第16回月明かりの微笑
ショットバー”リデル”は通り沿いのビルの3階にあった。
入口に入るとサイケデリックな色彩のライティングがまばゆい。
まるで異世界へ来た感覚だ。
店内はカウンターが10席くらいあって、我道は真ん中に座っていた。
シルクの黒いドレスを着ていて、とても17歳には見えない、20歳以上に見える。
「お客様何にいたします?」
「えっ、 ……じゃあカルアミルクを」
とりあえず我道から離れたカウンターの一席につく」
我道は相変わらず無表情でバーボンかなんかのロックを飲んでる。
我道はいきなり立ち上がり、俺の隣りの席へ付く、振り向かず、伏し目がちだ。
「今更なんだけど、お前未成年だよね?」
我道幸代はまったく反応しない。
そういえば彼女の声を一度も聴いたことがないことに気付く。
「こういうの困るんだよね」
我道はグラスの氷をカラカラと鳴らす。
「何とか言ったらどうなんだ」
我道はまったく表情を変えずふんぞり返ってる。
どうも埒があかない。
「俺はもう帰るぞ、マスターお勘定」
「愛の予感がするの」
「え?」
「愛の予感?」どうとでも取れるフレーズだな。
「もうすぐね」
「もうすぐ?」
我道は初めて微笑みを見せた……それは太陽というより、月の光の輝きと言っていい。
2013(H25)8/25(日)・2018(H30)5/3(木)
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