14話 来訪者の可能性

 さかのぼる事5日……。


 俺は騎士団長として、団員との仲間意識を大事にしている。それから、なるべく団員と夕飯を取るようにしている。


 その際、俺は、マルスのやつの武器が新調されている事に気が付いた。


「マルス、そういえばその武器どうした?なんか立派じゃねえか。」


「あ、分かります?なんかユイちゃんに誕生日プレゼントでもらったんすよ。なんかこれ装備してると力がみなぎる気がするんすよね。」


「そっか。今日はちょっと時間あるし、鍛冶屋のおやっさんにでも見てもらうか。」


そうして俺とマルスは鍛冶屋に向かうことになった。


「おー、これはそうとうな代物じゃな。わしでもこの剣の力の全ては分からんのじゃが、攻撃力だけでも1300はいってるじゃろか。」


「攻撃力1300……って、どの位すごいんですか」


「団長さん、あんたが持ってるその剣がだいたい500ってとこじゃな。」


「そ、それは……。すごいですね。」


「でも攻撃力だけじゃないぞい。パッシブスキルで各ステータス全てが+15%、体力回復速度+50%、アクティブスキルで急所への攻撃の威力がざっと2倍弱ってとこか。他にもいろいろ付与効果がのっておる。一度でいいからこんな業物作ってみたいものじゃ。」


「ほえぇ……。」


「おそらく伝説の剣の類じゃろうなぁ。古代遺跡かなにかから見つかったものかね?」


「いや、これはユイちゃん……、俺の彼女からもらった物なんだけど、なんかガチャとやらで。」


「ほぉ……。ぜひその彼女さんに会ってみたいものじゃな。」




 というわけで、マルスが彼女さんを呼んでくれることになりました。待つことしばし。




「こんばんは、はじめまして!マルスさんとお付き合いさせてもらっている、ユイといいます。」


「おー、うわさ通り美人さんじゃねえか。こんな彼女に愛されて幸せもんだなおい。」


「ああ、自慢の彼女だからな!」


「あっ、えっ、いや、そんな」


「お熱い事じゃのう。そうじゃ、本題に入らせてもろうてよいかのう。」


「あ、はい。」


「この剣の出所とか、なにか分かることは無いかのう?尋常なものではないことは分かるのじゃが……。」


「あー、それはですね、ちょっと見ててください。」


すると、彼女はなにやら手元を操作し始めた。すると、目の前にレバーのついた大きな箱が現れた。そこに、ユイさんが紙を一枚入れた。レバーを引くと、武器が現れた。


「なっ!?」


「今入れた『ガチャチケット』という紙と引き換えに、武器がもらえる『ガチャ』という仕掛けがあるの。『ガチャチケット』は、『運営』という方が時々私達来訪者に配っているの。」


「ちょっと待って、突っ込みどころが多すぎるんだが。まず箱はどっから生まれた、それに今何もない所から武器が作り出されなかったか」


「それはね……。」




 あまりにもユイさんがさらっというものだから流してしまったが、彼女は来訪者なのだという。そして、来訪者の俺達との違いをいろいろ見せてもらうことになった。




「『メニューボックス』とやらの力、本当に半端ないな。何もない所から物を取り出したり、装備を変化させたり、物をしまったり、装備を合成したり、すごいな。」


「ああ、俺もこれは初めて見るよ。物の出し入れは確かに今思えばしてたけど、マジックバックをつかってるとかそういうことじゃなかったんだ……。」


「まあ、そうだね。まあ来訪者ならみんなできることなんだけど……。」


「それと、やっぱりその『ガチャ』っていうのすごいな。『レア』や『スーパーレア』とやら位でも、十分に逸品ばかりじゃないか。」


「えっと、『レア』品くらいならいっぱい余ってるので、騎士団に寄付しましょうか?」




 それからというものの、ユイちゃんの元パーティーメンバーや知り合いの方にも集まってもらい、いらない武器や装備のオークションを行って、騎士団を大幅強化することになった。




「ケイタ、突然呼び出してごめんね。」


「いやいや、俺らもミッション終わりで暇だったし。あ、ユイちゃんの元パーティーメンバーで、パーティー『スターライト』のリーダーのケイタです。あ、僕らはプレイヤーです。」


「ケイタさん、御足労ありがとうございます。それでご相談なんですが……。」


「ああ、ユイから聞いてるよ。いらないレア品とかスーパーレア品を提供したり、オークションしたりするって話でしょ。」


「は、はいそうです。あれ、ユイさんは今までそこにいたはずですが、なぜ知ってるんですか?」


「ああ、メッセージで聞いたからね。」


「メッセージ?」


「ああ、離れていても、フレンドになっているプレイヤー同士はメッセージを受け取れるんですよ。」


「ん??それ、すごい事ではないかのう?」


「そうだよな。離れた町からの伝令とかもすぐ受け取れるし、事務処理も凄く楽になるよな。新規住民登録や税処理とかを王都に人を遣わせないでできるようになったらいいよなぁ。来訪者ってすごいなぁ。」


「そ、そこに食いつくかぁ。確かにプレイヤーならではの長所だけど……。」


「確かに、私みたいな、騎士団の仕事を手伝ったりしたことがあるNPCが増えれば、そういう情報網も作れるかもね。プレイヤーは王都にもいっぱいいるし。」


「ユイ、それは無茶じゃないか?ゲーム世界に来てまで事務処理をやりたがるプレイヤーなんてそうそういないだろ。」


「それか……。そうだよね……。私みたいなのばかりじゃないもんね。」


「もし実現したら相当な謝礼出しても割に合うんだけどな……。そううまくはいかないか。」


「あ、でもそうだ。マルス、効率のいい狩場とか、放置されてるけどアイテムがおいしい場所とか知らない?そういうこっちの人ならではの知識とか供給できれば、協力関係は築けるかも。」


「そうだね。俺達じゃ手に負えないような魔境とかちょくちょくあるけど、来訪者の人結構すごい人もいるみたいだからもしかしたらそこにも行けるかも。行ければ奥にはかつて使われていたヒヒイロカネ鉱山があるからもとはとれそうだけど。」


「それはいい情報になりそうだよ、マルス!」


「要するに、来訪者の役に立てばいいんじゃな?来訪者にも鍛冶師がいると聞いたことが有るが、武器の形を個人に合わせて細かく調整したりまではできないようじゃのう。いい素材を持ち込んでもらえれば、来訪者にも満足のいく武器が作れるはずじゃわい。」


「いいね、鍛冶屋さん!そう、そうやって来訪者とNPCが交流していけば、プレイヤーのメッセージ機能やガチャ機能をうまく生かしながら、プレイヤーにも利益がある。ウィンウィンの関係が築けるはずだよ!」


「そうだな。復興にも大きく役立ちそうだ!ユイちゃん、協力頼めるかな?」


「もちろんだよ!多分初めての世界を越えたカップルとして、いっしょに架け橋になっていこうよ!」




 もともと、武器のオークションをやるはずだったのだが、話が脱線して、来訪者と俺たちの交流にまで話がつながった。さしあたって今日はケイタさんとユイさんからいらない防具をもらったものの、今度の夏祭りで大々的に武器防具オークションを行うことになった。


 そして、その場で、おやっさんの武器も広めてもらうことにした。そして、大々的に、交流会を行うことになった。




 翌日、それを騎士団のみんなに話すと、折角交流するのだからお見合いをやろうという話に発展していった。


 町の独身男性が、アップを始めた。




 そう、このときは、すべて上手くいくと思っていたんだ……。

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