第8話
「私には、小学生の時から好きな男の子がいたの」
なぜ、僕にそれを伝えようとしたのかわからないが、話し出す表情はまさに乙女のような感じだった。
「中学校は、小学校のくりあがりで、クラスのほとんどの人は顔見知りだった。そんな中、私は、一人の男の子をずっと思っていた。隣の席になったときは嬉しかったし、その子がほかの女子と仲良くしてたときには嫉妬してた。私は、その事を女子だとばらされるとわかっていたから男子に話したの。しかもその男子は、私の好きな人の親友か幼なじみのどちらかで、何度も気を使ってもらってた。でも、私は、知らなかったの」
鮎川さんは、そこでいったん話を切った。なぜ、話を切ったのかは話の途中でわかっていた。鮎川さんの目には多量涙が溢れていた。声をあげているのではなく、すすり泣いているという感じで。
「いいよ。無理して話さなくて」
これ以上とは言わないが、僕はこの辛さがわかる気がする。聞いていて僕は、そう思った。そして、初めて、鮎川さんとまともに話せた。
「大丈夫だから。そしてある日」
僕は、鮎川さんの背中をさすった。女子に触れたのはあの日以来だった。フラッシュバックすることもなく、何度も何度もさすた。それはまるで、鮎川さんが妹に見えた瞬間だった。
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