第2話 魔女の子育て
仕方のない事だ。
こうなってしまっては私自身が責任を持って育てるしかない。
そう決意をした私は、まず初めに名を与える事にした。
「スレイ…」
特に理由はない、理由はないが―――何故かその名が初めに浮かんだ。
「よし、今日からお前の名はスレイだ。 よろしくな、スレイ」
小さな手を握り、そう伝える―――スレイ自信もその名が気に入ったのか、微笑みながらこちらを見つめて来た。
――――――――
その後は様々な壁にぶち当たる事となった。
あまり食生活を気にして来なかったせいか、どれもこれもスレイの口に合う食べ物ではなかったらしい。
例えばその辺に生えてる”黒のキノコ”やら、近くに生息する”ゾンビウルフの肉”等―――どれもこれも口に入れた瞬間、吐き出す始末。
仕方なく、私は行きたくもない街へ出向いて。
大量の食糧を片っ端から買い込んだ。
途中―――街の連中が何かを噂していたが、そんな事を気にしている暇ではない。
今はなんとしてもあいつに合う食べ物を探さなくては――――
―――――――――――――――――――――
一年後―――私は目を疑う光景に驚きを隠せなかった。
「アルメイア! アルメイア! ご飯! おなかすいた!」
目の前には見違える程の成長を遂げたスレイの姿が。
薄々感じてはいたさ…お前の成長が異様だという事は。
がしかし―――
「よし、飯だな! すぐに作るから待っていろ! すぐに作るからな!?」
子育て―――というよりも、やっている内に楽しくなってきた私は半年の月日を掛けて。
あらゆる料理をマスターする事に成功した。
今の私は最強と言っても過言ではない、炊事洗濯はもっての他―――雑用を熟すまでに至ったのだ。
そうこうしているうちに気付けば3年の月日が流れていた。
私は何時もの様に物悲しい表情をスレイに向けながらこう告げる。
「い、い、い、行ってくる…今から行ってくる…今から行くからな?」
と告げてから早数十分。
後ろには立派に成長を遂げた、あきれ顔のスレイの姿があった。
歳にして15程だろうか、もう成人と言っても過言ではない体格になった。
3年…たった3年でここまでの成長を遂げるとは―――流石は”異世界の人間”と言うべきか。
流石は”私のスレイ”だ。
「えぇ~っと…アルメイア? 行かなくて大丈夫なの…か?」
「行こうとしているんだがな? スレイ…私の足に石化魔法が掛かっている様だ。 今日は止めにしよう」
私は真剣な表情でそう告げた。
「行ってあげた方がいいと思うんだけどもぉ~正直俺は行って欲しくない! だけど、だけどな!? アルメイア、アルメイアは勇者PTの一員で大事な魔法職なんだ。 アルメイアが欠ければきっとそいつらは苦労するに違いない。 だから、だから、行ってくれ!」
「くっ…私が、私が勇者PT等に属していなければお前と一緒にいれたというのに! くそぅ!! 勇者なんてクソくらえぇぇぇぇぇぇ!!! うぉぉぉぉぉぉ! 必ず!必ず連絡するからな!? スレイ!」
「おう! 待ってる!! 待ってるからなぁぁぁぁ!!」
後ろを振り返らない様に目の前だけを見つめて、全力疾走を決めた私。
また今日から”長期に渡る旅”になるのか…正直家に居たい。
なんて事は死んでも”あいつら”には言えんが、いかしかたあるまい。
きっとすぐに帰るからな!スレイ!! 待っていてくれ!
いざゆかん!!!
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