2ページ
「参考に聞かせてくださいよ」
「えぇ~普通だよぉ」
「普通? ストレートに結婚して欲しい、とかですか?」
それとも、俺の味噌汁を一生作り続けてくれ、とか?
カスミさんは視線をウロウロさせてから一度唇をキュッと閉じて小さく呟いた。
「待たせてごめん・・・結婚しようって」
「ひ」
ひゃぁ~~~!! なにそれぇ! めっちゃおじさんキュンキュンする!
「良いですね、それ」
長く付き合っているからこそ言えるセリフだよな。なんか良い。
「それで、カスミさんはどう返したんですか」
「え、ちょ、マスターって意外とこういう話好きだよね」
えぇえぇ好きですとも! 人の恋バナは蜜の味って言うでしょ!
「まぁ、うん、よろしくお願いしますって、言ったよ。すごく待ったけどね、って。そしたらアイツも笑って、本当にごめんって」
ふふふ、と頬を染めてカスミさんは続ける。
「あぁ、あの時アイツと出会ってよかったなぁって思ったよ」
あ~いいなぁそれ。ドラマみたいなプロポーズ。俺には到底できないよ。
「結婚式はされるんですか?」
「結婚式? しないしない」
「え、そうなんですか?」
「うん、しない。婚姻届は出して来たから、もう結婚はしているんだけどね」
若いのに結婚式を挙げないなんて珍しい。きっと憧れとかあったろうに。
「そりゃ憧れはあったけどね。結婚式も婚約指輪も。これ、結婚指輪なんだけど、婚約指輪はもらってないの。お金がないってのもあるけど、高い婚約指輪をもらって幸せを約束しなくてもいいなって思っていたから」
それじゃぁ婚約の時は言葉だけ?
「ふふ、それとバラを一輪。私がそれだけでいいって昔に言っていたのを覚えていたみたいで」
約束の言葉とバラ一輪、たったそれだけのプロポーズ。そうだとしても、とても暖かくて優しいプロポーズだと思った。
「どうかお幸せに」
「それはアイツの頑張り次第かな?」
なんて、それはきっとお互い様でしょう?
そんな事を言えるカスミさんなら、きっと素敵な夫婦になれる事だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます