これからの約束に花を添えて
カゲトモ
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「見て見てマスター! 私、結婚したんだよ!」
カウンターに座ったと同時にバンッと目の前に左手が突き出される。そこには輝くシルバーのリング。シンプルだけど少しカーブのかかったリングは、カスミさんの細くて白い指に良く似合う。
「おめでとうございます」
「うふふ、ありがとう」
照れたように肩を上げて微笑むと愛しそうにそのリングに触れた。
カスミさんもやっと結婚かぁ。
「高校の時から付き合っているから、もう六年になるんだよねぇ。あんまりにもそう言う話しが出ないから、実は去年の今ごろはもう別れようかなって思ってたんだよね」
「おや、どうして」
「だって一緒に居ても未来がないならもういいかなぁって思って。何のために一緒に居るか分からなくなっちゃってさ」
「そう思っていたのなら、どうして別れなかったんですか?」
そこまで思っていたのなら彼とは別れて、違う人を探しても良かったのでは?
「や、まぁ、なりゆき? とか、情、とか?」
「彼が聞いたら悲しみますよ」
情だけで傍にいた彼女にプロポーズしたなんて知ったら泣いちゃうかも。なんてね。本当にそうならこんなに喜んでいないか。
「ふふ、でも多分。口ではそんなことを言いながらも別れられなかったのはきっと私の方だと思う。情、なんて言ったけど、もうアイツと一緒に居ない人生とか全然想像できなかったし。それにアイツには私が必要だし、私にもアイツが必要だから」
だよね、そうだよね。そうじゃなきゃこんなに嬉しそうに報告しないもの。
「良かったですね。ちなみに、プロポーズの言葉とか、訊いてもいいですか?」
「えぇ~」
どうしよっかなぁ、なんて言っているけど、本当は言いたいんでしょ。顔にそう書いてある。
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