第9話 注意(1話完結)

 営業の仕事をしていると昼食を食べるタイミングをとれないときがある。今日も担当の会社に行ったのだが社長の長話につかまってしまった。町工場の気さくな社長さんだが話が長いのが玉にキズだ。

 

 いつも行く定食屋のとっくにランチタイムは終わっている。そのためパッと食べられるところにということでハンバーガーショップに入った。カウンターでてりやきバーガーのセットを注文し二階へ移動した。


 この時間は小さな子供を連れた親子連れが何組かいる。皆、知り合いなのだろう。母親たちの笑い声と子供らの遊ぶ声が響く。それにしてもうるさい。男の子が一人で何度も同じ歌を歌っている。それも同じところを大声でだ。歌っているのは「大きなのっぽの古時計」だ。まあこれくらいは仕方ない。子供は大声で歌うことが楽しいものだ。少し場違いだなと思いもするが、まあ食べてすぐ出るので少しの間だけこの喧騒も我慢することにする。

 一番階段近くの二人用の席に着いた。ポテトを食べながらスマホを確認する。仕事の連絡メールが二件ほどきていた。まあ特に急を要するものでもなかった。

 それにしてもうるさい。俺が来てからボリュームをあげたのか子供たちの叫び声が大きくなっているように思う。まあこれくらい仕方ない。子供はうるさいものだ。


 いやはやそれにしてもせわしない。子どもたちがフロア中を走り回っている。この三分ほどの間にもう既に何度かぶつかっている。まあこれくらいは仕方ない。子供はせわしなく動き回るものだ。


 いやはやそれにしてもやるせない。子どもたちがうるさいのをどの親も全く注意しない。まあこれくらいは仕方ない。母親もたまにはのんびり自分の時間を持ちたいのだろう。


 いやはやそれにしても許せない。この子供の親がどうしても許せない。なぜ注意をしないのだ。なぜ訂正させないのだ。これだから最近の親はダメだと言うのだ。


 あーまた同じ箇所を歌っている。「おじいさんの生まれた朝におばあさんが買ってきた時計さー♪」


 はやく注意しろ。それ買いにいった人を具体的に書かれてないねん。その歌詞やとおばあさん何歳やねん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

楽しく楽に読める!コントな小説 川林 楓 @pma5884

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ