孤独町
楠木黒猫きな粉
空白理論
居ない。何が?誰が?そう問われる声に僕はこう答える。ここには僕がいない。人がいない。心が居ない。人は何を言っているのと言う顔で通り過ぎる。我が物顔で誰かの物の上を歩く。
ここには居ない。誰もいない。薄汚れた町の隙間で嘆いてやった。
どうして何もいないんだ。どうして誰もいないんだ。
空白の隙間。誰もいない街の隙間。居ない居ないと嘆く僕。
誰も居ない。誰かもわからない化け物が薄汚い空気を吸って、汚れすぎた街に生きる。
悪意が人を居なくする。善意が人を殺していく。
誰も気づかない。気づけない。当たり前の地獄中人は天国の夢を見る。哀しみにあふれて歩く。走る。這いつくばって進む。
そうやって街は回る廻るマワル。誰かのためでもなく、誰かを使いつぶしながら町はマワ。
色は黒。空は白。人は赤。汚れ汚れて誰でもなく誰かでもなく誰にもならない人たちは僕の嘆きを聞こうともしない。構いもしない。
意味を求めて一人仰ぐ空は雲に覆われねずみ色。
ビルは顔なく佇む。声なき声は響くこともせず誰にも任されない。壊れた街にはピッタリだ。何もない街にはピッタリだ。
顔なしビルは僕を閉じ込める。ここはきっと鳥籠だ。閉じ込められて出られない。飛ぶこと忘れた鳥達は誰も飛び立とうとしない。すぐに戻ってきてしまう。
使い古された僕たちは残滓のように空を舞う。その姿は見えなくてもいい。僕たちは存在して居たい。僕は飛び立てなくても雨に濡れて溶けた翼を持ったままでいい。薄汚くていいんだ汚れたままでもいいんだ。少しだけ少しだけでいいんだ。僕はここで存在してたいんだ。こんな空白の隙間で僕は存在して居たい。何もないのは嫌だった。何かを望むのは悪のすることだと思った。けど望まなきゃここに在りたいって思うんだ。
それが僕の嘆きの答えだ。だから答えてくれ。僕の出した答えは正解ですか?間違いですか?
この——
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