寄るが、キョウと姉妹と間違われてもおかしくないくらいの若さと美しさを保ってる。


また美女か……とにかく美女、美女、美女……目の前に現れるのはすべて美女。


もう考えるのやめよう。別にいい。悪い事じゃないし。


なんかビートルズでも聴きたくなってきた……。


食堂の10人くらい座れる正方形の机に座ってるとキョウが冷えた麦茶を出してくれた。


「もうすぐ朝食が出来るから待ってて」


「先にシャワーだけでも浴びたいんだけど……」


キョウは軽いステップで振り返り「ああそう、いいわよ浴室使って」


「あとビートルズのCDって持ってない?」


「ビートルズ……ああなんかあった気がする。探しとくわ、それよりあなた着替えあるの?」


「いや、まったく」


「しょうがないなーいいわ、兄の服借りるから」


「ありがとう」


とりあえずシャワーだけで汗を流した。


シャワーを浴びたらなんかスッキリした気がする。脱衣所にはすでにタオルと着替えが置いてあった。


食堂へ行くと朝食の用意が出来てる。


キョウが「やっぱり兄の服はあなたには大きいわね」と言い口を押さえて含み笑いをしてる。


棚にCDラジカセが置いてあって、ピアノ協奏曲が流れてる。


「ああそうそう」と言ってキョウはCDを2枚差し出した。ビートルズの「ラバーソウル」と「リボルバー」だ。


「兄が持ってたわ」


「お兄さんは何してる人なの?やっぱ民宿手伝ってんの?」


キョウはかぶりを振って「警察官をやってるわ。今さっき出かけたばかり」


「ふうん」


朝食はアジの塩焼きと大根の味噌汁にご飯にキャベツとポテトのサラダ。塩辛が付いてる


「ご飯はお替りして下さいね」美紗緒さんは物腰柔らかそうにそう言った。


さてこれからどうしますか?




我道幸代は必死で森の中を駆けていた。喉が渇いたが、水筒の水はもったいないので飲まなかった。


少し休憩して岩の上に腰掛けた。我ながらひどい恰好をしてると感じた。これだけみっともないのは初めてだ


湧水を少しすくい、飲めるかどうか、匂いを嗅いだ。大丈夫そうだ。手の平に溜めて飲んだ


我道は虚空を仰ぎ、唇を噛みしめ、また走り出す。


30分も走ったろうか……やっと車道に出た。


我道は座り込んで、息を整えた。


10分くらい経ったら、車が来た。我道は立ち上がった。車は目の前に止まる。


窓が開いて、我道は一瞬固まって。


「坂裏!?」


「高校をクビになったベーヤン先生だよ、我道幸代だろ、早く乗れ」


我道はすぐ助手席に乗った。ベーヤンはニヤける。


2014(H26)7/17(木)・2018(H30)5/23(水)

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