第28回So Many Kissing Day

8月5日月曜日


今日は出勤日。昨日夜中4時まで映画観てたので眠いながら朝9時に天国口高校へ向かう。


職員室に入ると生田先生がいびきをかきながら座り姿勢で寝てる。


他は誰も見当たらない。


とりあえず自分の席について書類を整理してる。


ふと岸森の美貌を拝みたいと思い始める。恋人としてはとても見れんが、我道みたいな得体の知れん奴よりは癒される。


今日来てないのかなと、A組の方へ向かう。


A組には浅利と深津時枝しかいない。深津はロングヘアーのモデルみたいな顔した大人びてる生徒、これだけルックスは完璧なのにまったく勉強をせず、一日中鏡を見ながら、薄い化粧をしてる。


「お前らだけなのか?」


「先生、補習で呼ばれたのに猪狩先生来ないよ」


浅利は珍しく真面目に勉強してる。


深津は鏡を見ながらスナック菓子を食べてる。


猪狩先生は数学担当の男性教師でよく寝坊してくる。酒が好きなのだ。


「ちょっと待て、今探してくる」


結構無政府的な高校なのだ。


岸森どこにいんのかな?いつでも余計な時はいるくせにこういう時に限っていない。



2年A組の学級委員の北島守は日々イライラしていた。


野上が自分を無視し始めたのだ。


つまり問題にされてないことがはっきりしたので、もはや絶望的だ。


野上のノートを盗み見たことがあるが、本城に対する想いがぶちまけられていた。


ちくしょう!本城め、しかし奴に嫉妬してるだけで、逆恨みになるよなとため息をつく。


まあ補習を受けるほど成績も悪くないし、でも高校に行ってみるか……。


天国口高校の柵から本城と岸森が何やら話してるのが見える。


次の瞬間岸森は本城に抱きついて思いきりハグしてる、じぇじぇじぇー……。


本城はしょうがないなーという顔してる。


岸森は本城にキスしようとしたが、さすがに本城は止めた。


北島は冷静になろうと思った。本城には本城の魅力があり、自分は自分の魅力があるはずだ。


しかし現実ほど冷酷なものはない。


やっぱり俺はダメなのかー!



岸森は天使の笑顔でこんなことを言う。


「今誰も見てないよ、先生キスしよう」


「できるわけないだろ、それよりお前アイドルでも目指せば?自分のルックスの良さわかってるんだろ?」


岸森はきょとんとした顔をしてる。


「アイドルかあ……興味ないなあ、先生のお嫁さんになるつもりだから」


「まあお前が卒業したらありえない話じゃないけど、もっといい女にならんとな」


「え!先生結婚してくれるの?」


「だからたとえ話だって、あくまで」


と言いつつ岸森が嫁さんでもいい気がしてきた。


「いい女になれよ」


「先生、よくわからないよー!」


「俺はまだ仕事があるから、今度マックにいくくらいならいいぞ」


「やったね」


充分目の保養になったので、仕事に戻る。


 

我道幸代は北島のいる柵から離れた場所から本城と岸森のやり取りを見ていた。


ポケットから煙草を取り出して一服して。


虚空を仰ぎ、無表情ながら瞳はギラギラさせていた。


2013(H25)10/2(水)・2018(H30)5/6(日)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る